研究課題/領域番号 |
22K11291
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
渡邊 塁 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 客員研究員 (20793326)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 共感 / 他者理解 / fMRI / 模倣 / 片麻痺 |
研究開始時の研究の概要 |
健常者が身体障害者に心理的に共感すること、つまり彼らの困難性を自分のことの様に感じることが、適切な医療の提供、多様な人々の共生に必要とされる。申請者はこれまで、身体障害者への心理的共感には共感関連の脳領域に加え、模倣関連領域の関与を解明したことから、「障害者の動きを模倣すると、彼らへの心理的共感が向上する」と仮説立てた。そこで本研究は、障害者への共感を向上させる模倣手法を開発し、それが既存の心情推測法よりも共感関連の脳活動を調整し、彼らへの心理的共感が向上・持続するか検討する。脳機能の測定・解析は、機能的核磁気共鳴装置(fMRI)、最新の機械学習解析を用いる。
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研究実績の概要 |
本年度は、本研究課題に関わる実験1つ、身体に障害をもつ片麻痺患者の日常生活場を観察した際に、その困難性への共感ができるか、その神経基盤を検討する実験のデータ測定が完了した。またそのデータ解析も本体部分は完了した。本実験では、片麻痺患者が他者とインタラクションする条件(麻痺手と健常他者の握手:他者条件)と物体とインタラクションする条件(麻痺手でペットボトルの把持:物体条件)、またそれぞれを非麻痺手で実施するという条件の4条件を設定した。各条件は動画として実験参加者にMRI内で提示された。参加者は動画を観察し、その後その動画内において、片麻痺者がどれくらい困難性を感じているか、7件法で回答した。 結果、麻痺・非麻痺条件に関わらず、他者条件は物体条件に比べ、主観的にはその困難性が低く評価された。また麻痺条件は、他者・物体条件に関わらず、その困難性が高く評価された。脳活動では、麻痺条件において、他者と物体条件を識別するためにはヒトの情動に関わる脳領域や、他者の気持ちを推察する際に関わる脳領域が強く関わることが示された。麻痺・非麻痺条件に関わらず、他者・物体条件を識別する際には、ミラーニューロンシステムなど他者の動作理解に関わるシステムが関わることが明らかになった。 以上のことから、現時点では障害者の困難性への共感には、その動作場面の特徴によって、脳応答が変化し、それに伴い共感の度合いも変化することが示された。今後引き続き、脳活動の解析をより高度な解析手法を用いて進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においてのメイン課題である、障害を持つ脳卒中片麻痺患者への共感を向上させるための手段として、模倣動作が効果的であることは既に昨年度までに示された。その成果は既に国際学術雑誌に掲載されている。本年度はその内容をより発展させるべく、動作場面をより日常生活に即した具体的な場面を設定した。それにより、ヒトが日常生活で障害者と接した時に、その困難性をどう理解しているのか、その神経基盤を検討することが出来た。本実験結果は今後まだ解析を進める必要があるが、本年度中には論文化を予定している。その後、改めて日常的な生活動作場面においても、模倣が効果的に働くのかを検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主となる実験課題である、自身と異なる特徴を持った他者に対しての共感応答を、模倣動作によって向上させる取り組みは、その効果が明らかになってきた。現在は、その対象動作をより我々の日常動作場面を設定し、その状況に対しての共感応答を主観的側面、脳活動の側面から検討している。今後、その結果を踏まえて、改めて模倣動作の効果を検証していく。また合わせて、より一層の研究の発展を目指し、共感の神経基盤の検証をMRI装置だけではなく、他のイメージング技術の利用も検討していく。それらを合わせることで、より頑強な信頼性の高い研究結果が得られると考える。 また現時点までのデータが蓄積されているので、今年度、再来年度中には新たな複数の研究論文を国際学術雑誌に公表することを目指す。
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