研究課題/領域番号 |
22K10133
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
新井 嘉則 日本大学, 歯学部, 教授 (20212607)
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研究分担者 |
雨宮 俊彦 日本大学, 歯学部, 助教 (60783058)
出澤 幸 日本大学, 歯学部, 助教 (10782980)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | パノラマX線断層撮影 / 二重撮影 / トモシンセス / パンデミック / 障害陰影 / パノラマ断層撮影法 / トモシンセサイズ |
研究開始時の研究の概要 |
パノラマは近年の画像処理の発達により画質が向上してきているが、頸椎や硬口蓋などの障害陰影といった根本的な画質劣化の問題点があり、診断能は口内法に及ばなかった。 本研究では、パノラマ撮影法を発展させた多重X線回転パノラマ合成法(以下多重パノラマ)を開発して、前述の障害陰影を低減させることで画質を向上させることを研究目的とした。これによって、口内法と同等の診断能を有する画像診断が感染リスクの少ないパノラマで実現する。
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研究実績の概要 |
COVID-19のパンデミック下において、口内法X線撮影(以下;口内法)はX線センサーを口腔内に挿入することから、感染リスクが危惧された。そこで、日本歯科放射線学会をはじめ各国のガイドラインでは代替として、口外法のX線回転パノラマ断層撮影法(以下;パノラマ)が推奨された。口内法は、センサーを被写体である歯に密着させて撮影することから非常に高い解像力があり、高い診断能があった。一方、パノラマは近年の画像処理の発達により画質が向上してきているが、頸椎や硬口蓋などの障害陰影といった根本的な画質劣化の問題点があり、診断能は口内法に及ばなかった。 本研究では、パノラマ撮影法を発展させた多重X線回転パノラマ合成法(以下多重パノラマ)を開発して、前述の障害陰影を低減させることで画質を向上させることを研究目的とした。これによって、口内法と同等の診断能を有する画像診断が感染リスクの少ないパノラマで実現を目指す。 令和4年度は,原理を実証するために被写体として,人体等価の頸椎付き頭部同部ファントムとアルミブロックを使用した。これを,パノラマX線断層撮影装置で撮影し,原画像を得た。さらに,撮影装置を上昇させて撮影して得た画像を前日の画像を最小二乗法で合成し,効果を評価した。評価方法には被写体のラインプロファイルの統計的な評価と主観評価を行った。この結果,本方法を使用することで,前歯部の障害陰影が軽減されることが証明された。 これらの成果は日本歯科放射線学会第234回関東地方会・第41回北日本地方会第29回合同地方会,日本歯科放射線学会秋季第3回学術大会,日本歯科放射線学会第235回関東地方会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パノラマX線断層撮影装置はべラビューX550(モリタ製作所 京都)を使用した。被写体には,人体等価頚椎付き頭部ファントムSE-1(三和化成工業 大阪)及びアルミブロックを使用した。被写体の位置付けはFH平面を床と平行とし,断層域を歯列弓と一致させた。パノラマX線断層撮影の照射条件は管電圧80 kV, 管電流:5 mA/10 mA,Pixel size: 99 μm × 99 μm,センサー:CCDとした。管電流を5 mAと10 mAに設定し,それぞれの条件で以下のように撮影を行った。 X線管の高さを標準高さ0 mmで撮影を行った。この画像をOP(0 mm)とした。さらに,標準より15 mm上昇させて撮影を行った。この画像をOP(15 mm)とした。管電流5 mAの条件で撮影したOP(0 mm,5 mA)とOP(15 mm,5 mA)2つの画像を最小二乗法で合成し合成画像OP(0 mm +15 mm,10 mA相当)を得た。管電流10 mAで撮影したOP(0 mm,10 mA)とOP(15 mm,10 mA)及び,合成後の(OP 10 + 15 mm,10 mA相当)が主観的に比較された。 また,上記の画像の参照として,同装置で,高さ80 mm×直径40 mmと75 mm × 直径150 mmの歯科用CT撮影を行った。 OP(0 mm,10 mA)とOP(15mm,10 mA)では前歯部の頸椎の椎間による透過性の障害陰影が認められた。合成後のOP(10 mm+15 mm,10 mA相当)では,明らかに障害陰影の低減が観察された。統計学的にも有意に障害陰影が低減した。移動量に関しては,頸椎の形態を考慮して最適化が必要と考えられた。本法では2回撮影による撮影時間延長の問題があり,臨床応用するにはさらなる検討が必要と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今回使用したデジタルパノラマ断層撮影装置X550(モリタ 京都)はCCD方式であった。断層域はCCDに加えられるクロックで決定されてしまうことから,撮影後に断層面を可変することができない問題点があった。このため,2重撮影をして画像を構成する場合の自由度に制限があった。特に障害陰影の原因となる頸椎の形態が特定できない問題があった。このために最適な移動用を予想することができなかった。 これを解決するために令和5年度は,CMOS方式のデジタルパノラマ断層撮影装置X800(モリタ 京都)での新たに実験を実施する。このCMOSでは毎秒100フレームのスリット画像が収集される。この連続収集されたスリット画像をコンピュータ上でシフトしながら加算することで,自由に断層面を変化させることが可能となる。この断層面を連続的に可変させ,CTと同様な三次元的なVolume dataを再構成する。この演算には膨大なメモリーを必要とすることから,新規に購入した研究用PCで最適化を図る。これによって,1回の撮影のみで前歯部の断層画像のみならず,頸椎の断層像も得ることが可能となる。ここで,得た頸椎の断層像から,前歯部に投影される障害陰影を予測し,それを緩和するのに必要となる垂直的に移動量を予測する。そして,実際に垂直的に移動を行って追加の撮影を実施し,前述の画像と合成する。 これによって,前歯部に発生する頸椎による障害陰影軽減のための垂直的な移動量が最適化され,効率よく前歯部の障害陰影が低減されると予想される。令和5年度はこれらを実証していく。これらの成果は日本歯科放射線学会第4回秋季学術大会で発表を予定している。
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