研究課題
基盤研究(C)
固形癌の特徴は周囲組織への著しい浸潤性増殖と遠隔臓器への転移巣の形成である。腫瘍細胞塊から血管内へ浸潤する癌細胞の大半は自己免疫系により死滅するが、その内ごく少数が免疫系の攻撃をすり抜け、血中循環腫瘍細胞(CTC)として血液内を循環し、転移巣を形成すると考えられている。近年、乳癌、前立腺癌、大腸癌などの転移性症例において、血液中のCTCは治療効果の判定や予後予測因子として有用性が認められている。そこで我々は、口腔癌患者においてCTCの検出、さらにその細胞特性を解析し、口腔癌の臨床病態との相関性、治療効果の判定基準及び予後予測システムの開発研究を行う。
口腔癌患者において血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell:CTC)の検出・解析を行い、臨床病態との相関性、治療効果の判定基準及び無増悪生存率 (PFS)や全生存率(OS)などの予後予測システムの開発を行っている。当科を受診した口腔癌患者から血液を採血して、ポアサイズが8μmのマイクロフルーディックデバイスを用いて蛍光顕微鏡によるCTCの検出および解析を行なっている。現在のところ、当科を受診し本研究に同意が得られた13名の口腔癌患者を対象に初診、術前、術後で採血を行い、4ml中のCTC数の変化について検討している。 1例を除く12例で初診時にCTCを確認しており、その個数は1~32個であった。術後にCTC数が減少した症例が8例(その内完全消失が2例)であったが、逆に増加した症例が5例認めた。CTCのクラスターが存在した6症例に関して解析するも、再発もしくは転移との相関性はなかった。さらに遠隔転移を認めた症例の術前後のCTC数の変化には相関性はなく、早期癌と進行癌とのCTC数との相関性も認めなかった。以上のことより、口腔癌におけるCTCの検出・解析は臨床病態や治療効果の判定には有用では無く、予後や再発等のバイオマーカーとは成りにくいと考えられるが、もう少し症例を集めて引き続き検討中である。現在では、新たなバイオマーカーとして無細胞DNA(cell free DNA:cfDNA)に着目し、CTCと同様に解析中である。
2: おおむね順調に進展している
マイクロフルーディックデバイスを用いて蛍光顕微鏡による解析でCTCの検出は順調に行えるようになった。しかしながら、このCTC数の変化と口腔癌の予後との相関性を見い出せず、現在はcfDNA量を測定して、両者で検討中である。
これまでに本研究に同意が得られた13名の口腔癌患者に対してCTC数の測定を行ってきたが、今後も継続的にCTC数の測定を行い、また同時にcfDNAの量を測定し両者で病態の変化について検討していく予定である。また新規の進行癌患者や早期癌患者などの症例についても同様の研究を行い、病態や予後について検討していく予定である。
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