研究課題/領域番号 |
22K11394
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
菅原 和広 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (10571664)
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研究分担者 |
澤村 大輔 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (20734750)
齊藤 秀和 札幌医科大学, 保健医療学部, 助教 (70610369)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 随意運動 / 体性感覚入力 / 脳波 / 脳磁図 / 機能的磁気共鳴画像装置 / 疼痛抑制 / 体性感覚 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はこれまで脳磁場計測装置(MEG)を用いて,随意運動強度の増加に伴い末梢神経刺激による体性感覚誘発磁場が減弱することを報告した.本研究では,これまでの研究成果をさらに発展させ,随意運動による末梢感覚入力の抑制に着目し,1.MEGおよび機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使用して,随意運動による疼痛抑制の神経メカニズムを時空間的に解析する,2.疼痛刺激に対する効果的な随意運動強度および随意運動方法を構築する.本申請課題は,これまで明らかにされてこなかった疼痛抑制機構の神経メカニズムの詳細を明らかにするものであり,得られた知見は非薬物的疼痛対処法の開発につながるものである.
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研究実績の概要 |
本申請課題は,随意運動による末梢感覚入力の抑制に着目し,脳磁図・脳波といった時間分解能に優れる脳活動計測装置と空間分解能に優れる機能的磁気共鳴画像装置を使用して,随意運動による疼痛抑制の神経メカニズムを時空間的に解析することである.最終目標としては,以上の非侵襲的脳計測装置から得られた知見を活かし,疼痛刺激に対する効果的な随意運動強度および随意運動方法を構築することである. 2022年度では,一次体性感覚野を変動させる随意運動課題を調査することを目的に脳波計を用いて1)巧緻運動時の短潜時体性感覚誘発電位(SEP)の変化,2)運動学習過程における短潜時SEPの変化,3)運動準備期における中・長潜時SEPの変化を計測した.1)では巧緻運動に優れる被験者ほど短潜時SEPの振幅が減少することが明らかになった.しかし,巧緻運動の反復運動後であっても体性感覚野の活動減少量に変化は認められなかった2).これは,反復練習前では巧緻運動中では高い筋活動量を示したことから,一次運動野から体性感覚刺激に対しての抑制作用によってgatingが生じたと考えられた.一方,反復練習後では巧緻運動中の筋活動量が減少したことから,一次運動野からの抑制作用は減少したことが考えられる.しかし,運動課題の反復により運動学習に関わる運動関連領野の興奮性増大と巧緻運動にかかわる手・手指からの感覚入力増加によって一次体性感覚野の活動量減少が生じたと考えられる.3)では,Ring電極による皮膚刺激による反応課題を用いて運動期における体性感覚野の活動変化を調査し,皮膚刺激部位に関わらず運動を控えた施行において中潜時SEP(N140)振幅が大きくなることが明らかになった. 1)~3)の研究成果から,随意運動によって一次体性感覚野の活動は増加も減少もし,その増減は時間(成分)特性があることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までに随意運動時における脳活動変化のプロセスおよび運動課題と体性感覚野の変動について詳細に調査することができた.しかし,疼痛刺激誘発による脳活動変化と,随意運動を組み合わせた疼痛刺激誘発については実施できていない.これまでの我々の研究成果と2022年度の研究成果から,筋収縮強度の増加,巧緻性運動,運動の反復練習によって体性感覚野が減弱することが分かっているため,2023年度以降では実際に疼痛刺激誘発を行い,以上の運動課題によって疼痛関連脳活動がどのように変化するかを詳細に調査する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施した研究において,運動課題の種類と運動時の脳活動プロセスに神経刺激および皮膚刺激時の一次体性感覚野の活動について潜時別のデータを取得することができた.また,計測機器の特性やノイズレベルについての知見も得ることができた.2023度以降では,これまで通り時間分解能に優れる脳波・脳磁図を用いて随意運動による感覚抑制についての調査を進め,それと同時に空間分解能に優れる機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いることで運動と感覚抑制機構の詳細を明らかにできると考えられる.また,疼痛刺激によって交感神経性の変化が生じることが予想されるため,血管変化や頭皮血流量の変化についても調査および検討を進めていく予定である.その一方で,各脳計測機器のシールドルーム内で使用できる刺激装置が限局されるため,2022年度に得られた知見を基に刺激装置に工夫を加える必要があると考えられる.
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