研究課題/領域番号 |
22K10447
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
|
研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
光岡 俊成 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (70909621)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 医薬品備蓄 / 大規模災害時 / 負担感 / 事業継続計画 / 大規模災害 / 地域薬局 |
研究開始時の研究の概要 |
国民の生命維持や生活の維持に不可欠な医薬品等の補給を行うためには、合理的な費用負担で、地域医療の医薬品等の供給主体である薬局において医薬品などを備蓄する必要がある。備蓄対策として、過剰な備蓄と廃棄コストを低減するため、平常時において災害用の在庫も含めて順次使用し、消費した分を購入して在庫を追加する回転備蓄する方法により、地域全体で最低限のコストで危機に対応することも可能である。本研究ではこのような仕組みを確立するため、大規模災害時に備えた地域薬局の医薬品等の新たな備蓄方法(リプレイスモデル)を構築し、地域全体でのコスト削減効果について調査を行うことで、その有用性を検証する研究を実施する。
|
研究実績の概要 |
2018年9月6日に発生した胆振東部地震とその後に発生した停電等のライフライン復旧の遅れにより、多くの薬局で医薬品提供の対応に追われた。ライフラインの復旧の遅れは、薬局の医薬品提供能力を減じ、被災者等への薬物治療を滞らせる。そこで被災地に備蓄されている医薬品を活用することが有効であるが、これまで道内薬局における医薬品備蓄の現況や何が負担となっているかは明らかでない。本研究では、北海道薬剤師会に所属する2,132薬局(北海道全域の94%程度に相当)を対象に、薬局の属性、災害時備蓄の体制、負担感についてWeb調査システムを用いた無記名自記式による調査を行い、600薬局から回答(回答率28%)を得た。①医薬品備蓄の必要性の認識は、薬局の規模、常備医薬品数、地域支援体制加算区分の高い薬局ほど高かった。その理由として全体の53%が「避難所・被災地支援」のために医薬品備蓄が必要と回答していた。しかし、②具体的な事業継続計画(BCP)を準備している薬局は161薬局(27%)に過ぎず、事業実施計画は、薬局の規模が大きいほどBCPを準備している薬局の割合が大きく事業継続を組織的課題として捉える傾向にあったが、地域の薬局への医薬品供給を要件とする地域支援加算薬局や地域連携薬局が具体的な事業継続計画の策定と関係しておらず、災害時に地域支援を行う薬局としての機能を果たせない可能性があることが示された。③さらにBCPはあっても想定日数の記載のない薬局は19.9%、残りの8割の薬局では、備蓄想定日数は1週間未満が68.2%を占めていた。負担感は「期限切等による廃棄コスト」「備蓄体制整備のためのマンパワーの確保」「災害時に使用できる通信手段の確保」「災害時における医薬品量の確保」「備蓄場所の確保」が高く、災害時のみのリソース増加の負担感を高くしていることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、回転備蓄の仕組みを導入する際に必要な情報を集めるため、基礎的な調査を実施した。調査は、2022年10月8日に一般社団法人北海道薬剤師会に所属する2,132薬局(北海道全域の94%程度に相当)の薬局開設者・管理者に、アンケート調査への協力依頼状を郵送により依頼し、依頼状に記載されたURLから回答者がアクセスするWeb調査システム(Questant、 株式会社マクロミル、東京)を用いた無記名自記式によるアンケート調査を行った。2022年11月30日までに得られた回答を集計した。そのため、調査項目は、回答者の薬局の属性、大規模災害に備えた医薬品備蓄の意識、事業継続計画(BCP:business continuing plan、以下、BCPと略す。)における医薬品確保の予定、災害時における必要な医薬品を備蓄する負担感について尋ねることで、現況を把握することにした。その結果、概ね目的が達成できた。
|
今後の研究の推進方策 |
国内外で災害等が起きると、災害に関連した原材料の不足による医薬品製造所での生産中 止、輸入・流通・消費をつなぐサプライチェーンが途絶することが予想される。国民の生命維持や生活の維持に不可欠な医薬品等の補給を行うためには、合理的な費用負担で、地域医療の医薬品等の供給主体である薬局において医薬品などを備蓄する必要がある。 今回の調査結果から、地域の薬局への医薬品供給を要件とする地域支援加算薬局や地域連携薬局が具体的な事業継続計画の策定と関係しておらず、災害時に地域支援を行う薬局としての機能を果たせない可能性があること、「期限切等による廃棄コスト」「備蓄体制整備のためのマンパワーの確保」「災害時に使用できる通信手段の確保」「災害時における医薬品量の確保」「備蓄場所の確保」が高く、災害時のみのリソース増加の負担感を高くしていることが示された。そのため、備蓄対策として、過剰な備蓄と廃棄コストを低減するため、平常時において災害用の在庫も含めて順次使用し、消費した分を購入して在庫を追加する回転備蓄する方法を、事業継続計画として検討する必要性があると考えられる。 また、これを地域全体で支える備蓄方法として採用し、行政施策や地域の関係者の負担で必要なイニシャルコストや保管費用を支援することで、最低限のコストで危機に対応することも可能であると考えられる。今後、本研究ではこのような仕組みを確立するため、大規模災害時に備えた地域薬局の医薬品等の新たな備蓄方法(リプレイスモデル)を構築し、地域全体でのコスト削減効果について調査を行うことで、その有用性を検証する研究を実施する予定である。
|