研究課題/領域番号 |
22K10480
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 岡山大学 (2023) 岡山商科大学 (2022) |
研究代表者 |
宍戸 圭介 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 教授 (10524936)
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研究分担者 |
粟屋 剛 岡山商科大学, 法学部, 特任教授 (20151194)
加藤 穣 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20727341)
中塚 幹也 岡山大学, 保健学域, 教授 (40273990)
張 瑞輝 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (70732246)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 診療拒否 / 応招義務 / 臓器移植 / 宗教的拒否 / メディカル・ツーリズム / LGBT / 性別適合手術 / メディカルツーリズム / 患者支援 / 医療難民 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「現代における診療拒否の諸相」を解明し、診療拒否の理由として”何”が倫理的・法的・社会的に正当かを検討することをもって、医療提供や患者支援のあり方について提言を行おうとするものである。 診療拒否のケースには、これまでほとんど議論されてこなかったものがある。 たとえば、海外で医療(移植、性別適合手術など)を受けた患者が、帰国後にフォローアップを断られる事態がある。また、宗教的教義により輸血を拒否する者に対して、(必ずしも輸血が必要でない治療へも)輸血同意書を迫る等、間接的な方法で患者を牽制するケースがある。 我々研究グループは、こうした新しい診療拒否の問題に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究では、今日的な診療拒否の問題(海外で治療を受け帰国した者のフォローアップにかかる診療拒否など)に、調査・検討を及ぼすことにより、適切な医療の提供のあり方や患者支援の方途を探ることを中心的課題としている。 令和5(2023)年度も、A.国内の実態調査およびB.理論的検討を進める予定であった。 1. 第10回釧路生命倫理フォーラム(2023年8月11-12日@釧路市)を開催した。宍戸および中塚の報告を基に、状況整理を行なった。 2. International Society for Clinical Bioethics(国際臨床生命倫理学会)の第20回年次大会(2023年11月23-24日@クロアチア)に、宍戸・粟屋が参加した。宍戸が性別変更の手術要件に関する日本の最高裁の違憲判断(最大決令和5年10月25日)とその意義について紹介・発信した。また、クロアチアの研究者と、共同研究の可能性について意見交換した。 3.第27回岡山生命倫理研究会(2024年3月2日@岡山商科大学)を開催した。診療拒否の実態調査に関して、アンケート調査を進めることを確認・調整した。また、宍戸・粟屋が中心となり、シンポジウム「渡航移植と臓器あっせん 東京地判令和5年11月28日を受けて」を開催した。 4.分担研究者の論考2報が出版された。(張瑞輝「医療同意権の行使主体に関する一考察(1)」名経法学48号1-14頁(2024年)KATO, Yutaka. “Continuity of Care in Transplant Tourism. A Case from the United States and its Implications for Japan” J Philosoph Ethic Health Care Med, No. 17, December 2023. pp. 14-24)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度はコロナ禍とロシアの軍事侵攻などの状況から、予定していた調査等が進まないことがあった。前者(コロナ禍)については、状況は大幅に改善し、当初の遅れを取り戻しつつある。しかしながら、ロシア・中国等での調査・研究はまだしばらく困難を伴うことが予想され、計画の変更が必要となっている。国際調査については、令和6(2024)年度も、世界情勢や為替の動きにも注目しながら、限られた期間と予算内で何ができるかを引き続き検討する。 また、医療ツーリズムとそれに伴う診療拒否の問題については、調査対象に刑事事件に発展したものがあり(東京地判令和5年11月28日)、調査の継続が困難となっていた。これに関しては、別のケース(LGBTQ当事者への診療拒否)の調査・検討を先行させることを研究グループ内で打合せた。既に、調査協力をお願いする当事者団体と連絡をとっており、現在は、アンケート項目の作成に取り掛かっている。令和6年内に倫理委員会の審査を経てアンケートを実施し、年明けあたりには一通り分析をかける。令和6年度末には、学会・研究会等でアンケート結果のドラフト版を報告したい。今年度末ないし次年度初頭には、本件調査に基づく正式な論考を投稿することを目指す。 なお、令和5年度は研究代表者の所属機関変更のため、レンタルサーバ会社との契約が引き継げず、一時的に主催研究会(岡山生命倫理研究会および釧路生命倫理フォーラム)のWebページにアクセスできない状況が生じていた。これに対応すべく、令和5年度後半に、全面的にWebページのリニューアルを図った(http://www.cc.okayama-u.ac.jp/bioethics/index.html)。現在(令和6年4月)は、最新の研究会情報に関してはアクセスが可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、LGBTQ当事者への診療拒否の問題(海外で性別適合手術を受けるようなケースも含む)について、調査・研究を行うことが、研究活動の中心となる。 現在、先行研究の調査と関連団体への調査協力依頼が進んでおり、アンケートの設問項目を検討している段階にある。当該アンケートは、将来的に別のケース(渡航移植、信仰に基づく診療拒否など)との比較検討、また国際的な比較調査にも耐えられるように設計することを想定しており、それだけに設問項目の設定が難航している。 しかしながら、我々は、年内には、信頼性確保のためのプレテストや倫理委員会の審査を経て、実際の調査に入りたいと考えている。調査結果の分析と結果の報告に関しては可能な限り令和6年度内に行い、正式な論文を今年度末(ないし次年度初頭)に投稿することを目指す。 計画実現に向けて、年2回の主催研究会を今年度も開催する予定である。8月の釧路生命倫理フォーラムに関しては、既に計画がスタートしており、研究会のWebページに案内を載せている。今後、Webページを充実させることにより、より我々の調査・研究活動とその成果を発信していくことに努める。 海外調査に関しては、急激な円安進行のために、実地調査がかなり厳しい状況となってきている。可能な限りオンラインでの調査が可能となるように、今後も検討を行う。国際学会への参加・報告については、国際共同研究においては諸外国の研究者との関係づくりも重要であることから、今年度も研究代表者ないし分担者が実地でこれを行う予定である。
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