研究課題/領域番号 |
22K10614
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58040:法医学関連
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
池谷 博 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30292874)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 年齢推定 / 皮膚 / 身元不明死体 / 画像解析 / ラマン分光法 / 皮膚の弾性 / 最終糖化産物 |
研究開始時の研究の概要 |
研究者はこれまでに個人識別を行う上で有力な情報である年齢推定材料として皮膚に着目し,ラマン分光法・皮膚画像解析法等による死体の年齢を推定する方法の開発を行い,非常に良い結果を得ることに成功した.本研究では,皮膚の加齢メカニズムをより詳細に解明するために,①皮膚画像とラマン分光測定に加えて,皮膚の最終糖化産物と皮膚の弾性測定を行い,年齢との相関を検討する.また,②顔画像から年齢を推定するアルゴリズムをAIで作成し,推定された年齢と,各種測定値との相関を検討することで,顔貌の加齢に最も影響している因子は何か解明するとともに,各種測定法の中における年齢推定に最適な指標は何かを解明する
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研究実績の概要 |
研究者は,増加している身元不明死体の身元確認のための非常に重要な情報一つである年齢について,その年齢推定材料としてアクセスが容易な皮膚に着目し,ラマン分光法・皮膚画像解析法等による死体の年齢を推定する方法の開発を行ってきており,非常に良い結果を得ることに成功した.本研究では,さらに皮膚の加齢メカニズムをより詳細に解明するために,①皮膚画像とラマン分光測定に加えて,皮膚の最終糖化産物と皮膚の弾性測定を行い,年齢との相関を検討する.また,②CT画像等から年齢を推定するアルゴリズムをAIで作成し,推定された年齢と,各種測定値との相関を検討することで,顔貌の加齢に最も影響している因子は何か解明するとともに,各種測定法の中における年齢推定に最適な指標は何かを解明することを目的としている. これまで皮膚のラマン分光法や画像解析を用いた死体の年齢推定基礎技術の開発に成功し,これらの方法が有望であることを示した。本年度は研究の進展として,死体の発見現場に持ち運び可能な,ポータブルラマンスペクトロメーターを用いて,この方法が,実際に死体の発見現場で利用できる方法となりうるか検討し,報告した. また,200例以上の皮膚の最終糖化産物(AGE)や皮膚の弾性の測定を終え,これらが年齢とどのように相関するかを検討し,現在結果をまとめているところである.本年度は学会や論文としてこれらの成果を発表する予定であり,これにより,皮膚の加齢メカニズムの詳細な解明を目指している. また、AI技術を用いてCT画像から年齢を推定するアルゴリズムを開発し,これを用いて顔貌の加齢に影響を与える因子と最も適切な年齢推定指標を特定する試みを行っている。この研究は、身元不明の遺体が増加する中で,より正確で迅速な年齢推定方法の必要性に応えるものである.解析画像に撮影条件が大きく影響するため,現在撮影条件を詳細に検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果の公表としては,遺体の皮膚表面から直接ラマンスペクトルを測定する実験を行い,携帯型ラマンスペクトロメーターを使用した場合の年齢推定の可能性を探った。この方法は現場で直接皮膚表面から死体の年齢を推定するのに使用できると考えられ、研究結果は国際的な学術雑誌にも掲載された(Estimation of cadaveric age in crime scenes using Raman spectroscopy. Matsunari R, Kondou H, Ishikawa N, Miyamori D, Ikegaya H. J Forensic Leg Med. 2024 Feb;102:102642. doi: 10.1016/j.jflm.2024.102642. Epub 2024 Jan 9.).これらをどのように捜査に具体的に役立てるかをメーカーと現在検討しているところである.また,皮膚の最終糖化産物と皮膚の弾性について,データの採取が終わり,現在学会発表や論文報告すべく,結果をまとめているところである.さらにゲノムプロファイリング法を活用し,全ゲノムのメチル化パターンを基にした年齢推定法の開発をも進めている.これらは今後の学会発表や学術誌への投稿を予定しており、新たな年齢推定技術の確立に寄与する可能性がある. この研究の進展は、法医学における年齢推定技術の向上だけでなく,死体の発見現場において,特別な知識のないものによっても測定・推定することが可能となることから,身元不明者の迅速な特定にも大きく寄与することが期待されている。これらの複数の方法と最新技術を駆使して,より精確で実用的な年齢推定手法を開発することを目指している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,具体的に死体発見現場で年齢推定法としてポータブルラマンスペクトロメーターが使用できることが証明されたので,現在化学物質の推定用にインストールされているポータブルラマンスぺクトロメーターのプログラムに,年齢推定用のものを組み入れる方策をメーカーと共に検討している. また,皮膚の最終糖化産物と皮膚の弾性のデータは採取が終わり,現在結果を解析しているところであるが,最終糖化産物については,各個体が持っている糖尿病などの疾病を背景としてばらつきが大きいものの,皮膚の弾性についてはかなり高い相関を認めており,加齢に伴い皮膚が自体が硬くなってくることが分かってきた.これらは以前の成果である加齢に伴うコラーゲン線維の断片化と加齢に伴う脂質の結晶化を裏付けるものと考えている.本年度に学会発表や論文報告を予定している.この研究により,皮膚の加齢変化のメカニズムの一端が詳細に解明できたものと考えている. さらに,以前の補助金で得られたゲノムプロファイリング法の知見を活用し,特定の遺伝子だけではなく,全ゲノムのメチル化パターンを基にした年齢推定法の開発を進めています.まだ解析症例数は少ないものの,非常に高い相関が認められており,特定部位だけでなく,全ゲノムのメチル化が加齢に関係していることも分かりつつある.これらについても併せて最終年度に,学会や論文として成果を公表する予定である.
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