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腎移植レシピエントの精神面を支えるアプリケーション・ソフトウェア開発と効果の検証

研究課題

研究課題/領域番号 22K10809
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分58060:臨床看護学関連
研究機関三重大学

研究代表者

田村 裕子  三重大学, 医学系研究科, 助教 (30746722)

研究分担者 西川 晃平  三重大学, 医学系研究科, 准教授 (90444439)
岡田 元宏  三重大学, 医学系研究科, 教授 (10281916)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワードアプリケーション・ソフトウェア(app) / アドヒアランス / 精神状態 / 腎臓移植 / 腎移植レシピエント / アプリケーション・ソフトウェア
研究開始時の研究の概要

移植腎廃絶の大きな原因の一つとしてうつ病が注目されている。うつ病に伴うアドヒアランス不良が移植腎廃絶や生命予後に影響するため、移植後うつ病の予防や早期発見および精神的介入は極めて重要である。
近年、海外ではアプリケーション・ソフトウェア(以下app)を用いた介入の有効性が多数報告されているが、腎移植領域の精神面の支援が可能なものは存在しない。
そこで、本研究を通じて、1)腎移植レシピエントの精神面を支えアドヒアランスを高めるappを開発すること、2)appの有効性を検証し、あらたな精神的介入方法を見いだすことを課題とし、腎移植レシピエントの移植臓器の長期生着および良好な健康状態の維持を実現したい。

研究実績の概要

本研究では、腎移植レシピエント(Kidney Transplant Recipients:以下, KTR)の精神面を支えアドヒアランスを高めるアプリケーション・ソフトウェア(以下app)を開発・運用することを目的としている。
今年度も昨年度同様に、三重大学医学部附属病院を研究フィールドとし、同施設に通院する同意を得られたKTRにappを導入し、よりKTRの実情に合ったappの活用を開発・運用するための検討を重ねた。さらに、活用方法として、新型コロナウィルス感染症下における活用方法についても検討し、今後起こりうると考えられる災害や、未曾有の事態にも有用な活用方法について分析し、KTRのさらなるアドヒアランス向上を目指した支援内容について検討した。今年度は、お知らせ既読率や服薬記録入力、健康記録入力状況から、KTRのアドヒアランス向上に向けての示唆を得ることを目的に研究を行った。
方法として対象は当院で腎移植後フォローを受けており、2022年5月~2023年3月にアプリを導入した139名のうち研究への同意が得られた100名であった。アプリ使用の指標として、医療者からのお知らせの既読率を使用した。アプリの導入時期(移植後期間(ヶ月)とお知らせの既読率をSpearmanの順位相関係数を求めて検討した。
結果、移植からアプリ導入までの期間が早いKTRの方が有意にお知らせ既読率は高かった(P=0.02、R=-0.309)。
しかし、appを活用した患者支援は有効であるものの、継続率の低下が問題となっている。アプリを用いた自己管理を確立し、継続させるためには、個人の自己管理方法を尊重しつつ、アプリの利点を伝えた上で移植後早期のモチベーションが高い時期に導入することが肝要であり、アプリの早期導入が、アドヒアランスの維持に寄与する可能性があると考えられ、今後も継続した分析が必要であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度も昨年度同様にappを導入しているKTRの分析を行うとともに、新型コロナウィルス感染症下における在宅での患者管理の手段としてもappを活用しており、今回コロナ感染時のアプリ使用の有用性について調査を行った。
対象は2022年8月から2023年1月までに腎移植後にコロナ感染を来し、在宅療養を行った27名であり、コロナ感染後、気分・症状・体温・血圧等の情報をアプリに最低1週間は入力してもらい、情報共有機能を用いて患者の状態を把握した。
その結果、情報の入力を行った患者は53.6%であり、項目別では体温が51.9%、症状が48.1%であった。また入力日数の中央値は8日であった。
アプリ使用について、1.健康管理に役立ったとしたのが71.4%、2.医療者とのつながりを感じたのが76.2%、3.こころの支えや不安の解消になったとしたのが71.4%、4.追加してほしい項目としては酸素飽和度等が挙げられた、5.希望するコロナ感染に関する情報としては移植患者の感染状況等が多かった。自由記載では3.に対し「私の状態を知っていただけたと思えた」と好意的な意見の一方で、2.に対し「入力しても本当に見てチェックされているのか分からない」等の意見もあった。
以上より患者管理画面のアプリに入力された情報から自宅療養の様子を連続的に把握できていたことで安全な自宅療養に有用であると考えられた。患者も移植後にコロナに罹患することは大きな不安を伴うため、多くは医療者とつながることができるアプリに安心感を抱いていたと考えられる。しかし、不満を持つ患者も一部存在することも明らかとなったため、医療者は患者にフィードバックを行い、安心感が得られるような関わりが必要であるとともに、身体状態を入力してもらうことは症状の重症化を防ぐ手がかりとなるため重要であることを伝え、患者が理解した上でアプリを使用してもらう必要がある。

今後の研究の推進方策

今後も、同施設に通院する同意を得られたKTR、医療者を対象に、KTRに望まれる現実的で効果的な精神的支援を有するappの構築および前向き臨床研究による効果の検証を継続する。
今年度の分析からから、appの機能であるお知らせ機能は非常に良好な評価を得ており、KTRが医療スタッフを近くに感じ、一体感が得られる傾向にあることが判明した。この結果から、我々は患者の特性に合わせた個別化メッセージの送信を行うことによりKTRの精神面が安定することによりアドヒアランスの向上も期待できると考えており、「カカリンク」の個別通知機能を活用したお知らせ機能の試みを開始している。
具体的なアプリ継続率を向上・維持させるための試みとしては、アプリ起動回数を増やす、アプリに愛着を持ってもらう、医療者とのつながりを感じてもらう、自分の健康状態に関心を持ってもらう、医療者の負担は増やさないことが重要であり、そのためにもメッセージ送信の半自動の試みを行っている。
具体的な内容としては、KTR全体には時季ごと(世界腎臓デー・年末年始・防災の日など)のお知らせ、個人に対しては移植時期に合わせて(移植後1カ月、半年、1年など)、誕生日などの記念日、体重増加気味・高血圧など特定の患者へのお知らせ、服薬入力・健康管理入力などを継続できているKTRに対してはフィードバックを行うことによりKTRのさらなるアドヒアランス向上に寄与する予定である。さらにこれらを繰り返し行い、精神面を支える機能を追加したappをリリースする予定である。
改良版のappの評価については介入前、介入後の受診時にappの効果を検証するための調査を行う。調査項目は、appの利用状況・入力情報、信頼性・妥当性が確認された各評価尺度等を使用する予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] アプリを利用したKTR支援の有用性2024

    • 著者名/発表者名
      西川晃平、西川武友、加藤桃子、東真一郎、佐々木豪、舛井 覚、井上貴博 田村裕子 渡部小央里、浦和愛子 富家 淳
    • 学会等名
      第57回日本臨床腎移植学会 2024年2月15日
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アプリを活用した新型コロナウイルス感染症における患者管理の有用性と課題2023

    • 著者名/発表者名
      田村 裕子, 渡部 小央里, 浦和 愛子, 佐々木 典子, 坂本 竜太, 富家 淳, 西川 晃平
    • 学会等名
      第38回腎移植・血管外科研究会 2023年5月20日
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アプリによるアドヒアランス向上に向けての支援の検討2023

    • 著者名/発表者名
      田村 裕子, 渡部 小央里, 浦和 愛子, 佐々木 典子, 坂本 竜太, 富家 淳, 西川 晃平
    • 学会等名
      第59回日本移植学会総会 2023年9月23日
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アプリによる腎移植後レシピエント支援の検討2023

    • 著者名/発表者名
      田村 裕子, 渡部 小央里, 浦和 愛子, 佐々木 典子, 服部 文菜, 坂本 竜太, 富家 淳, 西川 晃平
    • 学会等名
      第56回日本臨床腎移植学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] アプリの活用によりアドヒアランスが向上した腎移植レシピエントの1例2022

    • 著者名/発表者名
      田村裕子, 西川晃平, 浦和愛子, 渡部小央里, 佐々木典子, 服部文菜, 坂本竜太, 富家淳, 片岡三佳
    • 学会等名
      第37回腎移植・血管外科研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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