研究課題/領域番号 |
22K11484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
佐藤 晶子 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (70593888)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | チアミン(ビタミンB1) / グリコーゲン / 食欲不振 / グリコーゲンローディング / チアミン / るピルビン酸脱水素酵素複合体 / ミトコンドリア |
研究開始時の研究の概要 |
チアミンは糖質代謝の律速酵素であるピルビン酸脱水素酵素複合体の補酵素として機能している。糖質を多量に摂取するグリコーゲンローディング時には、短期間ではあるが相対的にチアミン摂取量が減少する可能性がある。そこで本研究では、大量の糖質が組織内に流入する場合、短期間の体内チアミン量の低下によって 1. 潜在的な食欲不振が顕在化し、摂食量が低下するのか 2. PDC機能の低下により、糖質のミトコンドリアへの流入は抑制されるのか 3. 筋グリコーゲン蓄積は抑制されるのか、促進されるのか という3つの課題を動物実験にて明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、糖質代謝の重要なビタミンに位置づけられているチアミンに関して、グリコーゲンローディングに新たな知見を提供することを目的として、大量の糖質が組織内に流入したときに、短期間の体内チアミン量の低下によって①潜在的な食欲不振が顕在化し、摂食量が低下するのか ②ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)機能の低下により、糖質のミトコンドリアへの流入は抑制されるのか ③筋グリコーゲン蓄積は抑制されるのか、促進されるのかという3つの課題を動物実験にて明らかにする。2022年度は①の課題の一部として、雄性Wistar系ラットに1週間※のチアミン欠乏食の摂取させた後、食欲の増強を誘発するために絶食とその後の再摂食で食欲を評価したところ、摂食量に影響を及ぼさなかったが、血中乳酸値を上昇させることを確認した。以上の結果は、②糖質のミトコンドリアへの流入が抑制され、③グリコーゲンの蓄積が促進されていることを示唆するものである。※研究代表者はこれまでの研究により、1週間のチアミン欠乏食の摂取が体内チアミン量を有意に低下させることを確認している。 そこで2023年度は、すでにサンプルとして保存している血液、骨格筋、肝臓における測定を優先的に実施した。血清インスリン濃度をELISA法によって確認したところ、普通食を摂取する群(コントロール食群)と普通食からチアミンを欠乏させた飼料を摂取する群(チアミン欠乏食群)に有意な群間差は見られなかった。 骨格筋および肝臓のグリコーゲン蓄積量を確認したところ、肝臓においてチアミン欠乏食群(342.0±17.9μmol/g)がコントロール食群(303.6±7.9μmol/g)よりも高値を示したが、有意な群間差は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度の結果を踏まえ、またすでに採取し保存していたサンプルの分析を優先させたことから、2023年度は課題③を明らかにするための実験3の一部を実施したことになる。その結果、有意ではなかったが肝グリコーゲン蓄積量においてチアミン欠乏食群の方がコントロール食群よりも高値を示した。実験1によりチアミン欠乏食群の方が血中乳酸値において高値を示し、グリコーゲンの蓄積が促進されていると推測したが、今回の結果はこれを支持する可能性があり、nを追加して再検討する価値はあると思われた。しかしながら課題②を明らかにするための実験2には着手できておらず、2022年の研究代表者の体調不良による半年以上の研究の遅れを取り戻すには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
再摂食開始から4時間後の筋グリコーゲン量は、コントロール食群、チアミン欠乏食群それぞれで60.1±2.7μmol/g、57.6±3.1μmol/gであり、研究代表者が保持している自由摂食安静時の筋グリコーゲン量のデータのおよそ4倍に達していた。これはSanoら(2012)の先行研究とも一致しており、絶食に続く再摂食により、4時間で組織内に大量の糖質が流入したことを示すものである。しかし、再摂食時の摂食量は、コントロール食群、チアミン欠乏食群それぞれで、2時間後は5.2±0.3g、4.8±0.2gであったのに対し、4時間後は2.2±0.5g、2.3±0.5gであり、両群ともに2時間後の方が4時間後に比して2倍以上の飼料を摂取していた。このことは、2時間後の方が「大量の糖質が組織内に流入している」という本研究の条件をより明確に作り出せる可能性を示唆している。摂食量の鈍化が見られた4時間後においてもコントロール食群とチアミン欠乏食群の血中乳酸値や(有意ではないが)肝グリコーゲン蓄積量に差が観察されたが、2時間後には糖質代謝への影響がより顕著に示されること予想されることから、2024年度は実験1と実験3の一部として再摂食開始から2時間後のサンプル採取を優先的に行い、分析を進める。また、体内チアミン量の低下が潜在的な食欲不振を表面化させるかどうかという点について、摂食量に群間差が確認されなかったため現時点では「表面化させない」と推察できるが、摂食関連ホルモンであるレプチン、グレリンや、採取を見送っていた視床下部における関連分子の分析を進め、課題①③を完結させる。課題②を明らかにするための実験2では、安定同位体13Cグルコースを用いて糖質の動態や代謝を呼気ガス分析にて確認し、糖質関連代謝物質を確認する計画であるが、これも再摂食開始2時間後のポイントで実施する。
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