研究課題/領域番号 |
22K10215
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
上嶋 伸知 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (80877069)
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研究分担者 |
酒井 陽 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80772425)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 骨粗鬆症 / 細胞老化 / 細胞外小胞 / 乳歯歯髄幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,従来の医療技術では治療困難であった重篤な疾患や生活の質を損なっている疾患に対して,細胞外小胞(EVs)を用いたアプローチが注目されている。特に間葉系幹細胞は様々な細胞への分化能を持つ細胞であり,さらに細胞の増殖や分化に関する因子を放出するため,間葉系幹細胞を由来とするEVsを用いた治療効果が期待されている。 骨粗鬆症患者は増加傾向にあり,治療はビスフォスフォネート製剤などの薬物治療が主となっているが,顎骨壊死などの有害事象を起こし得る。 本研究では,分化能,増殖能の高い乳歯歯髄幹細胞を由来とするEVsに着目し,骨粗鬆症の骨質改善に対する効果を検証する。
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研究実績の概要 |
研究分担者が下記の研究を発表した。ヒト幹細胞 (以下hMSC) 由来の培養上清(以下CM)は,骨粗鬆症の予防効果を示す新たな再生医療として注目されている。さらに,細胞老化は加齢の最も基本的なメカニズムの1つであり,老化に関連する骨質低下を防ぐ上で重要な役割を果たしている。これまでの知見を踏まえ,私たちはヒト幹細胞由来のCMが閉経後のマウスモデルにおける骨粗鬆症を予防するために幹細胞の老化に影響を与えると仮説を立てた。 in vitroでは,P5とP17のhMSCsを培養し,それぞれのCMを交換しさらに96時間培養した。P5 およびP17 hMSCsは,増殖アッセイ,骨形成分化アッセイ,老化関連遺伝子の発現レベルを分析し,また老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)染色についても検討した。In vivoでは,両側卵巣摘除手術(OVX手術)により発症する閉経後骨粗鬆症マウスモデルを作成し,CMまたはDMEMを投与した。また,マウスはコントロール群,sham群,OVX手術およびDMEM処理群,OVX手術およびhMSCs-CM治療群の4つに分け,手術後4ヶ月で屠殺し,大腿骨および腰椎(L5)のマイクロCT解析,免疫蛍光染色とqPCRによる解析を行った。 その結果,in vitroで老化したP17のhMSCsは,増殖能力と骨形成分化能力を含む細胞機能を損なう効果を示した。対照的に,若いP5のhMSCsは細胞機能を向上させる効果を示した。また老化したP17のhMSCsは,SA-β-Galk活性および老化関連遺伝子の発現レベルを促進する効果を示し,一方,若いP5のhMSCsは細胞老化を防ぐ効果を示した。In vivoで,hMSCs-CMは骨の微環境における細胞老化を減少させ,骨粗鬆症における大腿骨および腰椎海綿骨の骨量,骨密度の減少を予防した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度同様,商用の乳歯歯髄幹細胞が入手しづらいため,乳歯歯髄幹細胞からの細胞外小胞の単離が難しくなっている。 そのため,商用の歯髄幹細胞を培養し,乳歯歯髄幹細胞で行う予定であった研究(培養上清から細胞外小胞の単離,表面抗原マーカーの確認,粒径計測,表面形状の観察)を別細胞で予備実験として行った。また,卵巣摘除モデルラットを作製し骨密度の減少を確認後,大腿骨骨髄を採取し,骨髄から培養した間葉系幹細胞の細胞老化を老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ染色,増殖アッセイ,骨形成分化アッセイ,老化関連遺伝子の発現レベルを予備実験として施行した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はOVXラットに歯髄幹細胞から単離した細胞外小胞を尾静脈への静脈注射にて投与し,大腿骨の組織学的,形態学的変化をHE染色やマイクロCTなどにより,対照群の生食投与ラットと比較検討する。またAGEsの発現を免疫組織化学染色で確認する。また特に破骨細胞に与える変化を検討するためTRAP染色で破骨細胞数の計測を行う。破骨細胞分化により上昇,低下する因子の発現をRT-PCR法で確認する予定である。 細胞老化の抑制を確認するため,SA β-Gal染色やγH2AXの免疫組織化学染色を行う。細胞外小胞の試適注入濃度について検討する。 細胞外小胞のmiRNAプロファイリングについて,マイクロアレイを用いて行うことで骨粗鬆症の骨質改善に関連するmiRNAを探索する。有意差を認めたmiRNAについてRT-PCR法で確認する。 さらに,細胞外小胞中のタンパク質について質量分析ならびに高速液体クロマトグラフィーにより同定し,同定したタンパク質の発現をウエスタンブロッティング法で確認する予定である。
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