研究課題/領域番号 |
22K11375
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
森 大志 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (50301726)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 大脳皮質運動野 / 磁気刺激 / 皮質内抑制 / 皮質内促通 / 大脳皮質 / 脳梁 / 経頭蓋磁気刺激 / 運動誘発電位 / 歩行運動 / 運動野 / 歩行 |
研究開始時の研究の概要 |
人が行う様々な運動は,脳神経系によって巧みに制御されている.この制御メカニズムを正しく知ることは,病気やけがが原因で生じる運動機能障害に対する新しい治療方法,新規リハビリテーション法や機能回復を促進する新たな医療機器の提案を可能にする.日頃特に意識しない歩行運動でも,歩行時には大脳皮質運動野の活動性が増加する.しかし,その活動性の意味は明らかではない.そこで,本研究ではこの活動性がどのようなメカニズムよって発現するかを検証する.
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研究実績の概要 |
これまでの脳機能画像法による研究は,歩行時の脳活動を可視化した.報告者も二足歩行能力を獲得したニホンザルがトレッドミルベルト歩行を行うと両側大脳皮質一次運動野および補足運動野の活動性が増加することを陽電子断層撮影法での研究で報告した.運動野の活動性の増加は同領域への入力の増加による結果と考えられているが,出力についての考察はいまだ十分とは言えない.先達による研究から脳幹や脊髄への下行性投射が増加することは推察される.しかし,左右半球間や同側皮質内での活動性調節メカニズムという視点からはこれまで報告はない.報告者の先行研究で,一側の上肢または下肢運動であってもその運動課題の内容によって同側運動野の活動性が増加することを報告した.そこで本研究では,一側肢運動による運動野の活動性増強メカニズムを検証することを目的とした.運動課題は上肢運動と下肢運動を設定し,両者の共通点および相違点を明らかにして運動に伴う活動性増強メカニズムを考察する.本研究では,運動野の活動性を磁気刺激によって対側肢から記録される運動誘発電位(MEP)の振幅値から評価する.足運動時に運動肢と同側の運動野に対する条件刺激(閾値の80%)と試験刺激(閾値の120%)で構成される刺激(二連発磁気刺激)との間の時間を2ミリ秒にすると単発刺激時に比べMEP値は減少した.この結果は同側運動野内で皮質内抑制が発現している可能性を示唆する.例数がいまだ十分ではないことから今後は例数を両運動課題時に増やす必要がある.本研究から,上肢と下肢運動時の運動野活動性調節メカニズムについての考察とともに両運動が同様のメカニズムによって調節されているかについても評価できると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗がやや遅れている理由は主に次の3点である.(1)ヒトを対象として実施する課題であり,これまでに通り新型コロナウイルスへの感染対策を徹底して実施した.特に研究協力者(被験者)の確保に想定よりも時間を要した.(2)前年度の反省を踏まえて刺激間時間の調整のための予備実験に多くの時間を要した.そのため,実際に連発刺激で結果を得ることができたケースが少ないのが現状である.(3)運動時の頭位置の上下動に伴う刺激点の固定化という技術的な問題があった.このようなことから現在得られている研究成果は当初の目標と比べて満足できるものではなく,「進捗はやや遅れている」と判断した.令和6年度も,(1)については今後も感染対策を継続しながら実施する.(2)と(3)については他の研究者等からのアドバイスを得て解決した.引き続き目標が達成出来るよう努力する.なお,令和6年度の進捗度をみながら研究期間の延長申請も視野に入れたい.
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今後の研究の推進方策 |
本研究を進捗するために重要な要素の一つに刺激条件(条件刺激と試験刺激間時間)の設定がある.これまでに条件刺激と試験刺激間時間を5ミリ秒以内で模索してきた.令和5年度に条件刺激(閾値の80%)と試験刺激(閾値の120%)で構成される刺激(二連発磁気刺激)との間の時間を2ミリ秒にするとそれ以外の時間よりも明確に減少したMEP値を記録できた.これにより刺激条件が確立された.また前年度問題となっていた下肢運動(歩行様運動)による頭位置の上下動については,技術的改良(刺激コイルの固定法)と運動課題の調整でほぼ解決できた.歩行様運動を足関節の背屈または底屈運動に置き換えて実施することする.これらは他の研究者や技術者からの指摘やアドバイスを得る中で実現した.今後はこれらの方法により研究進捗を加速する.また,昨年度は国内学会へ参加でき,他の研究者とオンサイトで有益なディスカッションができた.今年度も既に国際学会1件,国内学会1件に参加を予定しており,本研究の進捗のために有益な情報を得る努力をする.
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