研究課題/領域番号 |
22K10674
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
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研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
古堅 裕章 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 助教 (30636105)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 解剖生理学 / ゲーミフィケーション / インストラクショナルデザイン / 看護教育 / 謎解き / 物語 / XR |
研究開始時の研究の概要 |
多くの看護学生が解剖生理学を苦手としてきたという実情もあり、第5次指定規則改正にて「看護学の観点からの系統立てた人体の理解」と「アクティブラーニングなどによる主体的学習の促進」が追記された。しかしながら、苦手な物事を主体的に学べるアクティブラーニングの手法は明らかにされていない。 本研究では、教育設計学とゲーミフィケーションを用い、「謎解き」の物語に「看護師の臨床判断」を組み込み、楽しみながら臨床判断能力の基盤となる解剖生理学の活用方法を体感・実践可能な「謎解き解剖生理学教材」を開発・実践し、学習効果を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度以前から本研究の一部は進行しており「ソーシャルディスタンスを確保した人体解剖模型学習用体験型脱出ゲームの開発と評価」において、関係性の不満足感が内発的動機づけを損なう可能性が示唆された。コロナ渦でも関係性を維持した演習を行うために、対面で会話ができない制約をゲームのルールとして利用した演習を実践した。ルールの順守には罰則規定が必要であったが、ポイント・抽選(不確定さ)などのゲーム要素の併用により、罰則を回避できるシステムにすることで、参加者の言動を教員が注意することなく、望ましい行動をとることができるという結果を得た。 「心音聴診デジタルシミュレータを用いた演習実践と評価」では、対面分散演習(接触・三密を避けるため、学生同士での聴診ができない、シミュレータでの聴診時間の減少)や遠隔演習(学生同士の聴診もシミュレータでの聴診もできない)状況においても教育の質を保ち、演習目的を達成するための有効な手段の一つであるという結果を得た。また、再チャレンジ可能な事後テストの導入により、完全習得学習に近づけることが可能となった。 これらの知見をもとに、看護師養成促進事業の一つである、高校生の一日看護学生体験においては、大学で学ぶ専門知識は難しさを感じないように「謎解き」で出題し、「物語」をノベルゲームを用いて提示することで、主人公として楽しく「心臓聴診」に取り組めるように設計した。また、体験だけで終わるのではなく、自分が目指す看護師のような行動ができるようになったと実感する事が看護職を志す動機付けにおいて重要であると考え、「家族の心臓弁膜症を早期発見する為の行動をとること」をゲームのクリア条件に設定し開発を行った。体験後のアンケートから、本教材を用いた看護学生体験が、楽しみながら看護師への興味関心を高め、体験した学習内容に基づいて実際に行動する意思をもたらす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠隔講義に対応するためには、解剖図の3Dモデルが必要となるが、作成コストが高額であるため、対面用の教材作成および実施・評価後の、3~4年目に導入予定にしていた。昨今のAI(人工知能)やVR(仮想現実)を含むXR(クロスリアリティー)関連の技術の進歩に伴い3Dモデルへの参入障壁が下がってきたこと。および、平面の解剖図と3Dモデルを別々に作成した場合、教材の統一感が失われることでUI/UX(ユーザー体験)が低下し、学習者の没入感を阻害する要因となることも考慮して、計画を前倒にして3Dモデルを用いた遠隔講義にも対応可能な教材の開発を現在行っている。 当初の予定では、1年目に教材制作と予備実験まで終えている予定にしており、この点では研究はやや遅れているが、遅れの原因は3Dモデル作成の前倒しによる作業の増加であるため、4年間の研究計画全体としての進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目となる2023年度は、夏頃を目途に3Dモデルを導入した解剖模型学習教材の開発および予備実験を終了し、後半は本実験へと進む予定にしている。3Dモデルの導入を前倒しにしたことで可能となった、対面における実際の解剖模型を用いた学習と3Dモデルを用いた遠隔での学習の比較研究の実施を予定している。 当初の研究計画においては、「ロバート・ガニエの9教授事象」と「ジョン・ケラーのARCSモデル」の2つのID理論を基軸として学習教材を開発するとしていたが、1年目の研究結果より「物語」の重要性が明らかになったことから「パリシュのID美学の第一原理」を追加。また「再チャレンジ可能な事後テスト」を用いた結果を受け、ゲームの特性をより生かすことのできる「完全習得学習」を目指すために「パリシュの学校学習の時間モデル」のID理論も追加し、4つのID理論を新たな基軸として、より学習効果の高い、教育のゲーミフィケーション教材設計を行っていく。 昨年度、看護師養成促進事業の一つである、高校生に対する一日看護学生体験で「物語と謎解きを用いた心音聴診学習」の実践を行い一定の成果が得られてたことから、本年度は続編となる、「肺音聴診学習用ゲーム教材」の作成を行い、さらに楽しみながら看護職への興味関心を高めてもらい、看護師等の人材確保の促進に貢献していきたいと考えている。
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