研究課題/領域番号 |
22K11300
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
金澤 佑治 北陸大学, 医療保健学部, 准教授 (60620656)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 老化 / 骨格筋 / コラーゲン / 筋線維タイプ / 基底板 / 肥満 / フレイル / ストレッチング / Collagen IV |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、老化が骨格筋の予備能力を障害するメカニズムを解明することを目的とする。筋障害の回復には、基底板の再構築が重要である。老化は基底板の構築反応を減弱させるため、筋は脆弱化し、回復が障害される。このことがフレイルを深刻化させる一因となる。そこで本研究では老化動物を用いて老化による基底板構築能の低下における分子機序を解明し、新たなフレイル予防戦略の基盤構築を目指す。
|
研究実績の概要 |
当該年度における研究実績の概要は以下の3点である。 ①「骨格筋内コラーゲンにおける筋線維タイプ別の加齢性変化」本実験では雄性C57BL/6Jマウスのヒラメ筋(遅筋)および腓腹筋(速筋)におけるコラーゲン量に対する加齢の影響を経時的に追跡した。その結果、老化は遅筋と速筋の両方でコラーゲンI、III、VIの遺伝子発現と免疫反応性を増加させ、遅筋ではコラーゲンIVの発現を増加させた。しかし、速筋におけるコラーゲンIV遺伝子の発現と免疫反応性は加齢の影響を受けなかった。これらの結果から、加齢に伴うコラーゲン遺伝子の発現や免疫反応性は筋線維タイプとコラーゲンタイプに影響されることが示唆された。 ②「筋小胞体における筋線維タイプ別の加齢性変化」本実験では、若年と老年の雄C57BL/6Jマウスのヒラメ筋と腓腹筋の筋小胞体における加齢の影響を調べた。その結果、老年マウスの速筋でのみ筋小胞体の異常凝集が観察された。さらに、その周辺には細胞膜と筋小胞体を連結する支持因子とその分解因子が共局在していた。これらの結果より、加齢に伴って速筋に発生する筋小胞体の異常凝集には、筋小胞体の支持因子が局在するが、分解の対象になることが示唆された。 ③「老化が骨格筋内の基底板構築能を低下させる機序」本実験では、若年と老年の雄C57BL/6Jマウスを2群に分け、それぞれに高脂肪食または普通食を8週間与えた。その結果、肥満と老化は個々に筋機能の低下をもたらした。肥満若年マウスでは、腓腹筋においてコラーゲンIVの免疫反応性、基底板幅、基底板合成因子の発現が通常若年マウスよりも高かったが、肥満老年マウスではそのような変化が乏しかった。さらに、肥満老年マウスでは中心核線維の数が著しく増加した。これらの結果は、若年期は体重増加に反応して基底板構築を促進されるが、老年期ではその反応が乏しく筋の脆弱化が生じることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、老化が骨格筋の予備能力を障害するメカニズムを解明することである。筋障害の回復には、基底板の再構築が重要である。基底板は、筋線維を覆い、保護する役割を担う。老化は基底板の構築反応を減弱させるため、筋は脆弱化し、回復が障害される。このことがフレイルを深刻化させる一因となる。そこで本研究では老化動物を用いて老化による基底板構築能の低下における分子機序を解明し、新たなフレイル予防戦略の基盤構築を目指す。主な研究項目は、①骨格筋の構成要素における加齢性変化の追跡、②老化が骨格筋の予備能力を低下させる分子機序の解明、③基底板構築を促すシグナルの探索、の3点である。現在までの進捗状況は以下の通りである。 ①「骨格筋の構成要素における加齢性変化の追跡」筋内コラーゲンと筋小胞体における加齢変化を筋繊維タイプ別に追跡した。その結果、加齢に伴いコラーゲンと筋小胞体はいずれも異常に蓄積する傾向も明らかにすることができた。以上のように、筋機能の保持に必要な構成要素における加齢変化を、計画通りに同定することができた。 ②「老化が骨格筋の予備能力を低下させる分子機序の解明」老化と肥満の合併が骨格筋に与える影響を調べた。その結果、若年では体重増加に応じて基底板構築を促して筋線維を保護できるが、老年では基底板構築反応が乏しく筋が脆弱になることを明らかにした。この老化現象には、コラーゲン合成因子の発現抑制が関与していた。以上のように、老化が骨格筋の予備能力を低下させる機序を部分的に解明することができた。 ③「基底板構築を促すシグナルの探索」ストレッチングが基底板構築に与える影響を調べた。その結果、静的ストレッチングは基底板の分解を促進することが明らかとなった。一方で、基底板構築を促す因子の同定には至っておらず、今後の課題である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに、本研究では筋内コラーゲンと筋小胞体が加齢に伴い異常に蓄積あるいは凝集するが、この老化現象は筋線維タイプやコラーゲンのタイプに影響を受けることを明らかにした。しかしながら、骨格筋内の構成要素が加齢に伴って異常蓄積・凝集する詳細なメカニズムやそれらの除去手段については未解明である。今後は、更なる詳細な病態解明とその予防策の解明を行う予定である。 さらに本研究では、骨格筋への体重負荷に反応した基底板構築反応が、老化によって抑制を受けると、筋の脆弱化が生じることも明らかとなった。しかしながら、基底板構築を促す介入策については未解明である。本研究では、ストレッチングの効果を検証したものの、基底板構築は促されず、むしろ分解を促す結果となった。今後は、骨格筋内の筋収縮を伴う運動療法の効果を検証する予定である。
|