研究課題/領域番号 |
22K11293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
下重 里江 国際医療福祉大学, 基礎医学研究センター, 講師 (10433624)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 快情動 / 報酬 / 超音波発声 / 触刺激 / 脳波 / 行動 / 徒手療法 / リハビリテーション / 意欲 |
研究開始時の研究の概要 |
リハビリでは、患者のリハビリに対する意欲の程度が治療成績を左右する。意欲の発現には快情動中枢の中脳辺縁系ドーパミン神経系が関わる。申請者は、触刺激がドーパミン神経系を介して快情動を誘発することを、ラットを用いた実験で明らかにした。この結果は、徒手療法が患者の意欲向上に貢献する可能性を示唆する。しかし、触刺激が快情動を起こす脳内神経メカニズムは不明である。本研究の目的は、触刺激が快情動中枢を興奮させる入力経路と中脳辺縁系ドーパミン神経系から快情動の行動表出である超音波発声を起こす出力経路を解明することである。そのために行動生理学的手法と電気生理学的手法を併用し、触刺激時の脳内神経活動を記録する。
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研究実績の概要 |
リハビリ治療では、触刺激を用いた徒手療法が行われる。対象者本人のリハビリに対する意欲の程度は治療成績を左右する。触刺激には種々の有益な生理的効果があり、意欲を含む快情動を誘発することが知られている。しかし、触刺激が快情動を起こす脳内メカニズムの詳細は明らかではない。本研究では、触刺激が快情動を誘発する脳内神経経路に着目し、リハビリ治療効果の科学的根拠の構築を目指す。 ラットは、快情動状態になると周波数特異的な超音波を発声する。申請者は、徒手による触刺激によって、快情動中枢の主要経路である中脳辺縁系ドーパミン神経系を介して快情動指標の超音波発声がみられることを明らかにした。さらに、この触刺激は、顕著な接近行動を誘発することから、強い報酬刺激であることを明らかにした。動物の快情動を客観的に評価することは困難であるとされてきたが、触刺激時の快情動超音波発声を解析する方法を用いることで、快情動を定量的に評価できる動物モデルを作成することに成功した。本研究の目的は、この快情動モデルを用い、触刺激が快情動を生起する脳内ネットワークを解明することである。 令和4年度では、快情動状態にある時の脳神経活動は特異的な変化を示すという仮説を立て、触刺激時の脳活動について脳波を用いて解析した。脳波のパワースペクトラル解析を行い、快情動超音波発声がみられるときの脳波の変化を検討し、研究成果の一部を国際誌に投稿した(査読中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、触刺激時の快情動超音波発声の脳内メカニズムの求心路について、後索路を外科的に切断して、超音波発声への影響を検討する予定であった。しかし、ラットへの手術侵襲が大きく、刺激時に手術部位を把持する必要があることと、回復までに長期間を要することより、検討方法を免疫組織化学的手法で活性部位を特定した後に、電気生理学的手法にて該当部位の活動を記録する方法に切り替えることにした。当初の計画を一部変更したことより、実験の進捗にやや遅れが出たが、現在は、疫組織化学的手法の手技を確立し、安定して脳活動が評価できる状況となり、今後本格的にデータを取ることができる段階に入った。
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今後の研究の推進方策 |
触刺激は、局所的な身体的効果のみならず、リラクゼーションやうつ・不安の緩和といった精神的な効果をもたらす。ストレス社会である今日、リハビリテーションの分野にとどまらず、触刺激による快情動生起とその脳内メカニズムを解明する意義は大きいといえる。今後、当初の予定通り、快情動の主要中枢である側坐核のコアとシェルでの触刺激時の神経活動の違い、ならびに中脳辺縁系ドーパミン神経系を興奮させる入力経路と出力経路を電気生理学的手法と行動生理学的手法を併用し、明らかにする予定である。
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