研究課題/領域番号 |
22K11444
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
榎本 剛史 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10628762)
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研究分担者 |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
大和田 洋平 筑波大学, 医学医療系, 講師 (00819584)
大原 佑介 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90757791)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 高齢者 / サルコペニア / リハビリテーション / がん / 手術 / 身体機能 / Galectin / がんリハビリテーション |
研究開始時の研究の概要 |
【背景】高齢がん患者の周術期にサルコペニア評価が正確に行われれば、最適なリハビリテーションの開発が可能。 【目的】Galectinファミリーによるサルコペニア評価と周術期リハビリテーションの確立【計画】研究1: 75歳以上の消化器がん手術をうける高齢者に対し、血清Galectin-1,3値と骨格筋量・身体機能との相関を解析。研究2: 経時的Galectin-1,3値の測定により、術後サルコペニア発症ハイリスクを同定。研究3: 最適なリハビリテーションの開発。 【意義】Galectin-1,3による血清学的サルコペニア評価法とリハビリテーションの開発により高齢者の周術期治療成績の改善が見込まれる
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研究実績の概要 |
高齢者大腸癌患者の周術期身体機能変化について、下肢身体機能評価法であるShort Performance Physical Batteryを用いて検討。 方法は、2020年4月から24か月間に筑波大学附属病院にて、原発性大腸がんに対する切除術を受けた75歳以上の高齢者44名を対象。身体的機能評価として下肢機能を反映するバランステスト・4m歩行速度(秒)・椅子立ち上がりテスト(秒)からなるShort physical performance battery(SPPB)を測定。SPPBスコア10点以上を健常群、10点未満を低下群とし、術後合併症の有無を比較検討。 結果は、健常群は28例(65%)、低下群は16例(35%)。患者背景は(健常群 vs 低下群)で、年齢 (中央値 78 vs 84: P=0.01)、男女比 (16例/12例 VS 8例/8例)。ECOG-PS2以上は(0例/28例 vs 5例/16例: P<0.01) 。SPPBスコアは(中央値 12 vs 6.5: P<0.01)、 バランステストは(中央値 4 vs 2.5: P<0.01)、4m歩行速度(秒)は(3.8 vs 6.7: P<0.01)、椅子立ち上がりテスト(秒)は(9.3 vs13.3: P<0.01)。Clavien-Dindo分類Grade2以上の術後合併症発生率は(健常群 vs 低下群)で(9例/32% vs 4例/ 25%:P=0.62)。退院時にSPPBスコアが低下した患者は(5例/18% vs 6例/38% : P=0.14)であった。 高齢者における大腸がん手術において、術前身体機能が低下患者は健常者と比較して合併症発生率に有意差は認めなかった。一方で術前から機能低下していた患者の40%、健常者の20%は、術後身体機能がさらに低下していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢大腸癌患者の周術期身体機能変化の評価と同様に、術前に重篤な併存疾患を有する高齢大腸がん患者に対する適切な治療方法の選択も重要である。そこで本年度はASA3-4高齢者の大腸がん切除術の治療成績を検証した。 方法は、2013年10月から2018年3月の間に大腸がんの切除術を受けた65歳以上の患者を対象。ASA1-2とASA3-4の2群に分け治療成績を後方視的に比較検討。 結果は、症例は228人,ASA3-4は64例(52%),ASA1-2は164例(48% )。 年齢の中央値はそれぞれ72歳と75歳。併存疾患の内訳は,ASA3-4群は循環器系43例(67%), 呼吸器疾患25例(39%),肝疾患3例(5%),腎疾患3例(1%), 糖尿病13例(20%), ステロイド使用9例(14%)。ASA1-2の併存疾患の内訳は,循環器系24例(15%), 呼吸器疾患14例(9%), 肝疾患2例(1%),腎疾患1例(0.6%), 糖尿病12例(7%), ステロイド5例(3%)。周術期治療成績は、Clavien-Dindo Grade3以上の合併症は9例(14%), 14例(9%)、在院死亡はそれぞれ1例ずつ認めたが両群で有意差は認めなかった。合併症の内訳は、ASA3-4で肺炎が2例(3%)、SSIが6例(9%)と有意に多く、出血、縫合不全の発生率は有意差なし。 長期成績では、観察期間中に現病死は25例、他病死は16例、転院などによる消息不明は34例に認めた。生存期間平均値はASA3-4が1290日, ASA1-2が1557日 (p<0.01)。ASA3-4群でも平均術後生存期間は3年以上認められ適切ながんの切除術を選択する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの進捗より、消化器がんのうち大腸がん手術を受けた患者の周術期における身体機能変化は、術前身体機能健常な患者では80%が、身体機能低下している患者の60%は術後も身体機能が維持されていることが判明した。今後の超高齢化社会の到来にむけ、効果的なリハビリテーションプログラムの開発と同様に、リハビリテーションを受けるべき患者の適切な選別も重要と考える。2024年度も引き続き、患者背景・病期・疾患別・手術術式、術後合併症などの短期手術成績と長期生存率をと比較し、周術期サルコペニア発症高リスク群と周術期リハビリテーションの適応となるグループを検討する。Sandwich ELISA法による血清Galectin-1,3を定量的な測定と、経時的変化についても検討する予定である。
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