研究課題/領域番号 |
22K10217
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
重岡 学 神戸大学, 医学研究科, 助教 (20778716)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 舌癌 / 腫瘍随伴マクロファージ / 炎症性線維芽細胞 / 歯周病 / 予防 / 早期発見 / 早期診断 / がん関連線維芽細胞 / 発癌 / 口腔扁平上皮癌 / マクロファージ / 線維芽細胞 / 発癌メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
口腔扁平上皮癌は難治癌で、予防や早期診断・治療が重要となることから発癌メカニズムの解明が急がれる。 癌細胞は多彩な間質細胞(炎症細胞・免疫細胞・線維芽細胞など)と相互に作用することで癌組織を構築・維持していることから、近年では癌-間質相互作用が新たな治療標的として注目されている。一方、間質細胞同士のクロストークについては不明な点が多く、発癌段階における詳細な検討はない。 本研究では、口腔扁平上皮の発癌過程におけるマクロファージについて、線維芽細胞との協調作用の観点から培養系や臨床検体を用いて解析し、口腔癌の予防や早期病変に対する診断の標的となる候補分子を見出し、治療後QOLや予後の向上を目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は、舌癌微小環境におけるがん関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast:CAF)の特異的機能分化を確認すべく、試験管内CAFモデルを作成した。近年では、ヒトのがんにおけるCAFの起源・機能は多様であることが報告されている。そこで舌癌微小環境におけるCAFの不均一性に着目して検討を進めることとした。申請者は前年度までの検討から、舌癌におけるCAFは浸潤癌にのみ高発現することを見出した。このことから、間質浸潤に伴う組織破壊に対し骨髄由来間葉系幹細胞BM-MSCが癌微小環境に動員された可能性を考えた。そこでBM-MSCを舌癌細胞株SCC25と間接的に共培養すると、増殖能亢進が確認されると同時に、複数の炎症性サイトカインの発現が誘導された。一方で、α平滑筋アクチン(alpha smooth muscle actin:αSMA)の発現は著しく減弱しており、αSMAにより特徴づけられる筋線維芽細胞的CAF(myofibroblastic CAF:myCAF)ではなく、炎症性CAF(inflammatory CAF:iCAF)様の形質を獲得していることが示唆された。人体舌癌組織におけるiCAFマーカーの発現を免疫組織化学的に検討すると、種々の悪性度因子に強い相関を示した。さらに興味深いことに、その局在がαSMA陽性myCAFと大きく異なることが明らかとなった。 さらには、発癌リスク因子に関する検討として、人体舌癌組織における歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis由来lipopolysaccharide(Pg-LPS)に着眼した検討を継続した。試験管内実験において、Pg-LPSはマクロファージ様THP-1細胞との共培養によって誘導されるSCC25の遊走能を促進した。口腔扁平上皮細胞におけるTLR4(Pg-LPS受容体)は発癌に伴い段階的に上昇し、リンパ節転移やCD163陽性マクロファージ浸潤との間に正の相関を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来、CAFは、αSMAなどの筋線維芽細胞マーカーを高発現する集団(いわゆるmyCAF)として一括りに考えられてきた。しかしながら本研究では、CAFの起源としてBM-MSCに着目した解析から、むしろαSMA発現の乏しいiCAF様形質の重要性を示唆する知見が得られた。発癌リスク因子に着眼した検討については、前年度から着手した試験管内実験に加えて、臨床検体を用いた解析からも歯周病原細菌由来LPSとマクロファージ浸潤の関与を支持する結果が得られた。 当初の計画では、既報告に基づきαSMAをCAFマーカーとした解析を予定していたため、研究計画に若干の変更が生じ、口腔癌におけるCAFモデルの作成に時間を要した。そのため、マクロファージとの協調作用の検討には至っていない。一方で、発癌リスク因子に着眼した検討は想定以上に進捗しており、次年度以降に実施する予防法・診断法開発の観点から研究が円滑に進む見通しが立っている。以上から、全体を総括して「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿った研究を推進する。iCAF様形質を獲得したBM-MSCとマクロファージ様THP-1細胞を共培養し、後者に特異的に誘導される分子群をcDNAマイクロアレイにより網羅的に解析する。重要分子の絞り込みについては、既報告のみならず、本年度の研究から得られた独自の知見(iCAF様BM-MSCが分泌するサイトカインやケモカインとの関連性)も参考に効率化を図る。絞り込まれた分子について、舌癌および舌白板症臨床検体のマクロファージにおける発現を免疫組織化学的に解析し、口腔扁平上皮の発癌に重要となる分子を抽出する。さらには、抽出分子を歯周病原細菌との関係性に着目して検討する。
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