研究課題
基盤研究(C)
傷や炎症が治癒しても消失せず、QOLの低下につながる慢性疼痛が社会的な問題となっている。最近、脳に局在を示すオーファン受容体 GPR158 が、骨基質タンパク質オステオカルシン(OC)によって活性化され認知機能の維持や抗うつ作用を発揮することが示された。申請者らもOCがGPR158を介して神経細胞の増殖・分化・生存を促進することを示した。一方、GPR158 とその結合分子の神経障害性疼痛への関与を示唆する報告もある。本研究では GPR158 の神経障害性疼痛の病態形成への影響と末梢神経保護作用を検討し、慢性疼痛の予防・改善方法開発への展開を目指す。
本研究では、骨で最も多いタンパク質であるコラーゲン以外では主要タンパク質成分であるオステオカルシンを感知する受容体GPR158が、末梢神経保護作用および神経障害性疼痛の病態形成に関与する可能性を検証し、その分子基盤を明らかにすることである。令和5年度は、前年度にオステオカルシン添加によって神経栄養因子・神経伝達物質(BDNF、ノルアドレナリン)の発現・分泌量の増加が認められた培養神経細胞様細胞を用いて、オステオカルシンの作用がGPR158を介したものであるか検討した。当該細胞ではオステオカルシン受容体として知られる2つの受容体GPR158およびGPCR6Aのうち、GPR158の発現のみを認めた。siRNAによりGPR158の発現を抑制するとオステオカルシンによる神経栄養因子・神経伝達物質の発現・分泌量の変化が低下し、オステオカルシンの効果が主にGPR158を介していることが示唆された。また、マウス胎児より調製した初代培養神経細胞を用いて、オステオカルシン添加の効果を検証した。初代培養神経細胞においてもオステオカルシン添加によって酸化ストレス誘導性のアポトーシスを抑制すること、BDNFの発現量が増加することが示された。一方、遅れていたGPR158遺伝子欠失マウスの作成が進み、次年度前半に納入される目処がたった。骨の成分であるオステオカルシンは受容体GPR158を介し神経細胞保護作用を示すこと、神経栄養因子や神経伝達物質の発現および分泌量を増加させることを示唆するこれまでの結果は当初の仮説を支持するものである。
3: やや遅れている
GPR158遺伝子欠失マウスの準備に関して、初年度の開始遅れの影響を受けている。その間、野生型マウスを用いたGPR158の神経節での発現の検討や培養神経細胞様細胞を用いた基礎データの取得に時間を費やしている。マウスの準備に目処の立った令和6年度にこれまで準備してきた実験系立ち上げなどに基づいて当初予定の実験を進める。
委託先よりGPR158遺伝子欠失マウスを納入し、当初予定していた神経障害性疼痛モデルマウスにおけるオステオカルシン投与の効果検討を進める。また初代培養神経細胞についても、野生型マウスと遺伝子欠失マウスそれぞれから調製し、酸化ストレスへの耐性や神経伝達物質の発現・分泌量に対するオステオカルシンの効果を検証する。
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