研究課題/領域番号 |
22K10468
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 昌宣 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (70416551)
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研究分担者 |
木村 緑 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (40883989)
鹿田 佐和子 (松崎佐和子) 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (00853053)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 拡大保因者検査 / 成人期発症遺伝性疾患 / 着床前診断 / 胎児観 / 生殖観 / 生殖医療 / 出生前検査 / 着床前検査 |
研究開始時の研究の概要 |
拡大保因者検査(ECS)とは、配偶者選びや妊娠に際して、予め遺伝性疾患の遺伝学的スクリーニングをおこなうというコンセプトである。こうした取り組みは、従来発端者の発症を持って遺伝学的リスクに直面していたカップルに対して、予め備える・回避するという行動を可能にする。反面、ECSは人々の生殖や産まれてくる児に対する思いを変化させる可能性がある。従来の出生前診断・着床前診断の進歩が世にどのような影響を与えてきたのかを振り返り、それと比較しながらECSが我が国における生殖観・胎児観に与えるインパクトを予測する。
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研究実績の概要 |
2023年度は二人の研究分担者と大学院生の協力を得て、研究の進捗を図った。 研究分担者の一人である木村を中心として、顕性(優性)遺伝性疾患の保因者診断に関する調査を行い、論文報告を行なった。 もう一人の分担者である松崎は、サイエンスカフェなどのワークショップを通じて地域での情報発信に努めた。 修士大学院生を指導し、その課題研究として遺伝性疾患に対する着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する情報提供の障壁となりうる要素を取り上げ、臨床遺伝専門医を対象としたアンケート調査による検討を行った。その結果、PGT-Mに関わっている臨床遺伝専門医は限られていること、PGT-Mが実施された疾患や却下された事例について開示されている情報が少ないこと、などがクライエントに対する情報提供の障壁となっている可能性が示された。 拡大保因者検査(ECS)が相談・実施される可能性が高いと考えられる施設として、着床前遺伝学的検査(PGT)実施施設に注目した。日本産科婦人科学会のHPにて公開されているPGT実施施設の情報をもとにアンケート調査を実施したところ、国内においてECSが行われている施設はPGT実施施設にはほとんど存在しないことが明らかとなった。また今後実施を予定している施設も少数であった。一方、海外でECSを受けた患者への対応に苦慮するという意見も見られ、国内での実施の有無にかかわらず対応を検討する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度、研究代表者の異動により研究計画の変更を余儀なくされたことによる遅れが影響しているが、研究協力者を得て成人発症遺伝性疾患、着床前遺伝学的検査に関する調査を実施し、また拡大保因者検査の実施施設として最も可能性が高い着床前遺伝学的検査実施施設に対するアンケートを実施し、着実に成果を挙げている。想定よりも学会発表が少なく、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究によって、国内でのECS実施が限定的であることが判明し、市民公開講座など大規模な啓発イベントは時期尚早であると考えられる。一方で、海外でのECS受検者が不妊治療施設を受診するなど、対応に苦慮しているという実態が明らかとなってきた。 一方、周産期施設から未診断の同胞の疾患について、エクソーム解析により原因遺伝子を同定したケースが報告されている。こうしたケースは、レトロスペクティブな検証としての保因者検査であり、ECSが意図するプロスペクティブな保因者検査と区別して考える必要があるが、両者の違いを一般大衆にわかりやすく解説することも今後重要な課題になると考えられる。 そのため、今年度は今までの研究成果をまとめると同時に、海外で行われているECSの結果を日本で利用する際に必要な検討事項や、実際の事例などについて、学会等において情報交換を行うことに重点を置き、今後臨床の現場で必要とされるであろう情報とその提供のあり方について検討を行いたい。
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