研究課題/領域番号 |
22K10345
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
大岡 貴史 明海大学, 歯学部, 教授 (30453632)
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研究分担者 |
野嶋 琢也 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10392870)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 窒息予防 / 喉頭隆起 / 動作解析 / VR技術 / 摂食嚥下 / 食事行動 / 喉頭挙上 |
研究開始時の研究の概要 |
誤嚥や窒息は食事に関わる問題で致死的な事象であり、口腔機能の低下や全身状態の悪化、認知機能の低下などにより引き起こされることが知られている。特に、「食べるペースが早い」「一口の量が多い」などの食事動作の問題が原因であることが明らかになった。 今回の研究では、「安全な食事方法を体験で学ぶ」方法の構築を目的とする。特に、知的能力障がい者や誤嚥リスクの高い食事動作や嚥下運動をVRにて再現し、「望ましい自食動作」では「嚥下運動の促進」、「窒息リスクの高い自食動作」では嚥下運動を抑制するような学習プログラムを作成し、「安全な構築に繋がる基礎的データの収集や実際の介入効果について研究を行う。
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研究実績の概要 |
嚥下時の喉頭挙上動作の特徴を計測・評価するための計測法についての検討を行った。今年度は喉頭隆起の動作を計測するためのカメラ位置や角度、男女差や年齢差などの要素を中心に検討を行い、誤差が少なく再現性が高い計測上の設定を確立することを中心に研究を行った。 その結果、喉頭挙上量の計測に影響するカメラ位置、角度と計測誤差の関連が明らかになった。カメラと対象との距離は0.5メートルから3メートルまで顕著な差異はみられなかったが、角度は水平的および垂直的角度いずれも影響を与えていた。特に、水平的角度は計測制度に大きく影響を与えるとともに、計測が不可能な角度もあることが明らかになった。 喉頭挙上量は男女差には大きな影響を受けないものの、肌の色や照明の明暗によって計測誤差が変化していた。さらに、年齢による喉頭挙上量は比較的少ないものの、嚥下困難感を持つ高齢者(ほとんどが口腔機能低下症またはオーラルフレイルの診断基準に該当する)では喉頭挙上量が有意に少なかった。また、女性の高齢者では前頸部の皮膚の凹凸が少ないこと、または皮膚の皺が若年者よりも顕著で喉頭隆起が明確に計測されない事象が増加した。 最も精度が高い喉頭隆起の動作解析を行う条件が明示され、若年男性が対象であること、水平的にはほぼ正面からの角度にカメラを設置すること、垂直的には水平から下方45度までの範囲から撮影することが必要と推察された。反対に、高齢女性では動画上での喉頭隆起の認識が行えない可能性が高くなること、嚥下困難感と喉頭挙上量との間には相関がみられる可能性が考えられた。一方、反復嚥下唾液検査では検査者の手指によって喉頭隆起および舌骨部を触診しながら行うため、検査者の手指の位置やディスポーザブルグローブの色などに影響を受ける可能性があり、それらを今後検討して喉頭挙上動作の再現を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常成人や高齢者を対象とした喉頭挙上量の計測や喉頭隆起の動画上での認識システムの改善は予定通り行えている。特に、若年成人と高齢者との間の比較が行えたこと、口腔機能低下症やオーラルフレイルに該当する高齢者での喉頭挙上量の計測値が本人の嚥下困難感と関連している可能性が明示できたことは大きな進歩である。 一方、重度嚥下障害では姿勢保持が一定時間行えずカメラによる喉頭隆起を安定して撮影できないこと、または高齢者では喉頭隆起が皮膚表面上で明確に認識できず、計測そのものが実施困難である例が多く、この点は研究予定では想定できなかった点である。しかし、窒息事故を生じる比率が多い知的能力障がい者では上記の計測が行えた例があり、有病者での計測や窒息事故に関する発生頻度や要因に関する研究が行えたことから、おおむね順調に研究は行えていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
嚥下障害患者または窒息や誤嚥性肺炎の既往を持つ知的能力障がい者における喉頭挙上動作の特徴を計測し、その特性を頸部に設置する嚥下動作提示デバイスに置換することを予定している。知的能力障がい者でも指示理解が可能な者は一定数おり、特に通所施設や授産施設を利用している知的能力障がい者は喉頭挙上量の計測およびオーラルフレイルのチェックリストの記載なども可能であり、研究対象者として十分採用できると考えられる。 さらに、これらの対象者の窒息リスクを評価する食事動作のチェックリストはすでに完成された研究成果として論文掲載されており、窒息既往、食事動作のチェックリストを総合して窒息リスクが高い知的能力障がい者の喉頭挙上量の特徴を計測し、誤嚥リスクの高い嚥下動作を疑似的に再現することを目標としている。
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