研究課題/領域番号 |
22K11318
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | つくば国際大学 |
研究代表者 |
山本 竜也 つくば国際大学, 医療保健学部, 講師(移行) (60724812)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 脳の可塑性 / リハビリテーション / 脳損傷 / 機能回復 / 神経回路 / 巧緻動作 / 第一次運動野 / 運動前野 / マカクサル |
研究開始時の研究の概要 |
マカクサルを用いた行動から分子に至るレベル縦断的な解析により、第一次運動野(M1)損傷後の機能回復の背景として、大脳皮質運動関連領域(特に腹側運動前野:PMv)による機能代償が明らかにされた。しかし、PMv 機能代償のどのような側面に治療的リハビリテーション(以下、リハ訓練)が寄与するのかについては不明な点が多い。本研究では、M1損傷後にリハ訓練を実施しない自然回復マカクサルに着眼し、これまでに解析を進めてきた「リハ訓練実施群」や「健常群」におけるデータとの比較により、脳損傷後に伴う大規模な神経回路可塑性に与えるリハ訓練の効果を検証する。
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研究実績の概要 |
中枢神経系損傷による運動機能障害が、残存するシステムにより機能代償されるメカニズムを理解する。第一次運動野は、大脳皮質と脊髄を結ぶ皮質脊髄路ニューロンを豊富に含む領域である。この領域に損傷を受けると運動麻痺が生じる。しかし、このような麻痺は回復することがある。マカクサルを用いた行動・脳領域・分子レベルの解析により、第一次運動野や皮質脊髄路を損傷した後にリハビリ訓練を行うと、手指の把握運動(特に手の巧緻性)が回復すること、その背景に大脳皮質運動関連領域(特に腹側運動前野)による機能代償があることが報告された。 これまでの研究では、申請者は神経回路レベルの解析により、腹側運動前野から小脳核(特に室頂核)へと下降性に投射する経路が第一次運動野損傷後の機能回復時に増加することを国際学術雑誌にて報告してきた(Yamamoto et al., 2019, JNS)。また、頭頂間溝野へと向かう大脳皮質間投射においても、腹側運動前野ニューロンは可塑的な変化が生じることを国際学術学会などで報告してきた(Yamamoto et al., 2021, 44th Annual Meeting of the JPN Neuroci Soc etc.)。 これらの知見は、損傷を受けた経路自体が再生しなくても、損傷による直接的な影響を免れた他の大脳皮質運動関連領域が代償領域として機能することにより、運動機能が回復することを示唆するものである。 上記研究過程において、マカクサルと齧歯類では可塑性に関連する小脳区分マーカーの発現パターンが異なることを発見し、小脳における分子発現の特徴から霊長類の進化的適応が解ける可能性を示唆した(Yamamoto et al., 2024, under review)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、第一次運動野損傷後にリハ訓練を実施しない自然回復マカクサルに着目し、これまでに解析を進めてきた「リハ訓練実施群」や「健常群」におけるデータとの比較により、脳損傷後に伴う大規模な神経回路可塑性に与えるリハ訓練の効果を検証するものである。段階1として、「リハ訓練実施群」の組織化学実験を行い、これまでに検証してきた小脳核や頭頂間溝野以外にも、腹側運動前野投射先が可塑的に変化する領域を検証することを掲げていた。現在は新たに大脳皮質下領域に向かう投射経路の可塑性に関する解析を開始させ、解析対象範囲の切片作成および染色が完了している。 また、蛍光多重染色実験により、第一次運動野と腹側運動前野、頭頂間溝周辺領域間の相互接続ネットワークに損傷による影響が及ぶことが示唆された。これらの発見は、国際学会にて発表予定である(FENS Forum 2024)。 さらに、これまでの研究過程において、マカクサルと齧歯類では小脳区分マーカーの発現パターンが異なることを発見した。本研究成果の詳細については、国際学術雑誌に現在投稿中(under review)であり、査読者の指摘に基づく追加実験を現在は行っている。 総じて、本研究は当初の研究計画通りに進展しており、『(2)おおむね順調に進展している』と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の「マカクサルにおける小脳区分マーカーの発現パターン」に関する論文、及び、現在投稿準備中の「第一次運動野損傷後の機能回復に伴う大規模な大脳皮質間投射における神経回路可塑性」に関する論文の受理を目指す。今後は、論文採択に必要な追加実験および定量解析を引き続き継続して実施する。また、「大脳皮質下領域へと向かう遠心性投射における神経回路可塑性」に関する解析を進め、その成果を国際学会や国際雑誌にて報告する。今後は、可視化が完了した腹側運動前野ニューロン投射の定量解析を進める。さらに、自然回復マカクサルの把握動作解析を行うために、解析に必要な磁気式モーションセンサーの数を確保し、本解析システムを運用できるように準備を進める。
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