研究課題/領域番号 |
22K10609
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58040:法医学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
一杉 正仁 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90328352)
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研究分担者 |
槇 徹雄 東京都市大学, 理工学部, 教授 (20465363)
櫻井 俊彰 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (80610047)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 転倒 / 転落 / コンピューターシミュレーションモデル / 頸椎損傷 / 死亡 / 剖検 / コンピュータシミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本検討では、転落時に生じた損傷をもとに、傷害バイオメカニクスの知見を駆使して転落直前の姿勢と転落時の挙動を解明する。背景が明らかな転落死剖検例と転落損傷例を用い、マルチボディモデルを用いたコンピューターシミュレーションを行う。そして、転落前の姿勢に関する様々なパラメーターを選択したうえで、転落時の姿勢と損傷に合致する例を導き出し、転落直前の姿勢と転落挙動を科学的に明らかにする。本研究成果は、①犯罪や事故の判別に役立つ、②転落場所を推定するのに役立つ、③労災事故など、転落予防に有用な対策が講じられる、などの利点があり、社会的貢献度は高いと考える。
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研究実績の概要 |
転倒・転落で生じた損傷と人体挙動との関係を明らかにするために、2010年から2022年に滋賀医科大学で行われた法医剖検例の中から、状況が明らかな転倒27例、転落50例を収集した。転落高さでは3m以上が19例と最も多く、転倒・転落場所ではアスファルト・コンクリートが41例と最も多かった。頸椎あるいは頸髄損傷を合併する例は18例であり、頸髄・頸椎損傷合併群と非合併群で背景を比較した。その結果、頸椎・頸髄損傷合併群では転落例が多く(78%vs 53%)、頭顔部からの接地割合が多かった(89% vs 61%)。次に、転落時の挙動と損傷機序を明らかにすべく、転落時の人体挙動を再現できるコンピューターシミュレーションモデルを構築した。解析にはマルチボディ解析ソフトウェアのMADYMO pedestrian model(ver2020.2)を用いた。高さ3.5mの場所で作業中に人同士が接触して、接触から0.1秒後に転落する状況を設定した。モデルの身長は159㎝、体重は72.9kg、作業場所の足場は鉄、靴底はゴムと設定し、足場と靴の摩擦係数は0.7とした。落下時は第8胸椎に11.12m/s2の加速度を0.1秒間作用させ、落下面はアスファルトとした。この基本モデルにおいて、落下時の姿勢を立位、中腰、しゃがむ状態に、落下方向を前方、側方、後方に、上肢の位置を中間位と前後に±45度、左右に30及び60度の状態に変化できるようにした。そして、頸椎・頸髄損傷を再現すべく、頸椎にかかる圧縮荷重を算出した。予備的検討として姿勢、落下方向及び上肢の位置を変えた36通りの状況において転落シミュレーションを行ったところ、中腰で前方から転落する2状況以外で、頸椎にかかる圧縮荷重が頸椎の破壊閾値である3.3KNを超えていた。本検討では、転落時の頸椎・頸髄損傷を再現できるコンピューターシミュレーションモデルが作成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は転落時に生じた損傷をもとに、傷害バイオメカニクスの知見を駆使して転落直前の姿勢と転落時の挙動を解明することである。まず、剖検例から転倒・転落事例を収集し、転落高さ、転落場所の性状、姿勢、生じた損傷を明らかにした。転倒例を含めたのは高さが0の場合におけるコントロールとするためである。その結果、コンピューターシミュレーションモデルによる解析に必要な基礎的データを収集することができた。さらに、転落では頸椎・頸髄損傷を負う例が多かった。そこで、損傷のパラメーターとして頸椎にかかる圧縮荷重を算出することとした。剖検例の検討から、落下時の挙動には落下直前の姿勢など様々な要素が関与することが分かった。そこで、姿勢、落下方向、上肢の位置などを加味したシミュレーションモデルを構築することができた。したがって、当初の目的を達成すべく順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に構築したシミュレーションモデルを使用して、転落時の状況や姿勢などの条件を変えて頸椎・頸髄損傷が発生する機序をより詳細に検討する。剖検例を用いた検討によると、頸椎・頸髄損傷合併例では、頭顔部から接地する例が多かった。そこで、頭顔部における接触部位を詳細に検討し、どの部位から接触する場合に頸椎・頸髄損傷が発生しやすいか細かく検討する。次に、予防策を検討すべく、ヘルメットの効果について検討する。現在、作業現場等で外傷予防にハーフ型ヘルメットが使用されている。あご紐を正しく着用してヘルメットを使用した際に、どの程度損傷を予防できるかについて検討する。また、シミュレーションによって転落時の挙動が可視化されるため、事故予防の注意喚起に向けて適切な題材となる。したがって、シミュレーション画像を使用した事故予防の啓発活動も行ってきたい。
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