研究課題/領域番号 |
22K10184
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
|
研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
佐々木 由香 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (50823332)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | PARP1 / olaparib / PARP阻害薬 / 抗がん剤耐性 / NAD+ / ポリADP-リボシル化 / 翻訳後修飾 / NAMPT / ポリADP-リボシル化 / PARP阻害剤 / 頭頸部がん / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
現在、臨床承認されているPARP阻害薬は特定の遺伝子異常を持つがんに対して効果を示すことから、副作用の少ない抗がん剤として期待されている。本研究では、PARP阻害薬の感受性を高める因子(バイオマーカー)や細胞死誘導剤を探索・同定し、その細胞死誘導機構を明らかにする。本研究の進展は、PARP阻害薬の治療対象の拡大に繋がるだけでなく、現在治療上の問題となっているPARP阻害薬耐性を獲得したがんに対する代替治療法の確立、がんゲノム医療の推進に大きな貢献をもたらすことが期待される。
|
研究実績の概要 |
PARP阻害薬olaparibは、相同性組換え修復能を欠損したがん細胞に対して特異的に細胞死を誘導する合成致死性抗がん剤として臨床承認されている。本研究では、PARP阻害薬の感受性を規定する新規バイオマーカーを同定し、有効な化学療法が確立していない再発・進行性頭頸部がんにおける新規治療法の開発およびPARP阻害薬耐性を獲得したがんに対する耐性克服治療法の開発を目指した。 Olaparibの効果を上昇させる化合物を探索するために、本年度新たにエピジェネティック制御因子を標的とした阻害剤ライブラリーを用いてスクリーニングを行った結果、olaparibの効果を増大させる化合物を1化合物見出した。BRCA変異を有さない口腔扁平上皮がん細胞株HSC-2およびSASにおいて、化合物存在下におけるolaparib感受性は、olaparib単剤処理と比較して、有意に細胞の生存率を低下させた。さらに、コロニー形成能を評価したところ、olaparibと化合物の併用は、単剤処理と比べて、コロニー形成能を相乗的に低下させ、細胞増殖能が抑制されることが明らかとなった。以上より、スクリーニングした化合物はPARP阻害薬の増感剤として有用である可能性が示唆されたことから、現在その細胞死誘導機序の解析を進めている。これに加えて、BRCA1ノックアウトがん細胞株より単離したolaparib耐性株の耐性機序を解析した。その結果、NAD+生合成経路の酵素であるNAMPTの発現上昇を介したNAD+レベルの上昇が、olaparib感受性を減弱させる要因の一つであることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、olaparibの効果を上昇させる化合物をスクリーニングした結果、olaparibとの併用により、相乗的に細胞死を誘導する化合物を得ることができた。さらに、olaparib耐性細胞株を用いた解析により、NAD+代謝経路のNAMPT発現の上昇に伴う細胞内NAD+レベルの上昇が、olaparibの効果を減弱させることを示唆し、研究成果を学術論文として発表した。これらの結果より、本研究の目的の一つであるolaparibの効果を規定する化合物および因子の候補を同定することができたと考えている。同定した化合物の細胞死誘導機序および耐性株における細胞死誘導剤の探索については現在解析を進めており、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度に、PARP阻害薬olaparibに対して高感受性を誘導する化合物を同定するために、エピジェネティック制御因子を標的とした阻害剤ライブラリーを用いてスクリーニングした結果、olaparib高感受性を誘導する化合物を1化合物得ることができた。そこで2024年度は、同定した化合物とolaparibの併用により引き起こされる細胞死誘導機序の解析を進める予定である。具体的には、遺伝子やタンパク質の発現変動の解析や細胞周期解析、細胞死解析等を行うことにより、併用時の細胞死誘導機序を明らかにする。また、本年度にBRCA1ノックアウトがん細胞株より単離したolaparib耐性株における耐性誘導機序を解析した結果、NAD+生合成経路の酵素であるNAMPT過剰発現による細胞内NAD+レベルの上昇が、olaparibの感受性を低下させることを示唆した。この結果に基づき、2024年度は、耐性株のolaparib感受性を回復させるための因子について解析を進めるとともに、olaparib耐性を解消するための細胞死誘導剤を探索する。これらの解析を通して、有効な化学療法が確立していない進行性頭頸部がんやPARP阻害薬耐性を獲得したがんに対する代替治療法の確立に繋げるための基礎データを取得することを目指す。
|