研究開始時の研究の概要 |
日本において乳幼児の「不慮の事故」による死亡を減少させることは社会全体の課題である.しかし保育士への小児一次救命処置(Pediatric basic life support:以下PBLS)の有効な継続教育の方法が存在しないことが長年の課題であった. 本研究はこの解決にあたり「保育士が単独でできる,PBLS自主学習教材の開発」を目的とする。その実現にあたり①保育士のPBLSの習得状況の実態とその影響因子の解明,②①を搭載したカスタマイズ可能な要素と効果的な提示方法の解明,③②をもとにした「PBLS」自主学習用プロトタイプの開発を行い,④プロトタイプを用いた比較実験による効果検証を行う.
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研究実績の概要 |
保育士が単独でできるPBLS自主学習のための継続学習教材開発を目的として,2年目は,小児一次救命処置(Pediatric basic life support:以下PBLS)知識と技術の自信への関連要因を探るために,県内の保育所保育士を対象とした実態調査をおこなった.2023年2月-3月に新潟県佐渡市全域の公設民営保育所24箇所の保育士223人を対象としてアンケート調査を実施し,その結果を第25回日本救急看護学会学術集会で発表した.アンケート回収は113件,うち有効回答106件(有効回答率93.8%)であった.PBLS受講状況とPBLS知識高低群の比較では,PBLS受講経験で,高得点群が有意に「経験あり」であった(p=.009).更に,PBLS技術の自信とPBLS知識高低群の比較では,PBLS技術の自信5項目において高得点群が有意に高かった(p<.005).有意差があった項目は,安全確保やCPR,AEDなどPBLSスキルの主要項目であった.今回の対象者は,保育士経験年数が平均15年以上であり,熟練保育士が多い特徴があった.PBLS受講の実態として,8割以上にPBLS受講経験があり7割がPBLS受講回数3回以上と積極的に子どもの救急蘇生を学んでいた.今回の結果より,PBLS研修は知識面でのPBLS技術の強化に役立つことが示唆された.一方で,1年以内のPBLS受講率が6割を切っており,PBLS研修の在り方を検討していく必要がある.保育所で重大事故が発生した際に,正確で質の高い迅速な救急蘇生を全ての保育士が学習・評価できる仕組み作りが課題であることが示唆された.次に,2023年3月-6月に地方都市である新潟市中央区の公設民営保育所21箇所の保育士385人を対象としてアンケート調査をおこなった.現在,両方の結果を分析しており,発表および論文化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PBLS知識と技術の自信への関連要因を明らかにする目的で実態調査をおこない,共同研究者間で検証できたこと,その結果を主要学会へ発表できたこと,現在,2箇所の現状調査を終えて分析に着手していることから,概ね順調に経過している.
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