研究課題/領域番号 |
22K10395
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
山本 智朗 杏林大学, 保健学部, 教授 (30433600)
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研究分担者 |
只野 喜一 杏林大学, 保健学部, 助教 (20759443)
長瀬 美樹 杏林大学, 医学部, 教授 (60302733)
深見 光葉 杏林大学, 保健学部, 助教 (80881341)
松友 紀和 杏林大学, 保健学部, 准教授 (90781237)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | postmortem imaging / gross anatomy / medical imaging / medical education / contrast agent / Autopsy imaging / medical imaging anatomy |
研究開始時の研究の概要 |
近年、死後画像は死因解明に活用されている。医学教育の分野でも肉眼解剖学実習で実習献体の医療画像を提示するにより、肉眼解剖と画像解剖をリンクさせた教育ができる。しかし本邦では、血流のない遺体で造影を行う場合、造影剤を静注し、心臓マッサージによる強制循環をする例があるが、肋骨骨折や心肺損傷なども危惧される。そこで、遺体の損傷を最小にした新しい遺体用造影撮像法を確立することで、肉眼解剖学と画像解剖学をリンクし、医師だけでなく診療放射線技師など医療技術者に質の高い医学教育の提供に貢献できる。 本研究は本邦では実施件数の少ない死後造影画像に対し、遺体専用造影剤の開発と造影撮像法を確立するものである。
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研究実績の概要 |
2022年度はこれまでの研究実績を元に、継続研究内容に新規研究内容を追加するため、造影剤候補となる化合物や、欧米で広く利用されている油性造影剤の購入など、新規研究の実施計画を立てると同時に、当初の目的であった死後画像用造影剤投与装置のデザインと、それを予算内で制作してもらえるメーカーを検索し相談を行った。さらに、本学科の学部生による死後画像を参照しながらの肉眼解剖実習を行い、実施アンケートを実施し、その成果の途中経過を解析した。 新規造影剤の開発については、K/Naイオンによる浸透圧の影響をさけ、低濃度でも線減弱係数が高く、中性に近い化合物を検討した結果、CT用はヨウ化カルシウム、MR用は酢酸ガドリニウムがベース化合物として適していることを基礎実験を通して確認した。投与装置については、使用する投与率が低値であるため、それを正確に測定するセンサーが高額であり、多くの制約の中でも要求を最低限満たす設計が可能であることが分かったので、その設計を元に発注し、2022年度3月27日に納品された。しかし、年度末だったので、次年度にその性能評価を行うこととした。 2022年度の研究成果発表としては、第20回日本オートプシーイメージング学会(8月27日、川崎市内)にて「動脈投与による死後全身造影MRAの検討」として口頭発表を行った。また、8月15日から5日間、本学学生4名と肉眼解剖を行った。2021年に実施した内容を含め「献体を用いた死後全身造影画像を肉眼解剖実習に導入した診療放射線技術学教育の試み」として論文をRad Fanに投稿し、2022年3月に掲載された。さらに第12回国際法医学放射線画像学会(2023年5月26日~28日)に演題登録を行いacceptされたので、口頭発表および展示発表を行う。これまでの結果は医学教育や研究に有用であることが十分に示されていると判断する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に計画した内容はほぼ実施できた。ただしMR用造影剤である酢酸ガドリニウムの中和の際に金属錯体が生じ、24時間以降に白色結晶が発生することが判明した。これは今度対策を検討する必要があるが、中和剤がない現状でもイメージングには支障がないことは確認済である。CT用造影剤のベース化合物としてヨウ化カルシウムは非常に水に溶けやすく、極めて低い濃度でも十分なX線吸収能力があることが分かった。当初はヨウ素の気化を心配したが、想定以上に低い濃度がこれを解決してくれたので、今後の造影剤開発に期待が持てる基礎化合物の1つである。 油性造影剤については輸入に伴い米国販売価格の3倍程度となることで、実験への使用量を制限する必要が生じている。また、新しい動物実験用シリコン系造影剤が新規発売されたのでこの基礎検討を行ったが、油性造影剤に比べて希釈液と分離しやすいことが分かったので、死後画像用造影剤としては不向きかとしれないことと判断した。 頭部DSAについては、25例(計50画像)から①視覚評価による5分類と②描出血管のスコア分類を行った結果、①と②は大凡近い分類になった。しかし若干例でミスマッチがみられたが、スコア分類の方が定量的に描出分類可能であることが示唆された。症例を重ねて50例程度実施できれば、統計的解析的に精度の高い評価を示すことが出来ると予測している。 新規に開発を検討した死後画像用造影剤投与装置は、当初の予定より製作費が掛かることが分かった。今回は必要性低減の機能に絞ったため予算内で制作できた。しかし納品時期の関係で性能評価と実際の使用は2023年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
造影剤については、これまでの候補化合物を元にさらに適した化合物の検討を行う。特に細胞への影響が少ない、またはないことを確認する必要があるが、食用豚の解体後の内臓を教育研究用に入手可能な業者があったので、基礎実験を多く出来るため、献体に使用前のテストに利用する。CT造影法およびMR造影法については、先行研究をさらに参照し、死後画像の撮像プロトコールについてより詳細に検討していく。特にMRでは体温の低下がMR信号に多大な影響を与えるので、体温と撮像パラメータの関係をよく検討する必要がある。また投与量、投与率についてもより詳細に検討していく予定である。 教育効果については、解剖実習の指導者数の関係で、現在は卒業研究の希望者のみを対象としているため、評価用の実施人数が少ない。しかし継続して行うこと、また希望学生のリクルートを行うことで、より精度の高い教育効果の解析を行う。 造影剤投与装置は、指示値通りの吐出量か、吐出率が正しいか、動作不良や誤作動が生じないか、運用上の問題がないかなどを詳細に検討していく。 研究成果について、CT造影剤、MR造影剤の現状を含めて、論文にできるデータが揃うので、適切な論文誌に投稿をしていく。同時に、関連学会においても成果の発表を行うが、国内の関連学会でも死後画像に関する演題数が減少している、または同じ研究者のみが多くの成果を発表している状況なので、情報収集の観点からも関連国際学会の方が適している分野だと考える。
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