研究課題/領域番号 |
22K11467
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥泉 寛之 東北大学, 流体科学研究所, 技術専門職員 (60647957)
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研究分担者 |
小西 康郁 東北大学, 流体科学研究所, 学術研究員 (20552540)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 回転球 / ゴルフボール / 磁力支持天秤装置 / マグナス力 / 支持干渉 / マグナス効果 |
研究開始時の研究の概要 |
ゴルフボールから甚大な強風被害をもたらすフライングデブリまで,回転飛翔体周りの空力現象については未だ十分に解明されていない.この一因として,模型を風洞に固定するための支持部材による気流への影響(支持干渉)が挙げられる. 本研究では,模型を磁気力で風洞に非接触支持でき,空力計測精度にも優れた世界最大の磁力支持天秤装置を用いる.本装置で獲得済みの,平滑な表面の回転球の風洞実験技術に,リアルタイム高速度カメラと物体検出技術を組み合わせ,ゴルフボールの様な形状の回転状態での風洞試験技術へと発展させる.これにより回転飛翔体の臨界レイノルズ数領域を含む真の空力現象を明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究は、回転球やゴルフボール、フライングデブリ等の回転飛翔体の真の空力特性とその流体力学的機構の解明が目的である。旧来の回転飛翔体の風洞実験では、ストラットやワイヤー等の機械的支持の存在により模型まわりの気流が変化し流体現象に影響しうることが指摘されている。本研究では、磁気力で模型を空中に支持する磁力支持天秤装置を用いることで課題を解決する。我々が前段階の研究で開発した平滑な表面の回転球を磁気力で支持しながら風洞実験を行う技術を基礎とし、表面に構造を持った回転物体を風洞実験の対象とすべく技術を発展させ、空気力計測や流れ場計測により空力現象を解明する計画である。 今年度は上記風洞実験技術を用いて、再現性確認のために平滑な表面の回転球の風洞実験を実施し2つの課題を確認した。1つ目は模型の重心調整機構の改善である。現在は模型内壁に重心調整用錘を貼付する方法を取っているため、重心位置の微調整が難しく、回転模型にすりこぎ運動が発生することがあった。2つ目は、磁気力を発生するために模型内部に組み込んだ永久磁石の回転振動である。模型は、外殻と内部の永久磁石とをベアリングを用いて接続することで、模型外殻のみを気流軸に対して垂直な軸周りに回転させる構造であるため、ベアリングの回転摩擦抵抗が高いと永久磁石に振動的な回転運動が発生する。 また、当該年度は、磁力支持天秤装置と風洞が設置されている低乱風洞実験棟の改修工事が実施されることになり、2022年8月以降は当該装置を全く利用できなかったため、前述の課題2つに対する対策の検討と先行研究のまとめ、ならびに風洞実験棟が利用可能となる2023年7月以降の実験計画を検討した。また、平滑な表面の回転球から表面に構造を持った回転物体へ対応させるためには、リアルタイム高速度カメラを新たに機器に組み込む必要があるため、最新機種の情報収集と選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究には、磁気力で対象模型を非接触支持できる磁力支持天秤装置を用いて風洞実験を行うことで回転飛翔体の真の流体力学現象を捉えるべく取り組んでいる。しかし本年度は、我々がすでに開発した基礎技術を用いた平滑な表面の回転球の風洞実験再現試験において、模型の重心調整機構と回転自由度をもたらすために設けたベアリングの回転摩擦抵抗低減に関する課題が見つかった。また、2022年8月以降は磁力支持天秤装置ならびに磁力支持天秤装置と組み合わせて実験を行う低乱熱伝達風洞が設置されている風洞実験棟の改修工事が実施されることになり、建屋への立ち入りが制限されたため当該装置を全く利用できなかった。よって、本研究の基礎となった先行研究のまとめと風洞実験棟が利用可能となる2023年7月以降の研究計画の検討、装置改修のための機器選定作業にとどまったものである。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、磁力支持天秤装置ならびに低乱熱伝達風洞が利用回能となる2023年7月までに、今年度明らかになった模型の構造的課題2点に対する対策を実施する。1つ目は模型の重心調整機構の改善、2つ目は磁気力を発生するために模型内部に組み込んだ永久磁石の回転振動を抑制するためのベアリング部の回転摩擦抵抗の低減である。 2023年7月以降は、まずこの改善を施した平滑な表面の球模型で回転球の風洞実験技術の再現試験を実施する。これで本研究の基礎技術の確実性を確認した後、選定しておいたリアルタイム高速度カメラを本装置に組み込み、同じく平滑な表面の回転球の風洞実験を実施する。この同じ模型を用いた風洞実験により、リアルタイム高速度カメラ導入前後で実験精度の比較検討を行う。ここで問題がなければ、リアルタイム高速度カメラを組み込んだ磁力支持天秤装置を用いて、ディンプルのように表面に構造を持った、平滑な表面の球からわずかに形状が異なる球状模型を磁気力で非接触支持しながら、回転させる実験技術を開発する。リアルタイム高速度カメラを用いた非平滑表面模型の位置姿勢推定において、対象形状は既知であるためAIを組み込んだ画像認識技術のように複雑で大規模なプログラムを用いる必要はなく、比較的小規模で開発期間も短くできると考えている。これら風洞実験技術を開発できた後は、野球ボールのシームのような構造やラグビーボールのような回転楕円形状などを回転させて磁気力で支持できるように技術を拡張していく予定である。
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