研究課題/領域番号 |
22K10384
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
齋藤 信也 岡山大学, 保健学域, 教授 (10335599)
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研究分担者 |
下妻 晃二郎 立命館大学, 生命科学部, 特任教授 (00248254)
白岩 健 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (20583090)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 教授 (80372366)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 医学的無益性 / 量的無益性 / 質的無益性 / 生理学的無益性 / 経済的無益性 / QOL / 医学的適応 / 無益性 / 医師の裁量権 |
研究開始時の研究の概要 |
医学的効果の乏しい患者に対する延命治療中止の問題は、特に米国において、医療倫理上のトピックであり、「医学的無益性」概念は、それを解決する一つの有力なものといえる。しかし、民間保険ベースの医療システムを有し、訴訟社会ともいえる米国で生まれたこの「医学的無益性」概念が、制度の異なる我が国でそのまま受容できるものかについては疑問が残る。特に、医師が自らの裁量のもとに純粋に医学的に下すとされる「医学的」無益性判断に「経済性」の観点、すなわちコストへの配慮が混入する可能性は否定できない。そこで我が国においてこうしたことを明らかにすることを目的に、調査を行う予定である。
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研究実績の概要 |
研究1年目は、文献検討に充てた。まず基本文献として「Wrong Medicine (Shneidermann &Jecker)(邦訳「間違った医療」)」を精読した。 医学的に無益な医療というものは厳然と存在するのことから、医師は純粋に医学的に判断して無益な治療や処置を行わなければよいだけなのに、司法の介入や病院の評判低下を恐れたり、患者や家族の強要に負けて、意味のない治療を続けるのは、本来の医師の仕事ではないというのが、同書の基本的な考え方である。 著者らが初版で提起した医学的無益性の分類として、まず量的無益性(成功の確率が非常に低い医療)が挙げられるが、そこでは、100分の1という具体的な数字を提示している。次に、質的無益性(医療のゴールのレベルが許容できない)では、病院から退院できる見込みがない治療を無益としている。初版ではこれは集中治療室から出られることとなっていたが、第2版では、病院から退院できるというところまで引き上げている。 同書では、こうした具体的なめやすを手引きに、その治療が無益かどうかは、専門家である医師自身が決めるべきであるということが繰り返して主張されている。しかしこれは、古き悪しき医療として捨て去られた感のあるパターナリズム(父権主義)の復活につながるのではないかという懸念がぬぐえない。そもそも医学的無益という概念自体が、医師の傲慢さを表しているという批判ともつながるものがある。そこで、多くの医師たちはそれを避けるために、価値中立的に、生理機能を改善することのできないものが無益な医療であるという定義(生理学的無益性)をとることで、それはやっても無駄という医師の価値観が入り込む余地をなくそうとしている。ところが著者らは、それを腰の引けた態度と厳しく批判し、むしろ、このレベル以下の医療は無益であるという価値観を堂々と世に問うべきだと主張していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献検討は遅れ気味ながら進んでいる一方で、医師を対象としたフォーカスグループディスカッションについては、コロナ禍もあり、リクルートが順調に進まず、計画段階でとん挫したままである。
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今後の研究の推進方策 |
フォーカスグループディカッションについては、新型ウィルス感染症の影響もほぼなくなったことから、2023年度上期に実施すべく、リクルーティングを急ぐ。2023年度に予定していた、それを踏まえた調査紙調査については、その下期に行うことで、全体の進度を調整する予定である。
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