研究課題/領域番号 |
22K10254
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57070:成長および発育系歯学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
中納 治久 昭和大学, 歯学部, 准教授 (80297035)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アライナー / ひずみ / 板厚 / 弾性回復 / 変形解析 / アライナー型矯正装置 / マウスピース矯正 / デジタル技術 / 歯の移動メカニズム / 生体力学 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、マウスピース矯正で咬めなくなった、歯列が拡大されすぎて口が閉じなくなった等のトラブルが発生している。その原因は、マウスピース矯正による歯の移動メカニズムが把握されていないからである。 そこで本研究は、アライナーの生体力学的研究を体系づけるために、1)アライナーの矯正力発生時に生じる変形とひずみ分布を定量的に計測、2)アライナーの変形に影響を与える因子の特定、3)アライナーの有限要素モデルの作成を行う。 本研究により、生体力学に基づいたアライナー製作を実現し、「安心・安全・効率的」な装置設計に繋がり、マウスピース矯正のトラブルの減少に繋がると期待される。
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研究実績の概要 |
令和4年度の研究目的は、アライナーの成型時及び歯の移動時に生じた変形とひずみ分布を定量的に計測し、ひずみと弾性回復を評価することである。 【試料及び方法】試料は厚さ1.0mm、直径 125 mm のポリエステルシートを用いた。アライナー作製用樹脂シート表面に2.0mm四方の格子模様を描記し、成型前後および歯の移動に伴うひずみを変形解析するとともに、アライナーの板厚との関係を考察した。歯の移動は犬歯の移動を想定し、歯の移動装置にアライナーを装着、犬歯の配列状態に不整のない位置を開始点(表示荷重を0N)とし、ゆっくりと頬側へ犬歯を移動させ10Nとなった時点、その後除荷を行うため舌側へ徐々に戻し5Nとなった時点、さらに舌側へ戻し0Nとなった時点の4時点を設定した。 【結果及び考察】本実験の結果、1)本法は、成型直後の残留ひずみを考慮したひずみ分布の変化を評価可能だった。2)成型直後の最大主ひずみは、犬歯>側切歯>小臼歯の順で大きい傾向があった。3)アライナーへの荷重に伴い、最大荷重時の10Nとなる時点で犬歯中央上部において大きな最大主ひずみの上昇を認めた。さらに、除荷を行い初期状態へ復元すると、犬歯のひずみ値は回復を認め弾性回復が起きていることを認めた。4)一連のひずみの推移は周囲の領域と相補的に影響しあっており、弾性回復を認める領域とそうでない領域があった。5)最小主ひずみはほぼ全ての点において正値を示しており、ほとんどの領域で圧縮が起きていないことが示された。6)アライナーの板厚分布は成型時に生じ、小臼歯部で厚く、前歯部は薄く、いずれの歯においても歯頚側に向かって菲薄化を認めた。さらに隣接面は厚い傾向があった。しかし、ひずみ分布と板厚分布に明確な相関性は認められなかった。 本研究は、アライナー成型直後の残留ひずみを考慮した上でひずみと弾性回復の関係を評価した点に意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、アライナーの矯正力発生時に生じる変形とひずみ分布を定量的に計測すること目的とし、以下の実験を計画した。1)四辺形要素による応力変形解析を用いた定量的評価法の確立(アライナーシートに描記した四辺形要素の変形解析を行って変形とひずみを評価する。)、2)デジタル画像相関法ARAMIS(DIC:Digital Image Correlation, GOM Correlate, 独GOM社)を用いた定量的評価法の確立(アライナー表面に点状の黒色パターンをスプレーし、ARAMISにて変形とひずみを評価する。)、3)マイクロCTによるアライナーの板厚分布の計測(マイクロフォーカスX線CT装置 (ScanXmate-L090, Comscan)でアライナーを撮影、板厚計測は構造解析ソフト VOXELCON(Quint)を用いて評価する。) 1)、3)は「研究実績の概要」に記載した通り、予定の実験は終了した。2)に関しては、「デジタル画像相関法を用いた矯正用アライナーによる前歯部遠心移動時の変位および歪みの計測」として実験を計画し概ね順調に進行している。アライナーのひずみを動的に計測可能なデジタル画像相関法(DIC)装置は、研究協力者である慶應義塾大学理工学部高野研究室で所有しており、一時的に新型コロナウィルス感染症対策で慶應大学への入館禁止となっていたが、2021年5月から入館が許可され画像相関法(DIC)の実験を再開することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、デジタル画像相関法ARAMISを用いた定量的評価法の確立として、「デジタル画像相関法を用いた矯正用アライナーによる前歯部遠心移動時の変位および歪みの計測」を進めており、実験は概ね順調に進展している。 令和5年度は、アライナーの変形に影響を与える因子の特定を目的として、アライナーの厚み、形態、素材、成型条件等を変更した際の変形とひずみ分布の定量的計測を計画している。さらに、令和6年度以降の計画である「アライナーに生じる変形とひずみ分布を予測可能なFEMモデルの作成」として「Virtual manufacturing of orthodontic clear aligner by numerical simulation」を掲げ、準備を進めている。
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