研究課題/領域番号 |
22K10203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
添野 雄一 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (70350139)
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研究分担者 |
工藤 朝雄 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60709781)
佐藤 かおり 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90287772)
田谷 雄二 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30197587)
辺見 卓男 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (20814883)
柳下 寿郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50256989)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 口腔癌 / 扁平上皮癌 / 早期悪性病変 / 異型上皮 / スフェロイド / オルガノイド / 癌微小環境 / 上皮極性 / 間質誘導 |
研究開始時の研究の概要 |
口腔粘膜上皮に発症する口腔癌は、早期に浸潤・転移を起こして生命を脅かす。健常な上皮組織には、異常細胞を排除する仕組みが備わっているが、実際には異常細胞が広がって癌の前駆状態となることが多い。我々は、この要因として“組織損傷と修復応答”に着目し、上皮細胞の集合体(スフェロイド)やマウス舌粘膜の潰瘍・粘膜炎モデルを用いて、組織修復過程での異常細胞の進展機序を明らかにする。
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研究実績の概要 |
口腔粘膜上皮に発症する口腔癌は、早期に浸潤・転移を起こして生命を脅かす。健常な上皮組織には、異常細胞を排除する仕組みが備わっているが、実際には異常細胞が広がって癌の前駆状態となることが多い。我々は、この要因として「組織損傷と修復応答」に着目している。本研究では、上皮細胞の集合体(スフェロイド)やマウス舌粘膜の潰瘍・粘膜炎モデルを用いて、組織修復過程での異常細胞の進展機序解明を目指す。実験系では、変異(異型)上皮の認識・排除に働く分子機序について検証するとともに、口腔粘膜での異型上皮領域の成立に繋がる環境要因を明らかにすることを目的としている。 初年度となる今回は、in vitro口腔上皮モデルの作出を目的として、不死化ケラチノサイトを用いた粘膜上皮スフェロイド・オルガノイドの作製を行った。スフェロイドに関しては、低接着性培養プレートを使用して48~72時間培養することで、小型で安定した形状の粘膜上皮スフェロイドを作製できた。また、不死化ケラチノサイトのハイドロゲル埋入培養では、増殖因子存在下で基底細胞様細胞が増殖し、増殖因子を取り除いて追加培養すると角化傾向を示すことが確かめられ、培養期間延長に伴って角化物形成が増加することを明らかにできた。また、マウス舌粘膜の潰瘍・粘膜炎モデルの予備検討では、麻酔下にてマウス舌の側縁部を歯科用クレンザーで擦過し、擦過回数と回収可能な細胞数の関連性を確かめた。 今後は、異型上皮の認識・排除に働く分子機序を検証するin vitroモデルとして、不死化ケラチノサイトに変異誘発剤を感作させてランダム変異を誘導、クローニングして変異細胞ライブラリーの構築を目指す。これらの変異細胞の使用を前提として、粘膜上皮スフェロイドと線維芽細胞をハイドロゲル埋入して培養することにより、オルガノイド培養モデルを作出していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の当初計画では、不死化ケラチノサイト由来のスフェロイドを作製して実験を進める予定であったが、口腔癌細胞株で条件検討済みであったHanging drop培養法では、不死化ケラチノサイトのスフェロイドが崩壊しやすくハンドリング困難であることが判明した。培養液中に足場となるゼラチンコアの導入を試みるも改善に至らなかったため、低接着性培養プレートを用いたスフェロイド成形法への切り替えを行った。低接着性培養プレートを利用した場合、口腔癌スフェロイドでは培養24時間時点でスフェロイド形態が安定するが、不死化ケラチノサイトのスフェロイドでは緩やかな吸引操作などでも崩壊が生じやすく、細胞間の接着が脆弱であることがわかった。 マウス舌粘膜の潰瘍・粘膜炎モデル実験に向けた予備検討としては、複数本の歯科用クレンザーを束ねた状態で擦過を行い、組織標本上でも上皮層構造の挫滅によりびらん・潰瘍が形成されていることを確認した。処置した個体によって上皮損傷にばらつきが生じていたことから、実験時の舌の保定方法や擦過方法が要検討課題として挙がっており、歯科用マイクロモーターを使用した擦過条件の検討を進めている。また、粘膜擦過後の歯科用クレンザーに付着した細胞の回収を試みたところ、想定よりも収量が少なく、前述の安定した擦過方法の確立とともに、複数個体からの細胞回収の必要性も検討する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度からの要検討課題として、不死化ケラチノサイトのスフェロイド培養条件(細胞濃度、培地条件、培養時間)の検討を継続する。また同時に、不死化ケラチノサイトに変異誘発剤(N-ニトロソ-N-エチル尿素)を作用させて変異株の樹立を進める。 変異株が得られた場合、既存の培養条件が適合しない可能性も想定して、競合スフェロイド培養系の条件検討を進めていく。変異細胞株スフェロイドが作出できた場合には、詳細な表現型解析に供する。細胞接着/細胞骨格分子(CDH1, CD44, CK13, CK14, Vimentin)および既知のEDACの誘因要件(Ras, Src, ErbB2, YAPの高発現、COL17A1/BP180の発現減少)、EphA2-ephrin-A(排出作用)を指標として進める。 また、正常細胞-変異細胞間の競合作用について検証する。得られたスフェロイドは共焦点顕微鏡観察に供し、集合体が正常細胞系統のみで構成されるか変異細胞が混在しているか等の形成パターンを確認する。細胞集団での検証として、各々のスフェロイドを調整し、コラーゲンゲル上で接触させ、境界面での細胞挙動として平衡状態を維持するか侵攻を遂げるかをタイムラプス観察する。 舌粘膜潰瘍―修復モデルの確立についても、継続して条件検討を進めていく。特に、定期的な擦過を繰り返す実験群(週1回20週継続を計画)を試みる。擦過に使用したクレンザーから細胞回収して液化細胞診で異型変化を追跡、回収した細胞の一部は、BME(basement membrane extract)に混合してゲル化し、オルガノイド用培地で培養後、形態解析と遺伝子発現解析を併用して形質変化に関わる分子経路を同定する。組織観察・形態解析には、処置4, 8, 12,16, 20週目の個体から舌試料を採取、免疫染色/マッピング解析に供し、対照側と処置側を比較する。
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