研究課題/領域番号 |
22K11356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小山 哲男 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (40538237)
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研究分担者 |
道免 和久 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50207685)
内山 侑紀 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50725992)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 脳卒中 / 予後予測 / 拡散テンソル法 / 再現性 / GPU / 予測 / 脳画像 / 重症度 / モデル |
研究開始時の研究の概要 |
脳卒中患者は本邦で約111万人と推計され、上肢下肢機能や認知機能、および日常生活動作に重篤な障害を呈する。そのような障害を軽減するため、リハビリテーションが行われる。その効果を高めるには、個々の患者がどの程度回復するかを見立てること、すなわち予後予測モデルが必要である。今回の研究では3つステップで予後予測モデルを構築する:1)予後予測モデルの説明因子抽出:2)機能障害、能力低下、社会的不利それぞれのレベルでの予後予測モデル構築:3)診療現場への実装と臨床的有用性の検証。本研究は、市中病院において予後予測モデルを構築し、それを診療現場に実装し、さらに臨床的有用性を検証することを目的としている。
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研究実績の概要 |
脳卒中患者は本邦で約111万人と推計され、上肢下肢機能や認知機能、および日常生活動作に重篤な障害を呈する。そのような障害を軽減するため、リハビリテーションが行われる。そこでは、個々の患者がどの程度回復するかを見立てること、すなわち予後予測が必要である。近年のさまざまな研究より、予後予測において脳画像の重要性が明らかとなってきた。最近注目を集めている脳画像手法のひとつであるMRI拡散テンソル法に着目して、研究環境の構築を行なった。 拡散テンソル法画像の解析方法のひとつに、脳内神経線維の走行を擬似的に表現するトラクトグラフィーがある。これは病変による神経繊維障害の可視化、および線維連絡の頑強性の定量化を行う手法である。優れた解析方法であるが、これまで線維追跡のための出発点および終点は検者の手作業により定められており、再現性に大きな課題があった。また従来のコンピュータの処理速度では、1症例に約24時間を要した。これらの難点から臨床応用は限られていた。 研究初年度(令和4年度)、上記2つの難点を克服するための手法を導入した。1つ目には、線維追跡の出発点と終点について、標準脳で定められたテンプレート(Warrington et al. Neuroimage 2020)を使うことである。これにより神経線維の描出およびFAの算出は高い再現性で行われることとなった。2つ目にはコンピュータ解析にGraphics Processing Unit(GPU)を導入したことである。GPUは比較的単純な計算の並列処理から成り立っており、人工知能の開発や応用で近年注目されている装置である。これにより1症例あたりの解析時間は40分程度になった。これらの成果は次年度以降の研究に活かされる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年のさまざまな研究より、脳卒中患者の予後予測において脳画像が重要であること明らかとなってきた。私たちのグループは、脳画像のなかでも最近注目を集めているMRI拡散テンソル法に着目して一連の研究を行なっている。今年度(令和4年度)、以下の観点で研究環境を整えた。 拡散テンソル法画像の解析方法のひとつに、脳内神経線維の走行を擬似的に表現するトラクトグラフィーがある。これは病変による神経繊維障害の可視化、および線維連絡の頑強性の定量化を行う手法である。優れた解析方法であるが、これまで線維追跡のための出発点および終点は検者の手作業により定められており、再現性に大きな課題があった。線維追跡の出発点と終点について、標準脳で定められたテンプレート(Warrington et al. Neuroimage 2020)を導入した。これにより高い再現性で解析が行われることとなった。 従来のコンピュータの処理速度では、1症例に約24時間を要していた。そのためにこの手法の臨床応用は限られていた。今年度(令和4年度)、コンピュータ解析にGraphics Processing Unit(GPU)を導入した。GPUは比較的単純な計算の並列処理から成り立っており、人工知能の開発や応用で近年注目されている装置である。これにより1症例あたりの解析時間は40分程度にまで短縮された。研究の初年度に解析結果の再現性の向上、解析時間の大幅短縮を達成した。 以上の観点より、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は拡散テンソル法のトラクトグラフィー解析を主要な手法としてとりあげる。研究初年度(令和4年度)に、標準脳上に定められたテンプレートの利用とGPUを備えたコンピュータの使用が可能となった。これにより高速かつ再現性の高い解析手法が構築された。次年度(令和5年度)以降、これを用いて実臨床でのデータ収集を進める。毎週3例程度の症例集積を見込んでおり、研究期間の終了までに累計200例程度のデータ数となる見込みである。 多くの既存研究で、拡散テンソル法トラクトグラフィーにより算出される factional anisotropy(FA)値は脳内神経線維束の健全性の指標とされている。次年度(令和5年度)以降、集積されたデータを用いて、FA値と長期予後の関連を明らかとする。長期予後の指標には片麻痺の重症度、日常生活の自立度、および総入院日数を用いることを予定している。まずはそれらの予後の指標とFA値の単純相関を求める。次に長期予後に影響を与える他の因子(例:年齢、併存疾患の重症度)を変数に組み込んだ多変量解析(例:重回帰分析、多重ロジスティック回帰分析、一般線形モデル解析等)をおこない、FA値と組み合わせた予後予測式を算出する。これらによりトラクトグラフィー解析を用いた脳卒中患者の予後予測法を構築することを今後の研究の推進方策とする。
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