研究課題
基盤研究(C)
オステオサルコペニアが本邦で急増する高齢心不全患者の健康寿命の短縮をもたらし得る疾患概念として注目されている.申請者らの最近の研究では,入院中の心不全患者のリスク層別化にメタボロミクスによる血漿アミノ酸プロファイリングが有用であることがわかった.オステオサルコペニアの治療が奏功する症例の特徴が明らかになれば,治療の早期化や個別化,リスクの層別化に有用である.本研究では,メタボロミクスによってオステオサルコペニアを合併する高齢心不全に特徴的な血漿中のアミノ酸等の代謝物をプロファイリングし,オステオサルコペニアの診断,治療効果や臨床転帰の予測に有用なバイオマーカーを探索・同定する.
研究初年度では血漿アミノ酸代謝物のメタボローム解析を行い、サルコペニア(SP)合併心不全に特徴的なアミノ酸代謝物の特定を試みた。心不全374例を対象に心不全が代償化された後にAWGS2019の基準に準じてサルコ ペニア(SP)を診断し、WHOの基準に従って骨粗鬆症(OP)を診断した。その後、SPおよびOPの有無に応じて全対象者をOSP合併例、SP単独併存例、OP単独併存例、心不全単独例の4群に分類した。一方、OSP併存例における血漿アミノ酸プロファイリングを試みるために、MetaboAnalyst 5.0に標準搭載されているOrthogonal最小二乗判別分析(OPLS-DA)を用いたメタボローム解析を行った。(1) OSP合併例と心不全単独例との比較、(2) OSP合併例とOP単独併存例との比較、(3) OSP合併例とSP単独併存例との比較を行い、選択された変数を含めた多変量ロジスティック回帰分析を実施し、OSP発生に関連するアミノ酸としてシトルリン、3-メチルヒスチジンが、また、OSP減少に関連するアミノ酸としてトリプトファン、メチオニン、ロイシン、バリンの計6種を同定した。研究2年目では、これらのアミノ酸代謝物の予後予測能を検討するために前向き登録研究を実施している。一方で、運動誘発性ミオカイン様分子であるβ-アミノイソ酪酸(BAIBA)に着目し、脂肪量を含む体組成との関連性を検討した。血漿中のBAIBA濃度と脂肪量との逆相関を見いだし、BAIBAは過剰な脂肪蓄積の治療標的となり得ることを英語論文で報告した。
3: やや遅れている
前向き登録研究の実施期間中にアミノ酸分析の方法が変更となり、登録のやり直しを迫られてしまった。その遅れを研究2年目で解消できなかったため。一方で、既存のデータを用いた横断解析については順調に進められている。
引き続き、選択された血漿アミノ酸についてOSPの予測能を検討する。また、運動機能との関係についても検討し、論文化を急ぐ。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 9件、 招待講演 1件)
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