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筋痛症における索状硬結およびトリガーポイント発症メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K11374
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分59010:リハビリテーション科学関連
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

渡辺 正哉  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (90762633)

研究分担者 渋谷 正史  上武大学, その他(学長), 学長 (10107427)
鵜川 眞也  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20326135)
植田 高史  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (90244540)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
キーワード筋痛症 / VEGF-A / VEGFR1 / TRPV1 / 筋硬度評価 / スポーツ障害 / kinesiophobia / 筋硬結(taut band) / trigger point( TP) / 血管内皮増殖因子(VEGF)
研究開始時の研究の概要

筋痛症に対して生理食塩水注射、あるいは筋膜リリースという施術にこの症状を緩和する効果があることが報告されている。しかし、生理食塩水は実験の陰性対照に用いられる何の効果もないものという固定観念から、ヒトのプラセボ効果による可能性も指摘されている。
本研究では、まず筋痛症を再現したモデル動物の作製を試み、これに特徴的なtaut bandやTPと呼ばれる構造がどのように痛みの発症に関わるかについて解析することで発症メカニズムに迫る。さらにプラセボ効果のない上記モデル動物に生理食塩水注射を適用し、索状硬結の緩和や鎮痛効果を客観的に評価するとともに、分子生物学的手法によりこの作用メカニズムを解析する。

研究実績の概要

我々は,炎症性筋痛の発症メカニズムと関連シグナルの伝達経路の同定を目的に,起炎物質であるカラゲナンを用いた炎症性筋痛症モデル動物を作出し,その疼痛回避行動分析と薬理学的解析を行った結果,局所における血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)-A遺伝子の発現が増加していることが明らかとなり,炎症性筋痛症の急性期および亜急性期において,VEGF受容体1(VEGFR1)とTransient receptor potential vanilloid type 1 (TRPV1)チャネルを介した新たな侵害受容経路があることが示唆された(NeuroReport, 34, 2023).
一方で,実際アスリートにおける筋硬結(筋タイトネス)と疼痛による運動不安(kinesiophobia)との関係についての臨床研究をすすめた.膝関節前十字靭帯(anterior cruciate ligament, ACL)損傷における靭帯再建術後のアスリートでは,膝関節伸筋力が健側と比較し十分(90%以上)回復したにもかかわらず競技復帰できないケースが少なくない.その理由は,メンタルテスト(TAMPA17など)で示されるkinesiophobiaであるとされるが,我々は,膝関節伸筋のタイトネスではなく股関節外旋筋タイトネスにより膝関節伸筋の収縮タイミングに遅れが出ることを明らかにした.これは,ACL損傷のない健常なアスリートにおいても同様の結果が得られたことから股関節外旋筋の筋硬結が膝関節伸筋に何らかの影響をおよぼしたということが示唆された(日本膝関節学会誌,1, 2024).このことは,急性筋痛だけでなく筋硬結(筋タイトネス)のある慢性筋痛症においては遠隔の部位の筋に対して多くのkinesiophobiaが生じる可能性があり本研究の目的であるトリガーポイント,関連痛について興味深い結果であった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々は炎症性筋痛症の痛覚過敏にVEGF-AおよびVEGFR1が関与することを示した.しかしながら,ヒトでみられる筋痛症および筋・筋膜疼痛症候群(myoficial pain syndrome, MPS )には,筋硬結(taut band, TB)と呼ばれる筋組織に起こる特徴的徴候が存在するが、実験動物でそれを再現するまでには至っていない.そこで,今回の研究目的である,炎症性筋痛におけるTBおよび関連痛について、今年度は臨床研究をおこなった.臨床研究では,大学野球部投手における野球肘と肘関節周囲筋の筋硬度との関係について調査した.野球肘に罹患している患者では,肘 関節内側靭帯の疼痛だけでなく肘関節周囲筋の運動痛による投球障害を呈する.我々は,肘関節内側靭帯と周囲筋の硬度を超音波エラストグラフィー測定したところ,肘関節内側支持機構である尺側側副靱帯の硬度と尺側手根屈筋,および,円回内筋の筋硬度の間で強い相関があることが認められ,筋膜を介した靭帯と筋の機能的連続性と筋硬度の関連性があることを示した(日本スポーツ理学療法学会,2024).さらに,股関節外旋筋タイトネス(TB)が膝関節伸筋出力(疼痛不安と関連)と関係することがわかった(日本膝関節学会,1, 2024).

今後の研究の推進方策

我々は,これまでの臨床研究から,股関節外旋筋,その中でも大腰筋には下肢に対する運動神経だけではなく知覚神経が通過することから,この筋の筋硬結(筋タイトネス)が,この知覚神経を絞扼することにより下肢筋群に対して影響を及ぼしているのではないかと考えている.Jinらは,筋・筋膜疼痛症候群(myoficial pain syndrome, MPS)に罹患している患者の筋硬結(TB)を対象に生検を行い,その組織像に筋線維の増大と球状化が観察されることを報告している (Eur J Pain. 2020;24:1968-1978). そこで,我々は,大腰筋炎症性筋痛モデルにおいてこの所見が観察されるかどうかを確かめたい.さらに,影響が考えられる下腿の筋原線維の形態的および病態生理学的変化について検証して,Jinらが示したヒトで観察されるTBに近い構造をもつモデル動物を確立させた後,この成因について調べていきたい. 臨床研究では,kinesiophobia原因としての大腰筋TBと関連痛との関係について動作分析をすすめていく.

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 等速度筋力測定器による女子アスリートにおける前十字靭帯(ACL)断裂後不安の定量解析2024

    • 著者名/発表者名
      渡辺正哉
    • 雑誌名

      日本膝関節学会誌

      巻: 1

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Vascular endothelial growth factor-A is involved in intramuscular carrageenan-induced cutaneous mechanical hyperalgesia through the vascular endothelial growth factor-A receptor 1 and transient receptor potential vanilloid 1 pathways2023

    • 著者名/発表者名
      Ueda Takashi、Watanabe Masaya、Miwa Youko、Shibata Yasuhiro、Kumamoto Natsuko、Ugawa Shinya
    • 雑誌名

      NeuroReport

      巻: 34 号: 4 ページ: 238-248

    • DOI

      10.1097/wnr.0000000000001885

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 野球投手における肘関節尺側側副靭帯前斜走線維と尺側手根屈筋の弾性の相互関係2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺正哉
    • 雑誌名

      日本超音波骨軟組織学術研究

      巻: 21-2 ページ: 3-13

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 野球投手における肘関節尺側側副靭帯前斜走靭帯と肘関節内側支持機構弾性との相互関係2024

    • 著者名/発表者名
      渡辺正哉
    • 学会等名
      日本スポーツ理学療法学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 等速度筋力測定器による女子アスリートにおける前十字靭帯(ACL)断裂後不安の定量解析2023

    • 著者名/発表者名
      渡辺正哉
    • 学会等名
      日本膝関節学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 肘関節屈曲回内筋群に注目した野球肘に対する徒手療法と評価2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺正哉
    • 学会等名
      日本超音波骨軟組織学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 肘関節周囲筋タイトネスに注目したAOL stiffness改善例2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺正哉
    • 学会等名
      日本超音波骨軟組織学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 入門運動器の超音波観察法第1版4刷2022

    • 著者名/発表者名
      日本超音波骨軟組織学会
    • 総ページ数
      171
    • 出版者
      医歯薬
    • ISBN
      9784263240779
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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