研究課題/領域番号 |
22K10270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57070:成長および発育系歯学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
八十川 友紀 (松三友紀) 岡山大学, 歯学部, 博士研究員 (90732800)
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研究分担者 |
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | Streptococcus mutans / バイオフィルム / シャペロンタンパク / プロテオーム |
研究開始時の研究の概要 |
小児歯科臨床において、齲蝕罹患率の低下が認識されているが、齲蝕罹患度は二極化が進んでおり、未だに重症齲蝕を呈する小児も少なくない。主要な齲蝕原性細菌であるS. mutans の菌体表層には多くの病原性の高いタンパクが存在し、それらの発現により口腔バイオフィルムが形成され病原性を発揮している。これらの表層タンパクは、あらゆる環境に対応し発現し続けることにより、バイオフィルム形成能を保っている。本研究の目的は、S. mutans における新たなタンパクを同定しバイオフィルム形成への関与を明らかにすることである。これらの解析を進めることで、新たな齲蝕予防システムを確立することにつながると考えている。
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研究実績の概要 |
Streptococcus mutansは、高い耐酸性を有しているため、口腔内の低いpH環境の中でもバイオフィルムを形成し続けることが可能である。その耐酸性にはS. mutansの表層タンパクと低pHを感知するシグナル受容体が機能していると考えられている。特に耐酸性は、S. mutansのシグナル伝達システムの中でも重要な因子であると思われるが、その詳細については不明な点が多い。S. mutansの病原性はすでに表層タンパクであるグルカン合成酵素 (glucosyltransferase; GTF) およびグルカン結合タンパク (glucan-binding protein; Gbp)であることが知られている。本研究ではバイオフィルム形成におけるこれらの表層タンパクおよびシャペロンタンパクの発現について検討した。このうち、GbpAを欠失させた変異株を作製し、GTFをコードするgtf遺伝子の発現を調べたところ、gtfB遺伝子の発現が上昇することが明らかとなった。このことから、バイオフィルム形成量が増加し、バイオフィルムの構造においては、親株と比較して明らかに高さが上昇していた。さらに、耐酸性に関与するシャペロンタンパクDnaKおよびGroELをコードする遺伝子dnaKおよびgroELの発現も同様に上昇していた。これらのタンパクはストレス応答タンパクであることが報告されており、他のタンパクすなわちGbpAが欠失するという細菌にとってのダメージを修復するためにこれらのタンパクの発現が上昇し、結果としてgtfB遺伝子の発現に影響を与えたと考えられる。今後は、S. mutans のバイオフィルム形成に関わるストレス応答メカニズムおよびシグナル伝達システムにおける分子シャペロンタンパクの機能を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特別なトラブルはなく、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
シャペロンタンパクGroELの発現状態の違いによるバイオフィルム形成能およびその他の表層タンパクの発現に与える影響を調べ、タンパクの機能について明らかにする。GroELの発現に影響を与えるシグナルおよびシグナル受容体についてスクリーニングを行う。得られたシグナルによるGroELの発現の変化およびシグナル受容体との発現メカニズムの解析を行う。 1. groEL遺伝子の過剰発現株および発現抑制株の作製を行う。また同時にシャトルベクターを用いて発現抑制株における相補株を作製する。2. 二次元電気泳動システムを用いて、タンパク発現の比較を行う。3. Real-time Reverse Transcription Polymerase-Chain Reaction法にて、S. mutans MT8148と各発現変異株による表層タンパクの遺伝子発現の解析を行う。4. バイオフィルム形成量および構造の検討を行う。形成量については、プレート底面に作製されたバイオフィルムを染色し、吸光度を比較検討する。構造については、蛍光ラベルした菌体と糖を用いたバイオフィルムを共焦点レーザー顕微鏡にて観察する。5. GroELの発現に影響を与えるシグナルを検討する。低pH、好気培養、浸透圧、抗生物質を変化させた状態でS. mutansの培養した後、mRNAを抽出し、それらを用いてgroEL遺伝子の発現量を決定する。6. シグナル受容体とgroEL遺伝子との結合を検討する。まずS. mutansの全ゲノム配列よりシグナル受容体と推定される遺伝子を抽出する。それらのリコンビナントタンパクを作製し、ゲルシフトアッセイを用いて検討する。 これらの分析において、これまでに他のタンパクについて行っており、予定通り実施できる。
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