研究課題/領域番号 |
22K10368
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
池辺 寧 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00290437)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ハイデガー / 科学 / 医学 / 医師 / 技術 / 機械技術 / 医学哲学 / 現象学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ハイデガー哲学を手がかりにして現象学的医学哲学を構築することに取り組む。ハイデガーは医学や医療について主題的に取り扱うことはなかったものの、医学や生命科学の進展も踏まえつつ、技術時代における死すべきものとしての人間のあり方を考えている。本研究では科学(学問)や技術、身体などへのハイデガーの言及を手がかりにして、高度に技術化した現代社会に求められる医学・医療のあり方を論じる。
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研究実績の概要 |
令和5年度はまず、前年度に引き続いてハイデガーの科学論についての研究に取り組み、研究成果をまとめた。刊行が遅れ、令和5年度中には公表できなかったが、この研究の成果は令和6年度中に公表予定である。ハイデガーの科学論についての研究実績の概要は令和4年度の「実施状況報告書」に記した通りである。 次に、全集版『ツォリコーン・ゼミナール』に収録された覚書などを手がかりにして、ハイデガーの医学観についての研究に取り組んだ。ハイデガーは医学を主題的に取り上げることはなかったが、技術や科学について繰り返し論じており、医学に対する関心がなかったとは考えにくい。医学は一方で、人間を対象にした自然科学であり、医師は自然科学的な研究成果に基づき、診断・治療を行う。診断や治療において、医師は患者の身体を測定可能な身体として対象化する。しかし、専ら医学の力でもって患者の身体を制御・支配し、病気を治すことができると医師が考えるならば、患者に向き合った医療とはいえない。医学は他方で、人間についての学であり、自然科学に包摂されない。医師の目的は患者を助けることである。患者を助けることとは、単に患者の心身の機能の維持や回復だけでなく、患者の生への支援を意味する。つまり、患者が病気を抱えて生きていくうえで、日々の生活や自己理解に新しい可能性を開くための支援を意味する。ハイデガーは、医学が併せ持つ自然科学と人間についての学という二つの側面に架橋を試み、医学のあるべき姿を提示しようとする。もっとも、ハイデガーの医学に対する関心は、医学のあり方を具体的に論じることよりも、医学を基礎づける哲学的熟慮の必要性を医師たちに訴えることのほうにあった。ハイデガーによれば、人間についての学である医学が真に科学であるためには、医師は「思惟する医師」でなければならない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度はハイデガーの科学論、およびハイデガーの医学観についての研究に取り組んだ。科学論についての研究では、ハイデガーの論文「世界像の時代」に関連する草稿や覚書などを手がかりにしてハイデガーの科学論を捉え直し、その現代的意義を論じた。この研究は令和4年度に行ったハイデガーの機械技術論についての研究とともに、本研究課題を進めるにあたって基礎となる研究の一つである。一方、医学観についての研究では、ハイデガーの医学に対する見方や医師観を明らかにした。この研究は類似の研究があまりない、本研究課題の核となる研究の一つである。令和5年度はこれらの研究成果を論文にまとめることができ、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度はまず、ヤスパースの医師観についての研究に取り組む。この研究は当初の研究計画になかったが、令和5年度においてハイデガーの医学観を研究するうちに、研究に取り組む必要性に気づいた。ヤスパースはハイデガーと同時代を生き、ハイデガーと交流のあった哲学者であり医師である。ヤスパースは、医師の行為は自然科学的認識と人間性という二つの柱に立脚していると考え、技術時代における医学・医療のあり方を論じている。ヤスパースの問題意識は本研究課題と密接に関連するゆえ、ヤスパースの医師観についての研究に取り組むことによって、本研究課題を遂行していくことにする。 次にハイデガーの現象学を手がかりにして、患者の病いの体験、医療者の患者へのかかわりについての研究に取り組み、本研究課題の目的の達成をめざす。
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