研究課題/領域番号 |
22K10493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
熊谷 剛 北里大学, 薬学部, 講師 (30365184)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ヘビ毒 / 自然毒 / フェロトーシス / 鉄イオン / 酸化脂質 / 酸化ストレス / 脂質酸化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ヘビ毒の毒性成分の一つであるL-アミノ酸オキシダーゼ(LAAO)が、過酸化水素を生成する酸化酵素であることに着目し、LAAOにより引き起こされる細胞障害性が過酸化水素により生じた酸化脂質依存的に誘導される細胞死に起因する可能性を検証して、その毒性の発現機構を詳細に解明することを目的とする。また並行してLAAO特異的な阻害剤の探索を行い、ヘビ毒の毒性発現におけるLAAOの役割及びLAAO阻害剤が持つ毒ヘビ咬傷治療薬としての可能性を実証する。本研究nより得られる成果は、現在抗毒素血清投与以外に有効な治療法がない毒ヘビ咬傷に対する全く新しい治療法の開発に繋がると考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヘビ毒成分であるLAAOが酸化脂質依存的細胞死を誘導することを実証し、その発現機構を明らかにすること、及び毒ヘビ咬傷におけるLAAOの寄与を明らかにしLAAO阻害剤の治療薬への可能性を検討することである。昨年度までに、LAAOによる細胞死に、酸化脂質生成および遊離鉄が関与することを明らかにしていた。本年度は、さらに詳細に誘導機構の解析を行った。 実験にはヒト横紋筋肉腫由来細胞RD細胞株を用い、LAAOは市販で入手可能なニシダイヤガラガラヘビ(Crotalus atrox)由来のLAAOを用いた。細胞障害性の評価はLDHアッセイにより評価した。昨年度までに明らかになった遊離鉄の関与についてさらに詳細に解析するために、フェロトーシスの阻害剤として広く使用されており、三価の鉄イオンにより親和性があるデフェロキサミン (DFO)と、二価の鉄イオンや亜鉛イオンにより特異性があり、細胞膜透過性があるフェナントロリン(Phe)を用いて比較検討した。その結果、DFOよりPheがより低濃度で有意に細胞死を抑制した。次に細胞内外のどちらで二価鉄イオンが機能するのかを検討するために、Pheおよび細胞膜透過性がないバソフェナントロリン (BPhen)を用いて比較検討した。その結果、BPhenはLAAOによる細胞死を抑制しなかった。このことより、LAAOによる細胞死には細胞内での二価鉄イオンが関与することが示唆された。そこで細胞内の二価鉄イオンを、二価鉄イオン特異的蛍光プローブであるFerroOrangeを用いてイメージングした。その結果、LAAO処理により細胞内での蛍光が強くなったことから、細胞内で二価鉄イオンが遊離してくることが示唆された。今後、二価鉄イオンの遊離場所を特定して、さらに細胞死誘導経路を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、3カ年計画で大きく3つの解析を進める予定である。そのうちの「in vitroでの細胞死誘導機構の解析」および「ヘビ毒による細胞死を抑制する化合物の探索」の2つについては、いくつかの候補化合物を見出して現在実験を進めており、概ね順調に進んでいる。一方、研究計画では「毒性を軽減する化合物のin vivoでの効果の評価」をする予定であるが、in vivoでの評価をするまでのin vitroでの成果がまだ不足しているため、着手できていない。今後、in vitroでの解析を進め目処がたち次第実験計画を立てる予定である
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今後の研究の推進方策 |
初年度の結果よりLAAOによる細胞死はフェロトーシスであることが明らかとなり、今年度、より詳細に解析を進めた。その結果、DFOよりPheの方がより細胞死を有意に抑制することから、既知の典型的なフェロトーシスではない経路がLAAOによる細胞死誘導に関与するのではないかと予想している。細胞内での鉄イオンの遊離が関与していることが示されており、細胞内分子の分解による鉄の遊離(フェリチノファジー)が機能していることが示唆されている。今後、この経路の関与についても分子生物学的なアプローチで解析を行い、今年度中に経路の解明を目指す。 また、化合物ライブラリーを用いたLAAO阻害剤のスクリーニングについても、さらに多くの化合物を用いて、より効果のある化合物の探索を続ける。またLAAO単独のみならず、ヘビ毒そのものに対して細胞障害性を抑制する化合物のスクリーニングも行い、in vivo解析に用いる候補化合物数を増やすことで、将来的に創薬につながる候補化合物を多く得ることができるよう計画を進める。
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