研究課題/領域番号 |
22K11192
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連
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研究機関 | 鈴鹿大学 |
研究代表者 |
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
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研究分担者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
翠川 裕 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (10209819)
中村 哲 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (40207874)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アルツハイマー / ラオス / 国際保健 / 生活環境 / 途上国 / 生活習慣病 |
研究開始時の研究の概要 |
WHOは、低/低中所得国におけるアルツハイマー病(AD)を含む認知症患者が増大すると警告している。途上国ラオスでの過去20年以上に及ぶ我々の調査では、病院統計上でAD患者は現れていないが、肥満と糖尿病は10年前に比べ有意に増加し、ADリスク遺伝子(APOEe4)が高い少数民族の存在を明らかにした。将来ラオスでもADが増加することが危惧され、食・環境等の複合因子によるリスク要因の調査は重要である。本研究では特に高齢者の食と環境因子を中心に、AD 発症を抑制する伝統的食品の検討、リスク遺伝子プロモーターDNAメチル化解析を行い、ラオスにおけるAD発症リスク要因の解明と食餌性予防因子の探索をめざす。
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研究実績の概要 |
世界的に高齢化と共に認知症、特にアルツハイマー病(AD)の増加が深刻な社会問題となっている。 WHOでは認知症患者が2050年には1億3900万人になると予測しており、特にアジア太平洋地域の低および低中所得国での患者が増大すると考えられている。これまでの我々の研究調査により、ラオスではマラリア、サルモネラなどの感染症がこの10年で減少し、肥満、糖尿病、高血圧等の生活習慣病の増加が明らかになった。これら生活習慣病はAD発症のリスク要因であることから、我々はラオス人のAD発症の危険因子であるAPOEe4遺伝子型頻度を解析し世界で初めて報告した。また高齢者を対象に健康診断、食事調査、認知症スケール等を実施し、過去の調査と比較検討を行った結果、BMI25以上、高血圧、糖尿病が疑われる者、体重、血糖値およびHbA1cに有意な増加が認められた。また、認知症スケールが20点以下の認知症が疑われる者は、10年前と比べ約20%増加した。調査から5年以上経過した昨年度、被験者の約3割が死亡しており、その死因の多くは糖尿病等の生活習慣病であった。現地医師によると、ラオスの医療体制が不十分であることから、糖尿病から高血圧を併発し、透析を受けられずに腎不全となって死亡する場合が多いと言う。また、共同研究機関のマホソート病院の疾病統計資料のトップ5では糖尿病が2位になり、調査初期から懸念していた生活習慣病の蔓延を確認することになった。本年度は、2010年に健康調査したアタプー県の少数民族の生活状況を視察した。当時まん延していたマラリアが投薬実施により激減し、村人の生活も向上していた。また、首都圏近郊で実施した高齢者の生活習慣病に関わる遺伝子解析を行い、成人全体でのリスクと比較したところ、肥満のリスク遺伝子FTOおよび糖尿病のリスク遺伝子TCF7L2の遺伝子型の頻度に関して、成人全体と有意差はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長年のラオス調査実績により当該国の研究機関および調査対象の村人との協力体制が確立されていることから、おおむね目標どおりの成果が得られている。本年度は3年間コロナで渡航できない期間に洪水の被害が発生したアタプー県の被災地と2010年の調査以来渡航していないサンサイ地区少数民族のマラリア感染状況を確認するために調査に入った。環境面では、10年間でパクセからアタプーまでの道路整備が行われていたが、森林伐採と焼き畑農の実施状況は変わらずであった。また、地球温暖化の影響はラオスでも起こっており、例年になく高温で、雨季にもかかわらず降水量が少なく河川の水量が低かった。マラリア患者についてサンサイ病院での聞き取り調査では、クロロキンやアルテミシン投与が十分に行われている結果、マラリア患者は激減し、当月は2名の患者のみであったが、一方で、デング熱が50件であった。2010年に健康調査を行ったパクペ村では、当時マラリアでほぼ村が消滅しかかっていたが、高床式の家屋が減り、新しいタイプの気密性の高い洋式住居が増えており、住民も村に戻っていた。健康調査は実施しなかったが、住民の様相は相変わらずやせ型が多く、首都圏農村の住民とは、体格面での相違が見られた。遺伝子解析については、高齢者の生活習慣病(肥満と糖尿病)のリスク遺伝子FTOとTCF7L2の遺伝子解析を行った。肥満のリスク遺伝子FTOに関して、遺伝子型はC/Cは62.9%、C/Aは31.5%、A/Aは5.6%で、成人全体のC/C 49%、C/A 46%、A/A 5%と有意差はなかった。また、糖尿病のリスク遺伝子TCF7L2に関して、遺伝子型はC/Cは95%、C/Tは4.8%、T/Tは0%で、成人全体のC/C 94%、C/T 6%、T/T 0%と有意差はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度が研究機関の最終年であることから、高齢者の健康調査、アルツハイマー病および生活習慣病(肥満と糖尿病)のリスク遺伝子解析、食事調査データ、認知スケール値等との関連性の解析を行い、不足のデータがあれば追加の調査を実施する。最終的にこれらのデータをまとめた論文の投稿、書籍の執筆および学会発表を計画している。
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