研究課題/領域番号 |
22K10515
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
香川 聡子 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40188313)
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研究分担者 |
神野 透人 名城大学, 薬学部, 教授 (10179096)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 環境化学物質 / ヒトTRPA1 / in vitro / in silico |
研究開始時の研究の概要 |
侵害刺激受容体Transient Receptor Potential(TRP)A1は、多様な外因性の刺激物質によって活性化されて急性疼痛を起こすのみならず、かゆみ、および粘膜刺激等の病態に関与している。本研究は、環境化学物質による“痛み刺激”を予測する手法の開発を目指し、TRPA1チャネルを標的とする化学物質の特徴とその活性化メカニズムを明らかにすることを目的とする。アプローチとして、分子動力学シミュレーションに基づくin silico 計算科学とヒトTRPA1高発現細胞を用いるin vitro 実験科学を融合して解析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、in vitro 実験によるTRPA1活性化の定量的解析結果とドッキングシミュレーションによって得られるドッキングスコアによるin silico 評価結果を合わせて解析することにより、TRPA1に親和性の高い化学物質の特徴と、TRPA1分子の標的部位を抽出することを目的とする。本年度は、欧州連合の化粧品規制でアレルギーを引き起こす可能性のある香料アレルゲンとしてラベル表示が義務付けられている香料成分を対象とした。in vitro評価としてヒトTRPA1を恒常的に発現するFlp-In 293細胞株を用いて、細胞内へのカルシウムイオンの流入を指標にイオンチャネル活性化を定量的に解析した。in silico 評価としては、Protein Data BankよりヒトTRPA1の立体構造モデルをダウンロードし、Molecular Operating Environmentを用いて、構造最適化後にドッキングシミュレーションを行い、ヒトTRPA1と香料成分の分子間で相互作用する部位の探索を行った。in vitro評価結果では、in vitro 評価が可能であった17物質中9物質が濃度依存的にTRPA1を活性化した。in silico 評価の結果、EC50値が最も低かった物質をはじめ4物質が共有結合性アゴニストの結合部位であるCys621を修飾する可能性が示された。また、7物質については非共有結合性アゴニストの結合部位であることが指摘されているAla836、Tyr840、Glu864、Gln940のいずれかあるいは複数の部位と相互作用する可能性が示された。現在、高残香性柔軟仕上げ剤などの使用に起因する「香害」が社会問題となっており、本研究によって得られた情報は、原因化学物質による健康影響のメカニズム解明に資することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に引き続き、家庭用品などに広く使用される香料成分を対象としてin vitroおよびin silico評価によって侵害刺激受容体TRPA1の活性化とそのメカニズムについて検討し、その結果を学会にて発表した。2年目としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、2019年に室内濃度指針値が改定されたフタル酸エステル類等を検討対象とする。 in silico 評価によってフタル酸エステル類によるヒトTRPA1の活性化に関与する候補アミノ酸を特定し、ヒトTRPA1を恒常的に発現するFlp-In 293細胞株並びにアミノ酸変異を導入した細胞を用いるin vitro評価によってTRPA1活性化に重要な役割を果たす部位について検証する。
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