研究課題/領域番号 |
22K10154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
光藤 健司 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70303641)
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研究分担者 |
梅村 将就 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (50595353)
中鍛治 里奈 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80845511)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 口腔癌 / 交流磁場 / ハイパーサーミア / EP4 / 頸部転移マウスモデル / 遊走能抑制効果 |
研究開始時の研究の概要 |
口腔扁平上皮癌において、頸部リンパ節転移は重要な予後因子の一つであり、頸部転移の 制御は重要である。我々の先行研究で特定の周波数の交流磁場を暴露することによってがん細胞に対して増殖抑制効果があることを発見した。本研究では、ヒト由来口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、交流磁場の遊走能抑制効果のメカニズムを解明する。そして独自に確立した頸部リンパ節転移マウスモデルを用いて交流磁場の頸部転移リンパ節への抗腫瘍効果について検討する。
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研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌において、頸部リンパ節転移は重要な予後因子の一つであり、頸部転移の制御は重要である。先行研究では特定の周波数の交流磁場で刺激をすることによってがん細胞に対して増殖抑制効果があることを発見した。今回我々は交流磁場が癌細胞の遊走能に抑制効果を持つことに着目した。本研究では、ヒト由来口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、交流磁場の遊走能抑制効果のメカニズムを解明する。そして、独自に確立した頸部リンパ節転移マウスモデルを用いて交流磁場の頸部転移リンパ節への抗腫瘍効果について検討する。そして交流磁場は、将来的には非接触型・非温熱のためヒトに応用した際の副作用が少なくすることが可能となり、安定した治療の遂行が可能であることから新たな低侵襲な癌治療の一つになると期待できる。このように交流磁場による治療が口腔癌に対する新たながん治療の開発に繋げていくことを目的とする。 2022年度は、ヒト由来口腔扁平上皮癌細胞株を使用して、交流磁場による遊走能抑制効果をスクラッチアッセイで、細胞増殖能を細胞増殖アッセイで検討した。交流磁場で刺激をすることで、口腔癌細胞の遊走能および増殖能が、抑制されていることが確認できた。2023年度以降は交流磁場による遊走能抑制効果について、分子生物学的なメカニズムの解明、頸部リンパ節モデルマウスを作成し、交流磁場を刺激することで、頸部リンパ節転移の抑制効果を検討する。交流磁場による細胞遊走能抑制効果の分子生物学的なメカニズムの解明と、転移能の抑制効果について検討し、新たな治療開発に繋げていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交流磁場による細胞遊走能の抑制効果を確認するために、スクラッチアッセイを用いて検討を行った。チップで傷をつけたウェル内を、顕微鏡下にリアルタイムで細胞が遊走し面積が閉じる様子を確認した。観察開始後10時間の時点で、コントロール群に比べて、交流磁場印加群では、閉じる面積が小さいことが確認できた。このことから、交流磁場の刺激により、口腔癌細胞の遊走能が抑制された。次に、交流磁場刺激による細胞増殖能への影響について、細胞増殖アッセイを行った。交流磁場の刺激により、細胞増殖能が抑制された。以上の結果から、交流磁場は口腔癌細胞の遊走能及び増殖能を抑制することが確認できた。さらに、交流磁場による転移能の評価に用いるマウスモデルの作成を行った。プロスタグランジンE2受容体の一つであるEP4は、癌細胞の増悪に関与すると言われている。近年では、EP4が口腔癌細胞の遊走能を調節しているという報告があるため、この遺伝子に着目した。まず、レンチウイルスを使用して、EP4過剰発現の口腔癌細胞を作成した。さらに、経時的な腫瘍の評価を行うことを可能にするため、ルシフェラーゼ遺伝子も導入した。ヌードマウスの舌に腫瘍細胞を接種し、頸部リンパ節転移の有無を評価している。頸部リンパ節モデルが確立出来た後は、このモデルを用いて交流磁場の転移抑制効果を評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は交流磁場による口腔癌細胞の遊走能抑制効果を確認した。今後の検討事項として、交流磁場による遊走能抑制効果について、分子生物学的なメカニズムを解明する。具体的な方法としては、交流磁場で刺激後、口腔癌細胞のタンパク発現についてはウエスタンブロッティング法を用いて行う。具体的なターゲットとして、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(Mitogen activated Protein Kinase : MAPK)に着目していく。細胞の移動に関しては、細胞外シグナル調節キナーゼ(extracellular signal - regulated kinase : ERK)、c-Jun N端末キナーゼ(c-Jun N-terminal kinase : JNK)、p38などMAPKシグナル伝達経路が、重要であることが知られている。また、p38はマトリックスメタロプロテアーゼ2(Matrix metalloproteinase-2 : MMP-2)の活性化に寄与することが分かっている。口腔癌の浸潤や転移は、基底膜の主成分であるⅣ型コラーゲンを分解するMMP-2の役割も重要視されており、口腔癌の転移リンパ節にMMP-2濃度が高いことがすでに報告されているMMP-2の活性化については、ゼラチンザイモグラフィーで検討予定である。次に、頸部リンパ節モデルマウスを作成し、交流磁場を刺激することで、頸部リンパ節転移の抑制効果を検討する。腫瘍の経時的な評価は、in vivo 発光・蛍光イメージングシステム(IVIS)で行う。観察期間終了後には、リンパ節を摘出し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、リンパ節転移の有無を評価する。
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