研究課題/領域番号 |
22K10431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
佐和 章弘 広島国際大学, 薬学部, 教授 (70389104)
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研究分担者 |
山中 浩泰 広島国際大学, 薬学部, 教授 (30202386)
小林 秀丈 広島国際大学, 薬学部, 講師 (70441574)
木村 幸司 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (90389106)
清家 総史 広島国際大学, 薬学部, 助教 (90806275)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 薬剤耐性 / 院内感染制御 / 抗菌薬 / メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 / バンコマイシン耐性腸球菌 / 薬剤耐性菌 / 分子疫学 / 抗菌薬使用数量 / 院内感染管理 |
研究開始時の研究の概要 |
新たな抗菌薬の開発が滞る中,本薬剤の不適切な使用は耐性菌選択圧を高めるだけでなく,耐性菌による院内感染の拡大にも直結して医療経済的に多くの無駄を生じるなど問題を含んでいる.また,地域医療圏における抗菌薬の使用と耐性菌の出現や拡大に関する情報共有も十分ではなく,耐性菌を制御できる抗菌薬管理プログラムの構築は急務である.本研究は地域の医療事情に合致した新たな抗菌薬管理プログラムを策定する基盤構築を目指し,医療施設と連携の下,抗菌薬使用動向の調査や耐性菌分離状況の調査を実施する.
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研究実績の概要 |
本研究は、広島県呉市における複数の医療施設から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の遺伝学的および生物学的特徴の解明を行った。本研究は、抗菌薬の適切な使用と院内感染対策を通じて、抗菌薬耐性菌の拡大を防止し、感染管理プログラムの改善を目指したものである。本研究の主な成果として、MRSAおよびVREの分離株に対する遺伝子型分析を実施した。MRSAにおいては、パルスフィールド電気泳動(PFGE)、SCCmec型、Multilocus Sequence Typing(MLST)、Panton Valentine leukocidin(pvl)遺伝子の有無を用いて、遺伝子型別の分類を行った。その結果、SCCmec type IVが最も多く見られ、特にpvl陽性株の増加が確認された。さらに、抗菌薬使用密度(AUD)と使用日数(DOT)の比率とMRSAの分離率には有意な逆相関が見られた(p = 0.00004)。一方、VREに関しては、遺伝子型別の分析を行い、分離された株が主にvanA遺伝子を保有していることが判明した。これらの株は、バンコマイシンに加え他の複数の抗生物質に対する耐性を示した。さらに、MLSTより今回分離されたVREは、広島県内で分離されているクローンと同型であることが判明した。 この研究を通じて、抗菌薬の適正使用を促進し、感染拡大の防止に資すると同時に、将来の抗菌薬開発や感染症対策の立案に対する貴重な情報源となると考える。さらに、地域医療圏における抗菌薬管理プログラムの構築に必要な基盤として機能し、地域社会全体での薬剤耐性菌の監視や制御に寄与することが期待される。今後、地域全体の抗菌薬使用動向や耐性菌の分布状況を把握し、より効果的な抗菌薬管理プログラムの構築に向けた取り組みを進める必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、広島県呉市の医療施設との連携から、患者情報と菌株の受け入れが確立され、この連携によってデータ収集が可能となっている。さらに、遺伝子型の分析を通じて、耐性菌の動向を把握し、院内感染対策と抗菌薬の適切な使用において必要な情報をおおよそ毎月医療施設へフィードバックしている。このように、本研究は当初の目的にある医療施設と大学間での連携を促進し、耐性菌の制御に寄与しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き医療施設との連携をさらに促進し、より広範な地域からの薬剤耐性菌の収集と分析を目指す。これにより、地域全体の抗菌薬耐性の動向をより正確に把握し、対策を講じることが可能となる。次に、分離されるクローンの経時的な変化の観察を続けることで、抗菌薬の使用パターンや院内感染対策の効果を評価する。抗菌薬使用密度(AUD)、治療日数(DOT)、および抗菌薬使用割合(AHI)のデータを利用して、抗菌薬の適切な使用と耐性菌の拡散防止策の有効性を検証するための基盤とする。さらに、新たな分子生物学的手法を導入し、より詳細な遺伝子型解析を行うことで、耐性菌の伝播パターンや起源を明らかにします。特に、次世代シーケンシング技術を活用することで、遺伝的多様性や抗菌薬耐性のメカニズムをより深く理解し、新たな治療戦略や管理プログラムの開発に繋げることが期待される。これらの取り組みを進めることにより、薬剤耐性の問題に対する解決策を提供し、公衆衛生の向上に貢献することを目指す。
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