研究課題/領域番号 |
22K10617
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58040:法医学関連
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山本 寛記 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30781265)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 覚醒剤心筋症 / 法医学 / 法中毒学 / 覚醒剤 / 心血管疾患 / メタンフェタミン / 法中毒 |
研究開始時の研究の概要 |
覚醒剤の乱用が引き起こす心血管疾患については未だに不明な点が多い.近年,心血管疾患における無菌性炎症の関与が示唆されており,ケモカインが炎症性疾患など様々な疾患の病態生理に密接に関係していることが明らかとなっている.本研究では,ケモカインの中でもマクロファージ関連ケモカインであるCCL3とそのレセプターであるCCR1及びCCR5に着目し,マウスを用いた実験により覚醒剤心筋症の病態におけるケモカインの発現動態,マクロファージの動態,炎症性サイトカインの発現動態との関連性を解析し,それらの動態から覚醒剤心筋症の詳細メカニズムを解明し,最終的に法医診断への応用を目指す
|
研究実績の概要 |
覚醒剤心筋症マウスモデルの作成には,8週齢のC57BL/6マウスを使用した.投与は1日3回(10時,13時,16時),5日間連続で投与した後,2日間あけるサイクルを1週として,6週間投与した.投与するメタンフェタミン(METH)は,1回の投与当たり第1週は5㎎/kg,第2週は10mg/kg,3週から6週までは15㎎/kgで投与した.投与終了後心臓エコーによる左室収縮率の評価を行ったところ,投与終了後のマウスで投与前と比較して約20%の有意な低下が見られ,さらに体重当たりの心臓重量についてはコントロール群と比較して10%の有意な増加が見られた.血清中ANP及びBNPレベルについても覚醒剤投与群でコントロール群と比較して有意に上昇した.さらに,心臓組織で切片を作成し,病理組織学的解析を行ったところ,HE染色では形態学的に差は見られなかったが,MT染色では覚醒剤投与群で血管周囲の線維化が顕著に見られた.さらに心筋での遺伝子発現についても,病理組織学的所見と一致して,コラーゲンや心筋の線維化に関与するTGF-b,PDGFの発現の有意な上昇が見られた.心筋症等では白血球浸潤が重要であることが知られてるため,白血球浸潤の検討を行った結果,コントロール群と比較して覚醒剤投与群の心臓で,マクロファージの有意な増加が確認されたが,好中球,T細胞については,有意差は見られなかった.心臓マクロファージは,損傷後のリモデリングにおいて重要な役割を果たすことが知られている.特にCX3CL1‐CX3CR1軸は,CX3CR1を発現する白血球のサブセットの動員と血管外遊出を仲介し、心血管疾患の炎症において極めて重要な役割を果たすことが考えられる.そこで覚醒剤心筋症の心臓免疫応答におけるCX3CR1の動態を解析するため,ケモカインレセプターCX3CR1遺伝子欠損マウスを用いてマウスモデルを作成した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度も引き続き,野生型マウスによる覚醒剤心筋症モデルの作成を行った.心機能の評価は心臓エコーによる左室収縮率や,血清ANPおよびBNPにより評価した.さらに病理組織学的解析や遺伝子発現の解析を行い,コントロールと比較して覚醒剤投与群マウスで心筋線維化が顕著であることを確認した.さらに免疫組織学的解析から白血球の浸潤についての検討も行い,覚醒剤投与マウスの心臓で,マクロファージの有意な増加を確認した.そこでマクロファージ関連ケモカインに注目し,損傷後のリモデリングにおいて重要な役割を果たすことが知られているCX3CL1‐CX3CR1軸のケモカインレセプターCX3CR1遺伝子欠損マウスを用いてマウスモデルを作成した. 投与は1日3回(10時,13時,16時),5日間連続で投与した後,2日間あけるサイクルを1週として6週間投与した.投与するMETHは,1回の投与当たり第1週は5㎎/kg,第2週は10mg/kg,3週から6週までは15㎎/kgで投与した.6週投与後,心臓エコーによる左室収縮率の確認を行ったところ,野生型,遺伝子欠損型とも収縮率は低下していたが,両群に差は見られなかった.そこで,引き続き15週まで投与を継続したところ,野生型と比較して遺伝子欠損型で左室収縮率の低下は有意に抑制された. これらは令和5年度に予定していたことであり,本研究はおおむね順調に進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は引き続き,ケモカインレセプターCX3CR1遺伝子欠損マウスを用いて,覚醒剤心筋症モデルを作成し,心肥大や線維化など心機能の変化を,生化学的解析,病理組織学・免疫組織学的解析およびRT-PCRによる遺伝子発現により解析し,野生型との比較を行う.さらに実際の法医解剖において覚醒剤やその他薬物中毒と判断された事例において,血液や各臓器を採取し,各CX3CR1の動態をたんぱく質及び遺伝子レベルで検索する.それらの検索結果は,動物実験モデルを用いた結果と比較検討し,CX3CR1発現動態が覚醒剤心筋症の診断に応用可能か否かについて検討する.
|