研究課題/領域番号 |
22K10315
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
岸 光男 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (60295988)
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研究分担者 |
矢野 明 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 研究部長 (50312286)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 口臭 / VSC / ナマコ含有ゼリー / 口腔真菌 / Candida albicans / 口腔レンサ球菌 / マナマコ / 口腔カンジダ / 食品 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はこれまで要介護高齢者や周術期における口腔カンジダ症の予防を目標に、抗真菌物質サポニンを有する食材のマナマコをゼリーとした食品の開発を行ってきた。近年口臭物質である硫化物をよく産生するPorphyromonas gingivalisをカンジダが保護する作用なども報告されている。さらにマナマコに含まれるコラーゲン等の保湿成分は硫化物の揮発を抑制する効果が期待できる。これらのことから、マナマコ含有ゼリーを継続的に摂取することで口臭が抑制されるという仮説を検討することを目的とする。
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研究実績の概要 |
1か所の食品加工場において研究協力者を募り、同意を得た者31名から同意を得た。その後2名が辞退し、ベースライン検査時に1名が除外基準(抗菌薬服用)に該当したため、28名を対象とした。身長・体重、年齢、歯磨き回数、舌清掃習慣、喫煙・飲酒習慣、服薬状況は質問紙により調査した。口腔診査前に、ブレストロンⅡ[(株)ヨシダ]による口臭(VSC濃度)測定(食後2-3時間絶飲食条件下)で行った。口腔内の検査項目は、硬組織の状態、CPIによる歯周組織の状態、口腔粘膜疾患、舌苔スコアとした。検査後、舌背から滅菌綿棒で試料を採取し、ゲノムDNAを抽出後、総細菌、口腔レンサ球菌、口腔真菌及びCandida albicansにそれぞれ特異的プライマーを用いた定量的PCRに供した。対象者を口腔真菌量が同等になるよう層化ランダム割り付けによりナマコ含有ゼリー(試験食)摂取群と非含有ゼリー(対照食)摂取群(各14名)に分類した。2週間、午前10時と午後3時にゼリーを摂取してもらった後、ベースラインと同様に口臭測定と口腔内検査を行った。試験群のうち、2名が試験期間中にドロップアウトしたため、最終的な分析対象は26名(試験群12名、対照群14名)となった。ゼリー摂取前後の比較では、対照群の平均VSC濃度は1,429から396 ppb(p=0.005),試験群では1,120から475 ppb(p=0.127)に低下し、対照群で統計学的に有意だった。真菌とC. albicansは検出率、平均コロニー数とも、両群ともに摂取前後で差がなかった。一方、レンサ球菌数はゼリー摂取後にどちらの群も増加し(CFU対数値:対照群6.06から6.81、試験群6.06から6.68)、対照群では統計学的に有意であった(p<0.001)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで高齢者施設で口腔内微生物と全身並びに口腔内状況との関連を検討してきた結果では、口腔乾燥による口腔カンジダの増殖などにより、口腔真菌と口臭強度の正相関が予測された。しかし、健全成人を対象とした本研究では真菌及びC. albicansがいる者で口臭強度(VSC濃度)が低い結果となった。これは、C. albicansを含む口腔真菌と口腔レンサ球菌との関連が高齢者と異なっていることによるものと考えられた。すなわち、高齢者では口腔乾燥などの要因で口腔真菌が増殖する環境では口腔レンサ球菌が減少する、すなわち相反する関係にあるのに対し、健全成人では口腔レンサ球菌量と口腔真菌量は正相関関係にあった。本研究対象者群では口腔レンサ球菌とVSC濃度が逆相関関係にあり、レンサ球菌が多い者では口臭が低かった。このため見かけ上、口腔真菌と口臭強度の関係が逆相関関係を呈したものと考えられた。 新型コロナウイルス感染症流行の影響で、高齢者施設のみならず、一般の事業所などでの調査も困難な状況が続き、令和4年度は報告した1回の調査しかできなかった。そのため、予期しなかった交絡因子を調整するためにはサンプル数が少ない状況で、分析も困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後調査対象を増やして、今回確認できた交絡因子を低減させたい。 また、口臭強度や口腔微生物の動向には全身状態が大きく関与するため、高齢者施設での調査を行う予定である。現在、某訪問医療の協会に研究協力施設の紹介を依頼しているところである。
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