研究課題/領域番号 |
22K11304
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
飯山 準一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (00398299)
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研究分担者 |
岩下 佳弘 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (70623510)
桑原 孝成 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (00393356)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 腎微小循環調節 / TRPV4 / 血管内皮細胞 / 交感神経活動 / 腎皮質血流量 / 温熱性血管拡張 / 慢性腎臓病 / 全身温熱 |
研究開始時の研究の概要 |
温熱受容体であるTRPチャネル発見以降、温熱の分子メカニズムが徐々に解明されつつある。私達は深部体温 1℃上昇を30分維持させる全身温熱の4W反復により、慢性腎臓病モデルマウスの腎保護効果を既に報告している。本研究では深部体温1℃上昇時に最も活性化されると考えられるTRPV4に着目し、既知の血管内皮機能改善以外の温熱効果について、CKDマウスと培養細胞を用い、尿細管上皮細胞と炎症細胞におけるTRPV4の役割を解明する。
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研究実績の概要 |
腎内動脈の血管内皮細胞にはTRPV4が高発現し、shear stressを感受し、Ca2+の細胞内流入を介して、一酸化窒素、プロスタサイクリン、EDHF産出を誘発して血管拡張を引き起こす。TRPV4は腎局所循環制御に関わる重要な受容体の一つと考えられる。 腎には交感神経終末が豊富に存在しており、交感神経活動が腎血管だけでなく、傍糸球体細胞や尿細管においても血管トーヌスの調整、尿細管でのナトリウム排泄の抑制、レニン分泌の亢進といった効果を発揮する。また、交感神経は心房筋、心室筋に広く分布しており、交感神経活動による心機能亢進は腎血流量を増加させる。 深部体温が1-2℃上昇する温熱を負荷したときに、腎皮質血流変動に対するTRPV4を介した温熱性血管拡張および自律神経のβ受容体の関わりを麻酔下のマウスを用いてレーザドップラー法により検討した。 温熱負荷により増加した腎皮質血流量は、HC067047でTRPV4を薬理学的に阻害すると有意に減少し、腎組織でのNOS3 mRNAの発現が有意に低下した。それに対して、カルテオロール塩酸塩でβ受容体を遮断すると、TRPV4を阻害したときと同程度に腎皮質血流量が減少した。心仕事量はHC067047では不変の一方、カルテオロール塩酸塩では、有意に心仕事量が減少しており、両者の作用では明確な違いがもたらされた。 TRPV4を介した温熱性血管拡張とβ刺激による脈拍増加は同程度の腎皮質血流増加に寄与していると考えられた。全身温熱刺激による腎微小循環調節には、TRPV4を介した温熱性血管応答と交感神経興奮によるβ刺激が複合的に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はこれまでの研究(Am J Phys Renal phys. 2016)で深部体温を1-2℃30分程度上昇させる熱刺激がCKDに対して腎保護的に作用することを明らかにした。低コストで侵襲のない全身温熱が、有効なCKD対策となる可能性が示唆された。ヒトへの臨床応用を目指して、作用メカニズム解明が重要である。 本研究では腎保護効果の有力な温熱入力経路と考えられるTRPV4に着目し、既知の血管内皮機能改善以外の温熱効果について、CKDマウスと培養細胞を用い、尿細管上皮細胞と炎症細胞におけるTRPV4の役割を解明する。 2022年度はまずはマウスを用いて正常機能として、温熱刺激への応答にTRPV4がどのように関与しているかを確認した。2022年度の研究成果から、全身温熱刺激による腎微小循環調節には、TRPV4を介した温熱性血管応答と交感神経興奮によるβ刺激が複合的に関与していることが示唆された。またTRPV4を介した温熱性血管拡張とβ刺激による脈拍増加は腎皮質血流増加に同程度の寄与があるものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
TRPV4は皮膚、視床下部、心臓などにも発現しており、単純に温熱受容体として作用するだけではなく、浸透圧、代謝、伸長など、ポリモーダルなセンサーとして機能している。学問的に意義深く、また興味深いのは、全身温熱で加温することは、それぞれの臓器、末梢組織の細胞に発現するTRPV4が活性化される点である。つまり温熱刺激は単純に自律神経反射や温熱性血管拡張を引き起こすだけではなく、TRPV4など複数の温熱受容体を介して様々な細胞内シグナル伝達が誘導されると考えられる。それゆえ、TRPV4の活性化が糸球体や尿細管など、腎を構成するそれぞれの組織細胞内で、どのような蛋白合成の変化を生じるかを明らかにすべきである。 2023年度は糸球体上皮細胞と近位尿細管上皮細胞の培養細胞を用いて、温熱刺激によるTRPV4活性化、GSK1016790Aを用いた薬理学的なTRPV4活性化、HC067047を用いたTRPV4阻害でHSP27に関連したp38 MAPKシグナルの変化を観察する。我々の研究では温熱刺激による腎保護効果は、糸球体よりも尿細管細胞でより障害軽減を認めており、両者の差異から作用メカニズム解明へとつなげたい。また組織内に存在するマクロファージのTRPV4活性化がもたらす機能変化についても、培養細胞を用いてM1、M2のマクロファージで比較検討を行う。
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