研究課題/領域番号 |
22K10559
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
加茂 憲一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (10404740)
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研究分担者 |
福井 敬祐 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (50760922)
坂本 亘 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (70304029)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | マイクロシミュレーション / 大腸がん / 数理モデル / リスク評価 / 腺腫成長 / 介入効果 |
研究開始時の研究の概要 |
がん対策がもたらす効果の定量的な試算を目的とするマイクロシミュレーション(MS)について、大腸がんに着目し、数理モデルの精緻化と再構築、それらを反映するシステムの実装を行う。具体的には「個体内で複数の腺腫発生と除去」「腺腫の成長依存リスク変動」「前臨床から臨床段階への遷移時間」の3項目に着目し、感度分析や数値実験によりシステム全体の妥当性を検証する。各過程のマクロ化を徹底することにより、様々なリサーチクエスチョンに柔軟に対応できる汎用性の高い形へとMSへと昇華させる。
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研究実績の概要 |
大腸がんマイクロシミュレーション(MS)における数理面の改良について、課題を「①複数の腺腫発生・除去モデル」「②腺腫の成長モデル」「③Sojourn time」と設定しており、本年度は特に②に関する研究を行った。腺腫の成長に関して、通常の成長解析で用いられる手法は、倫理的な観点より観測時点が少ない実態および観測ゼロ点が不明であることを踏まえ、特に観測時点数についてはベイズ的アプローチによる解決を試みた。非線形の成長関数に対して線形近似を行い、全体から推定した事前パラメータを事前分布とする推定法が機能することを数値実験で確認した。一方で、ゼロ点不明問題については、時間に関する平行移動パラメータを導入する解決を試みたが、数値実験を通して推定が不安定となる問題点が明らかになった。この点に関しては、次年度も継続して議論を進める予定である。 実データ解析としては3つの論文から「見逃し症例」の50ケースに対して、性・年齢を変数とした成長パターンの特徴づけを試みた。見逃した時点での腺腫サイズと、その後の成長勾配に有意な関連性が見られた一方で、年齢と成長勾配の関連性は有意でなかった。これらの結果に関しては、サンプル数が不十分という問題、各論文における背景が異なるという問題もあるため、引き続きデータ収集に加え、解析手法の改良も継続する予定である。本解析においては総じて推定の不安定さが依然として大きな問題点となっており、リッジアプローチといったロバスト推定なアプローチも継続して議論する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大腸がんMSの改良について「①複数の腺腫発生・除去モデル」「②腺腫の成長モデル」「③Sojourn time」の3つを設定しており、本年度は特に②に関する研究を行った。昨年度は①に関するテーマを重点的に取り扱い、来年度は③に焦点を当てる予定である。本来は①~③を並列的同時進行で進める計画であったので、その点に関して計画通りではなかった。そのこともあり③テーマに関する見通しが立っておらず、その点に関し「やや遅れている」と判断した。また、GUI等によるシミュレーションシステム構築についても、コロナ禍は収束したとはいえ、ミーティング当日に担当者が発熱するといったタイミングの悪さもあり、対面での作業は予定通りに進まなかった点も「やや遅れている」と判断した。 一方で、他の臓器に関する癌MSモデル研究者との交流を行い、お互いのノウハウを補完し合える体制が整いつつある。この点に関しては、研究計画に無かった内容とはいえ、本研究を進めるに資する内容であった。
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今後の研究の推進方策 |
数理面の改良に関しては未着手の研究テーマである「③Sojourn time」に関する議論を開始する。「①複数の腺腫発生・除去モデル」と「②腺腫の成長モデル」についても同時進行で内容を掘り下げる。①については、腺腫発生について完成しているゼロ過剰ポアソンモデルによる評価に加え、検診による複数腺腫の除去モデルの構築を試みる。腺腫発生モデルを年齢依存の形としてのパラメータ推定が完成すれば、その結果を②のゼロ点が特定できない問題とリンクさせ、包括的な解決を試みる。その後、②における推定が不安定な問題に関しては、リッジアプローチや推定方法の改良を試みる。また、数値実験に基づくモデルの洗練を行い、最終的には実データ解析に結び付ける。 シミュレーションシステムの構築に関しては、上記③テーマについてインプットとアウトプットを明確にした上でのマクロ化を進め、マクロ内で独立した洗練を試みる。 一方で、癌MSに関して、他臓器の研究者との交流が始まった。MS構築ノウハウについて情報交換をし、大腸がんMS構築に役立てる予定である。
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