研究課題/領域番号 |
22K10373
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 公益社団法人地域医療振興協会(地域医療研究所) |
研究代表者 |
原田 拓 公益社団法人地域医療振興協会(地域医療研究所), 練馬光が丘病院, 科長 (40817003)
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研究分担者 |
和足 孝之 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (00792037)
宮上 泰樹 順天堂大学, 医学部, 助教 (10816317)
原田 侑典 獨協医科大学, 医学部, 講師 (40810502)
志水 太郎 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50810529)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 急性腹症 / 診断エラー / 診断プロセス / 質の改善 |
研究開始時の研究の概要 |
診断エラーは従来考えられていたより頻度が多く、社会的経済的な損失が非常に大きく、医療安全分野における最大の問題である。しかし、本邦での診断エラーの研究は始まったばかりで多施設大規模研究や介入研究は実施されておらず、その中でも急性腹症は頻度が高いながらも実態が不明である。本研究は急性腹症での診断エラーの頻度と関連因子を単施設研究で明らかにした上で、多施設大規模研究で外的妥当性の判断を行い、前向き介入研究にまでつなげる研究である。本研究により急性腹症での診断エラー減少の糸口と介入による効果が明らかになると、個々の医師の診断精度の維持・向上、そして患者安全や医療経済効果への改善につながる。
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研究実績の概要 |
研究代表者原田拓は2022年度において、単施設研究における虫垂炎の診断遅延に関する後ろ向き観察研究論文を掲載した(PLoS One. 2022;17(10):e0276454)。急性虫垂炎は急性腹症において最も頻度が高い急性腹症であり、画像診断の進歩にも関わらず診断エラーが減っていないこともしられている疾患でもある。これまでに診断エラーと関連する因子の先行研究はいくつかあるが、成人虫垂炎症例において、医師の専門性(総合診療医や救急医などのジェネラリスト)が診断遅延と関連すること、そして、身体診察に対する練度や姿勢が関連している可能性を示した。これはこれまでの検証されていなかったことであり、今後の急性腹症の診断エラーを減らす戦略に非常に寄与すると考えられる。 それ以外にも、下部消化管先穿孔の診断エラーの多施設研究(Sci Rep. 2022;12(1):1028)のデーターをもとにして頻度の高い疾患の臨床像の把握や緊急読影システムの整備によって下部消化管穿孔の診断エラーがどれくらい減らせるのかどうかを検証した二次解析研究を行っており、現在査読をうけているところである。こちらに関しても教育面(頻度の高い疾患の臨床像の啓蒙)で、診断エラー症例の約25%、システム面(緊急読影システムの整備)において約33%、両者合わせて約半数程度の症例が予防可能であることを示しており、今後の急性腹症の診断エラーを減らす戦略に非常に寄与すると考えられる。 その他、病院総合診療医学会の良質な診断プロセスのワーキンググループにおいて、診断エラーに関連する研究に共著者として参加し、診断プロセスに関連する症例報告や観察研究もいくつか掲載を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者の異動および、不慮の事故による緊急入院などもあり、当初の予定と比較してすこし遅延は発生している。しかし、 急性腹症における2つの疾患(急性虫垂炎、下部消化管穿孔)において、それぞれ後ろ向き観察研究を行い、一定の学術的な検証が行えた形である。 次年度は、今後の多施設前向き観察研究への下準備として、その他の急性腹症を来す疾患の診断エラーに関してのScoping reviewおよび多施設後ろ向き観察研究を行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
急性腹症における2つの疾患(急性虫垂炎、下部消化管穿孔)において、それぞれ後ろ向き観察研究を行い、一定の学術的な検証が行えた形である。しかし、急性腹症は様々な疾患を包括した概念であり、疾患によって診断エラーのパターンも異なり、対策もそれに準じたものになると考えられる。しかし、急性虫垂炎などの例外を除けば急性腹症の診断エラーは臨床研究自体が少ないこともあり、関連する因子が不明な疾患も有る。 したがって、研究計画の修正として、関連因子が不明な状況での多施設観察研究を行う前の段階として、まずScoping reviewを行うことによって、これまでの症例報告や臨床研究を行い、どこまでわかっていて、どこまでわかっていないのかを具体的にする。そして、Scoping reviewから得られた知見をもとに、診断エラーに関連しうる因子を想定し、多施設観察研究につなげていくことを今年度実施予定とする。Scoping reviewに関してはすでに検索式の検証まですすんでおり、多施設観察研究に関しては、病院総合診療医学会の良質な診断ワーキンググループで行うことを予定している。すでに多施設共同後ろ向き研究を実施しているメンバーであり、本研究に関連する連絡等が迅速かつ定期的に行え、研究の推進に良好なメンバー構成、環境下にあり、支障はないと考えられる。
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