研究課題/領域番号 |
22K11326
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
原口 真 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (80467547)
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研究分担者 |
石田 圭二 福井医療大学, 保健医療学部, 教授 (20446157)
金森 雅幸 福井医療大学, 保健医療学部, 非常勤講師 (60941961)
酒井 涼 福井医療大学, 保健医療学部, 講師 (80771857)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | リハビリテーション機器 / 超弾性合金 / 手指動作訓練 / 耐久試験 / 手指動作認識 / 手指動作 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では脳卒中重度麻痺患者を主な対象として,超弾性合金の弾性によって患者の手を開く動作をアシストすることで効率的なリハビリテーションを支援可能な装着機器を開発する.曲線状の超弾性合金の線材や解剖学を考慮した機構設計を行い,柔軟に手指の自由度に対応できる仕様とする.さらに超弾性合金そのものに変位センサ機能を付随させ,訓練ソフトとも連動させることで,臨床現場での利便性確保や臨床評価の質向上を図る.
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研究実績の概要 |
本研究においては,脳卒中の後遺症により運動障害が残ってしまった人々を対象として,手を開く動作を超弾性合金(以下SMAと略す)の弾性によってアシストすることで,訓練者の巧緻性訓練を支援可能な装着機器(以下,装具と略す)を開発している.装具を開発するにあたって,3つのテーマを同時並行させている.すなわち,1)装具本体の設計,2)装具の耐久試験機の設計,3)手指動作検知センサの開発,の3つである. 1)装具本体の設計テーマにおいては,母指(Thumb)のための装具,母指を除いた残り4つの指(Finger)のための装具,の2種類を開発している(ThumbとFingerは解剖学的に大きく異なった構造をしているためである).2022年度までは右手用の母指装具しか存在しなかったため,左手の母指のアシストを行うことが出来なかった(母指以外の4指については,装具はシンメトリーの構造になっているのでアシストは両手ともに可能である). 2)装具の耐久試験機の設計テーマにおいては,手指を模したロボットの開発を行っている.装具の構造は複雑であるので,どこが最も壊れやすいかは設計上からは予想がつきにくいため,耐久試験機を製作している.耐久試験機は母指を模擬し(1自由度の第1関節,第2関節,2自由度の第3関節を有する合計4自由度の機構とする),母指用装具を取り付けられる構造とする.耐久試験にあたって,耐用年数を1年とする(1年経つと新しいものに交換することとする). 3)手指動作検知センサの開発テーマにおいては,装具の曲げを電気的に感知することが可能な,SMAセンサを開発している.SMAセンサのみだと手指の握り開きしか検知できないため,連動できる訓練ソフトの自由度が減ってしまう.Webカメラによる手の位置認識も進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つのテーマについて,それぞれの進捗状況を述べる.まず,1)装具本体の設計テーマにおいて,今年度は左手用の母指装具を用意できた.これにより右半身と左半身の麻痺を問わず,5指のアシストが可能となった.さらに母指装具のSMA 部分に複数の長さ(100mm,110mm,120mm,130mm)や太さ(φ0.8,φ1.0)を準備して,差し替えることができるようにした.SMAの長さは産業技術総合研究所が公開している「日本人の手の寸法データ」から順運動学を利用して必要な長さを算出している. 2)装具の耐久試験機の設計テーマにおいて,母指用装具の耐久性を確認できる試験機を完成させた.母指模擬部の慣性やサイズを抑えるために,ワイヤを介して母指模擬部へモータの動力を伝えている.4つの関節を動かすために4つのエンコーダ付きDCモータを中央に備えている.初期位置の機能的肢位から握りこむ方向へ動かし,再び初期位置に戻すことで,手の握り開き運動を繰り返し行うことが出来る. 開発した耐久試験機を使用して実際に耐久試験を行った.1年間使用した場合における母指装具の耐用回数として,今回は20万回の試験回数を設定した.結果として,試験開始から約 15,000 回でSMAパーツの先端が破壊された(試験は同じ条件で 2 度行い,同様の箇所に疲労破壊が見られた). 3)手指動作検知センサの開発テーマにおいては,センサの開発は進展させることができていないが,Webカメラによる手の位置認識システムは今年度に構築することが出来た.OpenCVを用いてマスク処理を行い,肌の色に近い色を検出して,手として認識した他,さらに検出精度を高めるために,Google社が開発した機械学習パッケージであるMediaPipeを利用したシステムも構成した.手の位置や握り開きを検知でき,訓練ソフトウェアと連動できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
1)製作した左手用母指装具は研究分担者に引き渡しており,開発装具での臨床評価は随時進められている.臨床評価中の不具合情報などを適宜フィードバックしてもらい,改良設計を進めていく. 2)装具の耐久試験機の設計テーマにて,母指装具の耐久試験機の構築と耐久試験による母指装具の耐久性不足箇所を確認することが出来た.残りの課題としては,母指以外の4指(Finger)用装具の耐久試験機の開発と母指装具の耐久性向上設計が考えられる.計画当初は前者も研究期間中に行うことを考えていたが,開発中の母指装具の耐久性が不十分であることが分かったので,そちらを優先事項として,2024年度は後者についてのみ取り組む. 3)手指動作検知センサの開発テーマにて,2022年度のセンサ製作では,太い径のSMAで抵抗変化を確認することが出来なかったが,回路システムの設計不具合が考えられるので,再度,抵抗変化検出の実験を進める.今年度でWebカメラにより,手の位置認識のみならず,手指の握り開きも検出できるようになったが,正確な手指の姿勢把握や,手がカメラから隠れた時にはSMAセンサが役立つと考えられる.
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