研究課題/領域番号 |
22K10461
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
神田 真人 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (50444055)
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研究分担者 |
桑原 比呂世 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (70940170)
井上 貴裕 千葉大学, 医学部附属病院, 特任教授 (90868811)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 抗がん剤 / DPCデータベース / 心機能障害 / 循環器合併症 |
研究開始時の研究の概要 |
抗癌剤による既知の循環器合併症としては、虚血性心疾患から心不全、高血圧、がん関連血栓塞栓症など多岐にわたる。本研究では、DPCデータベースを用いて、担がん患者で循環器合併症を発症した症例と抗がん剤との関連を調べることで、抗がん剤の未知の循環器合併症リスクを探索する。また複数の薬剤による合併症のリスク増加の可能性についてもあわせて探索する。さらに候補薬剤について心筋細胞・マウスへの暴露実験による検証とあわせて心筋障害の作用メカニズムを考察する。これらにより、抗がん剤使用による循環器合併症の発生頻度の減少と患者の予後改善、および合併症予防のための薬剤開発につなげる。
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研究実績の概要 |
抗がん剤使用が多種の循環器合併症を引き起こすことが報告されてきたが、新薬開発が続く中、単剤による未知の副作用、および複数併用による未知の増強作用が存在すると想定される。本研究は①抗がん薬の未知の循環器合併症、および複数の薬剤による未知の相互作用について、DPCデータベースを用いて発見する、②発見された抗がん剤の未知の副作用について、基礎医学的検証を行うことで、発現メカニズムを検証し、予防処置・薬剤の開発につなげる、以上の2点を目的としている。抗がん薬による循環器疾患の合併症として、まずは抗がん薬と心機能障害・心不全発症の関連について探索を進めた。担癌患者で心不全入院した患者の前入院での抗がん薬使用をレトロスペクティブに解析することで、使用されている頻度の多い薬剤のいくつかを見出した。上記にはアントラサイクリン系薬剤など既知の薬剤もあったが、それ以外でこれまであまり日本人では報告が少なかった薬剤も複数見出された。それらを候補薬剤として、薬剤の使用後心不全での入院の有無がどれくらいの割合で起こっているかを前向きに探索している。その中の一つとしてEpidermal growth factor receptor (EGFR) inhibitor であるosimertinibでは、2107例の投与例のうち、35名が心不全を発症していた。心不全発症群と非発症群で、年齢および腎機能障害が、心不全発症の有意なリスクファクターとなっていた。今後は、osimertinibの他の薬剤との心機能障害における相乗効果の可能性の検証や、ラットの心筋細胞でのメカニズム検証を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、保持するDPCデータの取り込みによるデータベース化、および検索システムが確立できた。データベース上の取り込み病院数はまだ増え続けているが、数100万に達する抗がん剤使用症例を蓄積し、SQLを用いて上記の抗がん剤ごとのプレスペクティブ・レトロスペクティヴの検索を自由に行えるようになった。今後候補となった薬剤については、まずは心筋細胞を使ったin vitroおよびマウスを用いたin vivoで心筋障害の発生メカニズム検証を行う予定である。そのためにまず新生児ラットの心筋細胞を培養し、心筋に対する障害が以前より報告されているドキシサイクリンを用いて、心筋アポトーシスやDNA障害などを評価するモデルを確立した。この際、通常の左室心筋だけでなく、右室心筋を独立して培養することにも成功しており、右心不全にもつながりうる右室心筋への影響も評価できるシステムとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、まずデータベース研究では、上記心機能低下・心不全に関与が疑われる薬剤のさらなる洗い出しと、それぞれを併用した場合の心不全発症リスク増加についての解析を行う。それらと平行して、抗がん薬の培養心筋に対する心筋障害発症の有無の確認と、発症した場合は、そのメカニズムについて検証を行う。単独での心筋障害を検証した後に、複数での作用の増強効果についてあらためて評価する。それぞれの薬剤の心筋障害の薬理的な検証がある程度進んだら、心筋を保護するための薬剤について、各抗がん薬の心筋障害メカニズムを踏まえた、新規薬剤候補を抽出し検証する。こちらがある程度進んだ段階で、同じ検証をマウスを用いた実験をin vivoで行っていくことを検討する。
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