研究課題/領域番号 |
22K10250
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57070:成長および発育系歯学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
村上 大輔 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80611798)
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研究分担者 |
稲田 絵美 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (30448568)
海原 康孝 朝日大学, 歯学部, 准教授 (60274106)
齊藤 一誠 朝日大学, 歯学部, 教授 (90404540)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 口呼吸 / 口唇閉鎖力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、口腔内外の機能的、形態的要因から小児の口呼吸病態を分類し、機能改善に向けた適切な医療介入を可能にするクリニカルパスを構築することにある。 本研究では、小児の大規模集団を対象に、口腔領域における口腔内外の機能的、形態的調査、ならびに歯科的介入の効果を検証することで、個々の口呼吸の原因鑑別を可能にし、有効な介入法を的確に選択できる医療体制を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究では、小児の大規模集団を対象に、口腔領域における口腔内外の機能的、形態的調査、ならびに歯科的介入の効果を検証することで、個々の口呼吸の原因鑑別を可能にし、有効な介入法を的確に選択できる医療体制を構築する。 2022年度は、口呼吸に関連があると考えられる「疾患などの全身状態について」、「鼻・のど・耳の状態について」、「口腔と咬合状態について」、「口唇と歯肉の状態について」、「食事の摂取について」に関する過去のアンケート調査のデータから、未就学児の口呼吸に関連する因子を解析し、さらに口唇閉鎖不全との関連性を調査した。その結果、未就学児の口呼吸発症には「鼻の疾患」、「口唇閉鎖不全」、「嚥下・咀嚼の問題」、「飲食習慣」が関連していることを明らかにした。 2023年度は、口唇閉鎖訓練による機能的介入の効果について検討した。協力施設の未就学児を対象に口唇を「あ・い・う」と動かし、最後に舌を突出する運動を反復する「あいうべ体操」を1年間実施した。訓練前後に対象者の口唇閉鎖力をりっぷるくん(松風)を用いて計測し、顔面軟組織形態を非接触型3次元形態計測器VIVID910(コニカミノルタ社:現有設備)を用いて計測した。訓練前後の変化を解析した結果、口唇閉鎖不全は口元の突出感を憎悪させること、口唇閉鎖不全を有する小児に「あいうべ体操」を実施することにより、口唇を閉じる力が強くなり、口元の突出感が改善されることを明らかにした。よって、口唇閉鎖不全を解消する方法の一つとして、口唇周囲の筋肉を鍛える訓練は有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児を対象とした調査では、口呼吸に関連があると考えられる計53項目に関するアンケート調査を実施し、併せて口腔内形態の資料は、歯科健診における口腔内診察等により舌機能や咬合状態の採取を行った。顔面軟組織形態の評価には、非接触型3次元形態計測器VIVID910(コニカミノルタ社製:現有設備)を用い、新型コロナ感染症の影響でやや規模の縮小はみられたものの計画に基づいたデータ収集は概ね順調に進んでいる。 データ解析についても、これまで収集したデータに基づき進んでいる。未就学児の口呼吸に関連する因子を解析し、さらに口唇閉鎖不全との関連性を調査したところ、未就学児ですでに口呼吸の初期段階が認められることがあり、口唇閉鎖不全や鼻疾患により、呼吸や食事などの口腔機能の発達に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。本内容については、” Factor related to mouth breathing syndrome in preschool children and the effects of incompetent lip seal: An exploratory study.”と題し論文としてまとめたところ、Clinical and experimental dental researchに掲載された。 また、「あいうべ体操」が口唇閉鎖不全のある未就学に与える効果について検討した。その結果、訓練をした子どもは口唇閉鎖力が向上し、口唇周囲の形態が引き締まる傾向があることが示された。本内容については、” Lip and facial training improves lip-closing strength and facial morphology” と題し論文としてまとめたところ、Archives of Oral Biologyに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的には、「口唇閉鎖訓練の効果度に関する検証」が含まれる。今年度は口唇閉鎖訓練の一つである「あいうべ体操」の効果を証明することができた。次年度も引き続き、異なる訓練方法の効果について検証を続ける予定である。現在、「ガムを使った訓練」が口唇閉鎖力と舌圧に与える効果について検討している。また、鹿児島大学工学部機械工学科との共同研究で定量的に口唇閉鎖訓練を実施できる機器を開発した。この機器を使って、成人を対象として「りっぷるくん」を使った口唇閉鎖訓練を実施する際の適切な負荷、負荷のかけ方、効果が出るまでの期間について検討する。これにより、適切な訓練内容を定量的に患者に提供するための基準を策定する予定である。 さらに、未就学児の口呼吸の発症要因として抽出された「鼻の疾患」に着目し、鼻閉が口唇機能に及ぼす影響について検討する。現在、成人の被験者を対象として、鼻閉がある状態とない状態でガムを咀嚼し、上下の口唇や下顎骨の動きがどのように変化するかを、当科で所有しているモーションキャプチャシステムを用いて計測している。次年度には解析を進め、鼻閉が口腔機能に及ぼす影響について明らかにする予定である。
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