研究課題/領域番号 |
22K11455
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
田中 睦英 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 講師 (20412835)
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研究分担者 |
高宮 尚美 広島大学, 脳・こころ・感性科学研究センター, 研究員 (70723469)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | コグニティブ・フレイル / 経頭蓋磁気刺激 / 安静時脳波 / 介護予防 / 認知フレイル / 神経生理学的バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
フレイル(Frailty)は加齢による身体・精神心理機能の生理的予備能力の低下によって,重篤な健康問題や生活機能低下,社会的問題をきたす恐れのある状態である.認知フレイル(コグニティブ・フレイル)は身体フレイルに軽度認知障害(Mild cognitive impairment: MCI)が併存した状態と定義され,身体フレイルやMCI高齢者よりも要介護リスクが高いと推測されるがその神経基盤は明確でない.そこで, 近年認知症のバイオマーカーとしても注目される経頭蓋磁気刺激法による運動誘発電位測定と安静時脳波の周波数解析により,コグニティブ・フレイルの神経生理学的バイオマーカーの探索を試みる.
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研究実績の概要 |
地域在住高齢者13名(平均年齢77.54±5.56歳,女性10名,男性3名)を対象に身体機能と認知機能測定を実施した.記憶や学習などの高次認知機能の神経基盤であるコリン作動性神経系の機能評価としてTMSで短潜時求心性(Short-afferent inhibition, SAI)を測定する予定であったが,計測機器のセッティングが年度内に実現しなかったため,前庭系を介してコリン作動性神経系の影響を間接的に評価できる可能性のある重心動揺(Romberg rate, RR)をコリン作動性神経系機能の代用指標とし,心身機能とRRの相関検定を行った.その結果, MoCA-J・フレイルの身体指標(握力・歩行速度)とRRとの間に有意な相関は認められなかった.年齢・身体指標・運動器疾患の有無を制御変数としたMoCA-JとRRの偏相関検定でも同様の結果であった.認知機能と関連する因子を見いだせなかった要因として,MoCA-Jはスクリーニング検査であり個別の認知機能特性を十分に精査できなかったためと考えられる.記憶や注意,遂行機能など個別の認知ドメインに特化した神経心理検査や,n-back課題など認知負荷の高い課題の導入を検討する.また今回はほぼすべての被験者が後期高齢者かつprobable MCIであったことも影響していると考えられることから,研究デザインを修正したうえで前期高齢者を中心とした被験者のリクルートを行い,SAIによる因果的評価と脳波による機能的評価を実施する.また同時期に実施したwebアンケートによるフレイルの疫学調査では,精神・心理的フレイルと身体フレイルよりも個人にとって意味のある活動の阻害が社会的フレイルの強力なリスクファクターであることが示され,本研究の社会実装に向けては高齢者の個別性も考慮する必要性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究協力者(桐本光教授,広島大学)の助言の元,SAIを測定する環境を構築したが,コンディション刺激の出力とTMS測定を制御するソフトウェアの設定とノイズの混入の問題が解消せず,今年度はSAI測定に至らなかった.また研究分担者が学外に所属していることもあり,環境設定や予備実験のための人員不足も影響した.被験者についても当初見込んだほどの応募がなく,被験者確保のための新たなルートを確保する必要がある.安静時脳波解析についても解析結果に矛盾があり,解析プログラムの修正に時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
遅滞なく研究を遂行できるよう,次年度は以下の計画を推進する. 次年度4月から6月にかけて若年健常成人を対象としたパイロットスタディを行い,SAI測定および安静時脳波測定と解析方法を確立する.若年健常成人でも認知負荷の高い課題(視覚n-back課題,Go-NoGo課題)を導入し,認知機能評価の精度を向上することで神経生理学的指標との関連を検討する.成果の一部は11月に開催される第54回日本臨床神経生理学会で発表する.若年健常成人の結果を踏まえて測定・解析方法を微調整した上で,7月から9月を目安に,研究協力者の桐本 光教授と共同で,若年健常成人および地域在住高齢者を対象とした本実験を実施する. 研究分担者(高宮尚美助教,広島大学)の退職に伴い,研究協力者である森 大志教授(県立広島大学)を研究分担者に変更するとともに,研究補助の学生アルバイトを雇用することで,慢性的な人員不足を解消し,強力に研究を推進する体制を整える. 被験者不足については,県立広島大学三原キャンパスで定期的に行われている高齢者の創作活動サークルおよび地域包括支援センターに対し地域在住高齢者のリクルートの協力を要請する.
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