研究課題/領域番号 |
22K10386
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
入江 芙美 九州大学, 医学研究院, 助教 (30930747)
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研究分担者 |
松尾 龍 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60744589)
北園 孝成 九州大学, 医学研究院, 教授 (70284487)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 脳卒中 / 予後 / Stroke / ADL / Prognosis / Predictor |
研究開始時の研究の概要 |
急性期脳卒中患者を対象とした大規模かつ網羅的な疾患コホート研究である「Fukuoka Stroke Registry:FSR」のデータベースを活用し、脳卒中発症後の日常生活動作(ADL)の障害に関連する予後規定因子を解明することを目指す。具体的には、脳卒中患者の発症5年後までのADLの状況について評価し、発症前の状況、入院時の臨床所見・検査結果、入院中の急性期治療の内容といった情報と併せて解析することで、脳卒中患者の長期機能予後に影響する因子を見出すことを目指す。これにより、脳卒中患者のADL改善にむけて対策を進める上でのターゲットが明らかになるものと期待される。
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研究実績の概要 |
我が国において、脳卒中は介護が必要となった原因疾病の第2位であり、高齢化の進展に伴って今後さらに脳卒中患者数が増加することが見込まれる中、脳卒中後の日常生活動作(ADL)の障害が大きな課題となっている。 そこで我々は、急性期脳卒中患者を対象とした大規模縦断的疾患コホート研究である「Fukuoka Stroke Registry:FSR」のデータベースを活用し、脳卒中発症後のADLの障害に関連する予後規定因子を解明することを目指して、研究を進めている。 具体的には、脳卒中患者の発症5年後までの予後を追跡し、ADLの状況についてmodified Rankin Scale (mRS)スコアで評価した。また、発症前の状況、入院時の臨床所見・検査結果、入院中の急性期治療の内容といった、機能予後に関連すると考えられる項目について、欠損値や異常値を確認し、データクリーニングを行った。さらに、構築したデータセットを用いて解析を行い、年齢や性別といった基本的患者属性が、独立して長期機能予後不良(mRSスコア高値)に関連していることを見出した。特に、高齢の女性で機能予後が不良であることが示唆されている。 今後は、機械学習手法を用いて、長期機能予後に関連する因子を網羅的に探索し、探索により見出された因子の機能予後への影響について詳細な検討を行う予定である。特に、入院時の神経学的所見や血液・尿検査結果など、FSRのデータベースに収載されている精緻な臨床情報を駆使することで、機能予後を規定する因子について新たな知見を得ることができるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、令和4年度は、急性期脳卒中患者を対象とした大規模縦断的疾患コホート研究である「Fukuoka Stroke Registry:FSR」に登録されている患者について、発症後毎年の予後に関するデータを収集した。予後に関しては、死亡、脳卒中再発といった情報に加えて、機能予後評価のためにmodified Rankin Scale (mRS)スコアを記録している。また、FSRデータベースに収載されている発症前のADLの状況、既往歴/合併症、入院時の臨床所見/血液・尿検査結果、入院中の臨床所見の変化、退院時の臨床所見といった各項目に関し、欠損値や異常値についての確認等、データクリーニングを行った。これまでの研究により、脳卒中後の長期の機能予後に関する情報と、機能予後に関連すると考えられる予後規定因子の情報とを含んだ、網羅的かつ精緻なデータセットが構築されつつある。 また、構築されたデータセットを用いて、年齢や性別といった基本的な患者属性が、脳卒中後の機能予後にどのように影響するかについて、線形回帰手法を用いて解析を進めた。これまでの解析により、高齢者及び女性において、長期機能予後が悪い(mRSスコアが高値となる)ことが示唆されており、今後の予後規定因子の検討においては、年齢や性別といった基本的患者属性を十分に考慮する必要があると思われる。 このように、研究は計画どおりに進んでおり、初年度において既に一定の成果を挙げたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、解析に用いるデータセットをより充実させた上で、機械学習手法を用いて、長期機能予後不良と関連する因子を網羅的に探索する予定である。機械学習手法では、非線形の関係性についても解析することが可能であり、U-shape、L-shapeといった形の用量反応関係も把握できると期待される。機械学習手法によって、入院時の生理学的・神経学的所見や血液・尿検査結果などの臨床情報や、Diagnosis Procedure Combination (DPC)データなどのレセプトデータを網羅的に解析することで、長期機能予後に関連する因子の解明につながるものと考えている。 機械学習手法により選定された因子については、機能予後への影響の程度や、影響のメカニズムについても詳細な検討を行い、脳卒中治療の臨床の現場で、その因子がもつ意義について十分に考察する。 こういった解析・検討を進め、最終的には、脳卒中後のADL低下を予防するためにターゲットとすべきポイントについて提言できればと考えている。
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