研究課題/領域番号 |
22K10284
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 良央 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30302152)
|
研究分担者 |
三浦 富智 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (20261456)
高橋 温 東北大学, 大学病院, 准教授 (50333828)
山城 秀昭 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60612710)
篠田 壽 東北大学, 歯学研究科, 名誉教授 (80014025)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 放射性物質 / 臓器蓄積 / 生物学的半減期 / 生体内動態 / 歯 |
研究開始時の研究の概要 |
福島原発事故後から10年以上が経過し長期経過の影響に視点が移りつつあるが、その間、除染などの環境変化や個体の棲息域移動など、一定の環境でない個体も存在することから、可能な限り正確な環境変化を含めた新しい被ばく歴の推定方法の確立が必要となる。そこで本研究では取り込まれた放射性物質が生涯にわたり保存される歯を用いて、環境変化を推定できる方法を探ることを目的としている。
|
研究実績の概要 |
今年度も、福島の高線量地域にて定期的なアカネズミ捕獲に取り組み、捕獲直後のもの、すなわち0日、また放射線フリー環境での飼育期間、10日、20日、30日について6匹以上、また短期的な変化を確認するために5日飼育群を確保することができた。いずれも安楽死後、歯、頭蓋骨、脳、眼球、耳、咬筋(筋)、舌(筋)、耳下腺、顎下腺、皮膚、上腕筋(筋)、胸腺、リンパ節、心臓、肺、褐色脂肪、脊柱起立筋(筋)、白色脂肪、下顎骨(骨)、肩甲骨(骨)、大腿骨(骨)、上腕骨(骨)、椎骨(骨)、肋骨(骨)、骨盤骨(骨)、胎盤、胎児臓器など広く臓器を採取し、まずはイメージングプレートでの検討に取り掛かっている。採取された臓器の一部は、いずれもそのまま冷蔵で持ち帰り、自然乾燥させたのち、ハサミなどを使って粉末状にし、重量を測定し、イメージングプレートを用いた微量検出法にて放射性物質量を検討した。頭蓋からは歯を採取し、臼歯については粉砕して同様の検討を行った。基本的に個体により臓器の放射線量は異なるため、歯の放射線量を基準として、比率を算出したところ、すべての臓器で減少傾向を示した。減少の仕方は臓器により量、減少の期間が異なり、臓器の減少傾向の特徴が明らかになってきている。また臓器の残りは、ホルマリン固定を行い、通法に従いパラフィン包埋標本を作製して、ヘマトキリンエオジン染色にて形態観察を行った。病理学組織学的な観察において明らかな病的な変化はいずれの臓器にもみられないことを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アカネズミの捕獲数、放射線フリー環境での飼育日数、0日、10日、20日、30日に加え、短期的な変化の特徴を取らるための5日を加えおおむね十分な匹数が確保できている。イメージングプレートを用いた放射性物質の検出方法についてもより精度の高いことはもちろん放射線核種の同定なども検討もできることが明らかになっており、様々なデータを算出できる方法になっている。今回はこの方法を利用して各臓器の放射線量を飼育日数ごとに採取し、肝臓、筋、骨について、歯との相関や経時的変化が明らかになっている。具体的には飼育0日群では骨は歯の1.5倍の量の放射性物質が含まれ、歯と骨の放射線量は高い相関を示すことが明らかになった。しかし脛骨や胸骨では、臼歯相対QL値の平均値(0日-10日-20日-30日)が、それぞれ0.98-0.95-0.74-0.53、1.67-1.72-0.50-0.52と減少を示し、歯の保存性が確認できた。また肝臓、大腿筋は、それぞれ2.10-1.17-1.18-0.65、5.50-4.71-1.24-0.61で、高い放射線量であるが減少が著しいことも明らかになった。さらに肋軟骨は、0.97-0.77-0.54-0.46、心臓は、4.07-1.82-1.14-0.69と歯以外の臓器がそれぞれ特徴的な減少傾向があることが示唆された。ここまでの結果は概ね予定通りの進捗状況で順調に進展していると評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の捕獲で採取臓器は、歯(切歯と臼歯)、骨系では、下顎骨、肩甲骨、大腿骨、上腕骨、椎骨、肋骨、骨盤骨と赤色骨髄の多いとされる骨や体重負荷の異なる骨間での違いなどを検討したい。また筋では、咬筋、舌、上腕筋、脊柱起立筋、心臓などウシでの調査で異なる蓄積を示した筋種の違いについて検討する。その他、脂質の多い臓器や分泌臓器など多角的な視点から検討を行うため、脳、眼球、耳、耳下腺、顎下腺、皮膚、胸腺、リンパ節、肺、褐色脂肪、白色脂肪などを調査する。いずれも各臓器の歯との放射線比を算出することで、減少傾向をとらえる。また今回、予定にはなかったが胎盤、胎児あるいは胎児臓器なども採取できたので、胎盤通過に関しても母体臓器と比較することで検討する。さらに臓器内血液量の影響を調べるために生食潅流の臓器も確保している。血液を含む量が異なる臓器の血中放射線量の影響の調査する予定である。またパラフィン標本は、オートラジオグラフによる局在の調査を行う予定となっている。できる限り標本薄切の厚みをそろえてイメージングプレートでの減少傾向と対比できる様にして、組織のどこから減少するか組織局在を調査したいと考えている。一部のアカネズミは捕獲時テトラサイクリンを注射していることから歯については非脱灰研磨標本を作製して、捕獲前後での放射性物質の取り込み量の変化を形態計測学的手法によって放射性物質のドット数を計測し客観的に評価する予定である。
|