研究課題/領域番号 |
22K10308
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小関 健由 東北大学, 歯学研究科, 教授 (80291128)
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研究分担者 |
丹田 奈緒子 東北大学, 歯学研究科, 講師 (00422121)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 臨床技能 / 機械学習 / 技能評価 / 支台歯形成 / スケーリング / プロービング / 遠隔教育 / 歯科臨床操作 / AIエンジン / 自動評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、複合現実(Mixed Reality)を医療系臨床技能教育に応用し、さらに歯科臨床技能AI評価エンジンを組み込んだ歯科技能遠隔教育プラットフォームを構築することを目的とする。そのために歯科臨床技能の「力の見える化」と「遠隔技能評価法」を確立する。「力の見える化」には感圧ディバイスとハプティックデバイスを活用して手指にかけている力の大きさと方向を示す。遠隔技能訓練では、学生の「力の見える化」による技能評価を個別の実習プログラムの内容へ反映させるため、Artificial Intelligence(AI)を用いた効率の良い遠隔技能自動評価法を確立する。
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研究実績の概要 |
歯科臨床では手指技能が関与する臨床操作が多く、その教育には多くの時間と労力が必要である。この実習現場では。技能の直接指導が中心で有り、評価指標が少ないことが問題となる。COVID-19感染症流行後のNew Normal の取り組みの中において、効率的な歯科技能遠隔教育を構築するために、我々はこれまで歯科臨床技能、特に力の見える化を実現するTraining Gadget 教育システムをICTを活用して構築してきた。本研究では、スケーリング・ルートプレーニングや補綴処置の歯冠形成の臨床操作教習をモデルとして、大規模臨床操作データベースを構築し、それを基にした遠隔自動評価AIエンジンを開発し、それを活用した歯科臨床技能学習プログラムを制作して、学習者単独で完全自動化で初習から習熟までの学修を行う歯科技能学修システムを創出する。特に本システムの特徴は、これまで活用されてこなかった力の明示による技能教育である。世界の教科書に於いても歯科臨床技能の力に関する記載は極端に少ない事に示されるように、力を中心に据えた技能教育は未開の教育方法である。さらに遠隔技能学習においては、双方向の会議形式のWEBカメラを用いた授業を実施すると、姿勢や器具の操作手順や動作をリアルタイムで伝授することは可能であが、唯一、伝達不可能な技能は、器具にかける力や方向の教授である。これは、遠隔授業にのみ関わる問題では無く、従来の対面授業での実習でも、同様に伝達することが困難な技術要素である。この力の明示化と技能教育への応用を実現したのがTraining Gadget 教育システムであり、本研究ではこのシステムを大きく進化させていく。この成果を元に、歯科臨床技能AI評価エンジンとICTを活用した歯科臨床技能統合学修・評価システムの開発の課題に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究として、始めに補綴系の実習課題である「下顎右側第一大臼歯の金属冠の形成」実習を検収モデルのひとつに選択枝し、Training Gadgetの基幹部品で構成された歯冠形成技能収集装置を構築した。この装置では、歯科臨床技能を記録するビデオカメラと力センサを組み込んだ実習用マネキン頭部の形状で有り、実際の歯科臨床と同等に、エアータービンを用いて金属冠支台歯形成を実施する事ができる。この記録装置を用いて、歯科臨床技術の熟練者15名と研修医6名の歯科臨床技能を収録した。記録した巨大なデータを整理して解析すると、熟練者に於いて、削合時のに掛かっている力の揺らぎが少ないが、かける力には相当な幅があり、適正な力を抽出する事が難しいと判断される状況であった。このことから、力の大きさだけではなく、安定性(ゆらぎ)の評価も重要である事が示された。 もう一つの初期の研究課題として「歯周プローブを用いたプロービングによる根面探査」を選択した。これは、技能的要素が少なく、単純化したモデルが構築できるためである。本実験用に改良したTraining Gadgetを用いて、歯周プローブにて下顎右側第一大臼歯の根面探査を行った際に、歯周プローブ先端が根面に接触する時の動かし方と力を評価した。対象は歯科衛生士学生で、根面探査の結果、本人は正確に根面探査を実施してるが、実際には歯周プローブが歯冠部最大豊隆部に接して、根面に接していないケースが多々ある事が示された。これはプロービング時の力の計測以前の技能習得の問題であり、歯科臨床技能教育に操作の明示化にて、学生の操作を正確な評価・フィードバックが必要であることが示された。これらの基礎データを元に、歯科臨床技能データベースの構築を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な歯科臨床技能の実習現場からの収集法が確立しているので、2年目はスケーリング・ルートプレーニング操作を含めた歯科臨床技能データベースを構築する。これまで、初習の歯科衛生士学生のスケーリング・ルートプレーニング操作は収録されているので、このデータの再評価とデータ区分の整理とラベル付けに一定の時間が必要となる。ラベル付け後には、最適な機械学習モデルの選択を行い、自動での技能評価の可能性の検証を実施する。同様に、初年度実施した金属冠支台歯形成の実験で修収集した技能データのラベル付けも実施するが、評価項目が多岐に渡ることが1年目に実験で示されたので、現場の教育者を交えて評価項目の整理からの実施が必要である。これらを踏まえて、歯科臨床技能データベースの活用の鍵となるデータラベルの制作を中心に実施する。 歯科臨床技能の教習は。新入生・新学年への進級、臨床研修医への就職等、年度替わりで新人が発生する。本研究は歯科臨床技能統合学修・評価システムの開発であるので、研究期間で社会実装可能な状態に近づけるためには、構築した技能教育システムの実際の運用を試用する機会が多かえば、改善点も多く見つかる。そこで、初年度で実施した、「金属冠支台歯形成」、「歯周プローブによる根面探査」、「スケーリング・ルートプレーニング」の歯科臨床技能実習に関して、歯科臨床研修医を対象として、これまでの実験から得られた評価項目を中心に技能研修プログラムを提示し、受講してもらうことで歯科臨床技能データベースを充実させ、更なる課題の抽出を行うと共に、受講者の技能レベルの向上を行う。これらの実際の研修プログラムの運営は、最終年度に実施する歯科臨床技能統合学修・評価システムの開発の基礎データとなる。
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